126話「決着は一瞬」
華白が軽やかな一歩を踏み、翼との距離を一気に詰める。
「ここからは、多分……わたしィのターンかも」
「なめんじゃねえ。お前を掃除するのに、銃なんかいるかよ! 」
翼は急接近してきた彼女に対策するべく、懐から『ナイフ』を取り出し、鋭利な刃先で彼女の首元へカウンター斬撃を繰りだした。
華白は青い瞳を細め、迫りくるナイフを凝視、続けて状況を解析する。
(サバイバルナイフを隠し持ってたなんて! コレが主人公補正ってヤツ?! )
「…でも、おそい。かも」
ボソリと呟き、軽く身を屈める華白。
とっさの回避行動により、ナイフの射線が華白の首から大きく逸れ「ヒュン! 」と虚しい音を立てて、彼女の頭上スレスレを通過してゆく。
「な?! 10年鍛えてきたオレの格闘術が! 躱された……だと?! 」
ナイフ攻撃が空振り、翼の姿勢が大きく崩れ、彼の懐がガラ空きと化す。
華白は、その隙を見抜いてクルリ♪と一回転。
「まだまだ、最低のサプライズはこれから、かも! 」
唄うように語りながら、回転の力を右脚に集中させ、翼の脇腹を狙って『中段・横蹴り』を打った。
――――ドオウ!
「がァ、ハアッ! 」
華白の爪先が翼の横腹にめり込み、彼の足元がグラリと揺れる。
「馬鹿な。オレの体は……ルルナ様の加護で最強なの、に! 」
蹴られた脇腹を抑えながら、片膝を落してしまう翼。
「ケツデカ女のキックに、蹂躙される……とはッ」




