10話「チュートリアルでゲームオーバー」
(わかんないけど。一旦、翼さんにチクった方がいい、かも)
「あッ、あの! 翼さん! 」
「どうした?華白一等兵。今更、トイレとか言うなよ」
どうやら、翼は『接近してくる大影』に気づいていない模様。彼と同様、カケルや大尉、他の兵士たちは装備の確認に集中しており、外にいる大影を察していなかった。
(あの影。私しか気づいていない?! はやく、伝えなくちゃ! )
挙動不審な仕草で、翼に「装甲車に接近してくる影」の事を伝えようとした、瞬間……突然、10m先の霧奥にいた『大影』が猛スピードで、装甲車に急接近。
(ウソ!!! 大影の自己主張が、急に激しくなって?! )
森奥から姿を現した大影は……像の鼻のように太く長い、大蛇に近しい姿をした異物だった。ソレは、装甲車の傍を猛スピードで並走しており、窓辺にいる華白を唖然とさせる。
(へ、ヘビ! い、いや……ちがう、かも。コレって、多分……)
「しょッ! 触手?! 」
華白が、装甲車につきまとう異物を「触手」と呼び、翼が迫真の勢いで食らいつく。
「なんだと?!!! 」
連鎖して、大蛇?……いや、『触手』が別の形態へ変身する。蛇のような形状をした触手が、グニャグニャと粘土のように蠢き、触手本体の体積が10倍に増加。肥大化した触手が5m強の塊と化し、ヘビー級の「巨大鉄球」へ変貌した。
「触手がぁ、おっきなボーリング玉に変身しちゃうなんて……」
蒼白に染まった華白の横顔を見て、危険を察したのか? 翼が無警戒な隊員たちに怒鳴り散らかす。
「総員! 衝撃に備えろ! 」
車内に殺伐とした空気が走り、兵士たちは一斉に座席にしがみつき、衝撃に備えた。
ところが、誰もが行動を起こす中、華白の体は凍りついたまま、金魚のようにパクパクと口を動かすことしかできない。
「リンッ! ボーっとしてちゃ危険だ。何でもいいから、つかまって! 」
カケルが放心状態の華白へ警告する、が……
肝心の華白は「ハア、ハァ…」と、息を荒げるのみ、もはや動ける状態じゃなかった。
(おねがい……夢なら、覚めて……)
そう願った刹那、ドオオォオオオオオオン!
巨大鉄球(触手)が装甲車の横腹に命中。脳を揺るがす衝撃が炸裂し、車内が180度回転。
視界がグルリと反転し、体そのものが宙へ放り投げられてしまう。
「おい、冗談だろ! 」
「何だ! 隕石でも落っこちたのかよおお! 」
「「「あああああ!!! 」」
ゴチャゴチャに飛び交う道具&銃器。車内が、兵士たちの絶叫で一杯になる。
華白はぶっ飛ばされながら……
(多分、鉄球に殴られて…装甲車がッ、横転したッ、かも!)
と、現状をおさらいする……が……
…メシャッ! …という鈍い膚ざわりが、彼女の頭に伝わってきた。
「うっ、ぐッ! あ…た…ま? 」
(頭がぁ、熱い?! 頭をぶつけちゃったあ?! )
平衡感覚に障害が生じて、視界が真っ白に陥り、意識そのものが遠のいてゆく。
「あ……あぁ……」
(スタート地点で脱落しちゃうなんて。コレぞ、私って感じかも)
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