表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
134/245

131話「勇気に感染する」


「フン。首の皮一枚つながった……というヤツだな」


 飛行スピードが少しずつ落ちてゆき、華白にまわりを見渡す余裕ができる。


「多分、生き残れたかな? ここは地獄じゃない……よね? 」


「嗚呼。ここは毒森の上空100mだ。流石のヤツ(鎌切龍)でも追ってこれまい。なんたって、この空域には『毒雲どくくも』のテリトリーだからな」


「ま、まさか……空の上を散歩する羽目になっちゃう、なんて……」


 華白は雷昂(蛾の怪獣)の背中越しに、100m上空から毒森を一望した。


(毒まみれの地獄なのに、おとぎ話に登場しそうな絶景だ~)


 永遠と広がる森の神秘を見渡している内に、不思議と『愛野カケルとの思い出』が蘇ってきた。


 二人で泥まみれになった、下水道での思い出。

 二人でがむしゃらに走り続けた、毒森での思い出。

 そして、カケルから「勇気を感染させられた」毒の沼での思い出。


「………カケル」


 青い瞳をひっそりと閉じる華白。


 これまでの滅茶苦茶エピソードを胸の奥へひっそりとしまい込んでから、オドオドとした口調で雷昂(蛾の怪獣)へ語りかけた。


「謹崎さん、聞いて……」


「……嗚呼? 」

「わたしィ、荒神業魔をやっつける……かも」

「……フン」


 華白の決意を試すかのように、雷昂(蛾の怪獣)が冷たい口調で問う。


「華白隣。キサマは一人で、不可能に立ち向かうつもりなのか? 」


「う、うん。無茶で無謀っていうのは自覚してる、けどッ……」


 責任感に圧し潰されそうになりながら、華白はコクリと頷いてみせる。


「『諦めない』って、約束したから」


 ……そして……


「カケルの分まで『欠落した世界を救う』って、約束したから! 」


「欠落した世界を、救済か。どうやら、小僧の『無謀に汚染』されたようだな」

「うん。多分、『カケルの勇気』に感染しちゃった、かも」


 愛野カケルの決意を継いだ……と微笑む華白。

 そんな彼女を乗せたまま、雷昂は小声でそっとコメントをした。


「フン。蟻一匹分は、成長したみたいだな」


 けれども、雷昂の声が風音で遮られ、華白が「?」と首をかしげる。


「えぇ? 今、何か言った?! 風の音で、よく聞こえないかも」

「老人の戯言だ。聞き流して構わん」


 雷昂(蛾の怪獣)は誤魔化すように急旋回した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ