141話「墜落」
十弐式毒銃から、戦艦の主砲みたいな轟音が鳴り、50口径の毒弾が鎌切龍へ一直線に突撃。
連鎖して、毒弾が鎌切龍の口で輝く赤色のエネルギー体へ命中。
赤色のエネルギーが、撃たれた衝撃によって「グニャリ」と変形してしまい、暴走するかのように激しく鼓動しはじめる。
「?!」
エネルギーが制御不能に陥り、激しく動揺する鎌切龍。
「ビンゴかも。そのピカピカ……繊細なんだね」
(た、例えるなら『油の乗ったダイナマイトを撃った』って感じかも。多分)
ゆえに、つぎに生じる展開はーー
ーードォオオオオオオン! ーー
「……ッ?! 」
赤色のエネルギーが、鎌切龍が悲鳴をあげる暇もなく大爆発。
毒雲空域全体が震撼し、壮絶な爆発音が華白の鼓膜を叩き、辺り一帯をグラグラと揺るがした。
「ひィ! 」
華白は短い悲鳴をあげ、気絶している雷昂(蛾の怪獣)の背にしがみつく。
(空が叫んで……る。なんて、爆風なのぉ~)
猛烈な爆風によって、猛毒雲たちが一瞬にして吹き飛ばされてしまい、毒雲空域そのものが華白の前から綺麗サッパリ消滅してしまった。
「ありえない。猛毒の雲が……ぜんぶ、洗浄されちゃった」
視界を遮るモノ(猛毒雲)が消え失せ、下界の毒森が見渡せるようになる。
だが、しかし……気絶した雷昂(蛾の怪獣)の体は爆風に巻き込まれてしまい、飛行姿勢が崩されてしまう。
(?! 謹崎さんの姿勢がッ……90度にィ! )
「ヤバッ……このままじゃ、二人とも真っ逆さまだよお! 」
当然、華白の叫びが蛾の怪獣(雷昂)に届くことはない。
(どんどん高度が下がってるぅ! つ、墜落しちゃうかもッ)
「謹崎さん! お願い、目を覚ましてえええ! 」
毒森に墜落するまで、あと数秒も猶予は残されていない。
「あぁ! 」
(墜落ルート確定だあ。お、お腹をくくらなきゃ……)
華白は雷昂(蛾の怪獣)の背にしがみつき、姿勢を低くしてから覚悟を決める。
時速100キロの速度で毒森へ……
蛾の怪獣は華白を乗っけたまま、流れ星のごとく毒森へ『墜落』した。
――――ドーン!ーーーー
二人が墜落した事によって、毒森全体がグラグラと揺れる。




