127話「毒人間の慈悲?」
翼は呼吸を荒げ、床にひれ伏しながら嗚咽を漏らしてしまう。
華白は、そんな彼を見下ろし、なだめるように囁きかけた。
「し、心配無用かも。30%くらいの力で蹴ったから……すぐに動けるようになるはず。多分…」
「手加減してやがったのか! 舐めやがって、覚えていやがれッ」
……と罵倒されても、華白は敗北者へアドバイスを送った。
「歩けるようになったら……プライドを捨てて逃げてください。あの『鎌切ドラゴン』とは、関わらない方が身のためかも」
「ふざけんな。オレに、気を遣う暇があるのかよ! 」
しかし、翼は敵意むき出しのまま、華白の助言を聞く姿勢が見受けられない。ここで雷昂が「フン」と鼻で笑い、華白に警告した。
「偽善者ごっこは他所でやれ。早々に逃げねば……それがし達も、鎌切龍に食われてしまうぞ」
「う、うん」
華白は小さく頷き、雷昂と歩調を並べて、翼のすぐ横を素通りしてゆく。
「まッ……まち、やが……れ」
翼は遠のいてゆく二人の背に手を伸ばし……
「……あいつら、許さねえ。選ばれし者の、このオレに……」
……そのまま、冷たい床の上に頭から倒れてしまった。




