121話「鎌切龍」
……ところが……
次になった音は銃声ではなく「グシャ、グシャ、グシャ」という肉を貪り喰う音と兵士の絶叫だった。
「あ、ああああああああああああああ! 」
部下の悲鳴に目を見開く翼。
「なんだ! お前たち、一体どうした?! 」
華白と雷昂も、この場にいる全員が『絶叫が聞こえてきた方』を凝視する。
その先には、パープル色の鱗に全身が覆われたドラゴンが君臨していた。童話やフィクションに登場しそうなドラゴン顔。全長10mもの巨大な図体。長い尻尾の先端は花のつぼみの様な形状をしており……左右の両腕は『鎌のような姿形』をしていた。
怪物の予期せぬ乱入に、翼がガスマスクの中で息を荒げる。
「ありえん……こんなクリーチャー、聞いてないぞ! 」
「井竜隊長! この巨大トカゲは?! 」
ガスマスク兵たちは困惑しながら、アサルトライフルを構え怪物を警戒する。
一方、華白はホッと息をつき、雷昂から手を離した。
「く、首の皮一枚……つながった、かも」
(怪物が、雑に乱入してくれたおかげで、銃殺刑ルートは回避できた。でも……)
「アイツ、一体何なの? カマキリみたいな、ドラゴンみたいな……ヘンテコな図体してるけど」
すると、雷昂が華白の体をポンと突きはなし、怪物の情報を捕捉した。
「それがし達は、ヤツを『鎌切龍』と呼んでおる」
「名前から察するに……多分、カマキリとドラゴンのハイブリットってヤツ? 」
「大体、そんなところだ。ヤツは毒森の守護精霊で、毒森に侵入したダニを駆逐する掃除屋でもある」
「つまり、わたしィ達も掃除されちゃうってワケだね。最高かも」




