138話「背中から刺される?」
「はあ~。な、何とかなったかも……」
脅威を退き一息ついた後、一歩遅れて毒銃の煙がピタリと止まる。
「もう……今更、冷却が終わったの? 延滞料…とりたいかも」
毒銃に不満を漏らしつつ、L字の銃身をカチャリと元に戻す。
「銃相手にワケの分からぬことを。それに、どうせ次弾も外しただろうよ。無駄弾を使わずに済んで、良かったではないか」
「もう、少しは……わたしィに期待してよ」
プクゥと頬を膨らませる華白。
そんな彼女を背に乗せたまま、雷昂(蛾の怪獣)が『今後の計画』について掘りさげる。
「寒い漫才をしている暇はない。荒神業魔について、だが……」
…が、その一瞬……ヒュン! ドス!
「?……フェ?……」
軽やかな斬撃音が毒雲空域を駆け、雷昂の台詞が中断させられてしまい、彼女(蛾の怪獣)の口からマヌケな声が漏れた。
加えて、雷昂(蛾の怪獣)の平行飛行が大きく傾き、上に乗っていた華白の視界も傾いた。
「えぇ! 謹崎さん、飛行経路が暴走してる、かもッ……」
「がァあ! こ、コイツ、はッ?! 」
雷昂が痛々しい呻き声を漏らしつつ、己の片羽をギロリと睨みつけた。
そこには、右羽に突き刺さった一本の大鎌があった
「鎌切トカゲくんの鎌! 退いた筈なのに……一体、どんなマジックを使って」
「ガハッ……ヤツは手品などしておらぬ。気合いだけで、猛毒を凌ぎ切り……道連れにしようと、それがしの片羽をッ……」
「こぉ、根性だけで! 追っかけて来たってこと?! しつこすぎるかも! 」
要するに、鎌切龍は精神力のみで猛毒雲に耐え、油断した二人(華白と雷昂)の死角へ侵入し、雷昂(蛾の怪獣)の右羽を攻撃したのである。




