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9話「第二次・毒森攻略作戦」

 

 それから数時間後……只今の時刻・9時15分。


 揺れる車内で、翼が『毒森攻略作戦のスケジュール』を説明する。


「メインターゲットは『荒神業魔』だ。荒神業魔は『毒ノ聖花壇どくのせいかだん』を拠点している為、我々の目標地点ゴールも必然的にそこになる」


 荒神業魔の拠点「毒ノ聖花壇どくのせいかだん」。

 華白は独特なネーミングセンスをした領域に、心の中で首を傾げた。


(あ、荒神業魔ってお花畑で野宿してるの? それにィ、毒の花壇って……ロマンの欠片もないかも)


「毒ノ聖花壇は聖域の一つだ。毒森・北西方角の最深部にある……と、調査班は推測している」

(ゴールへの道筋は見えてるんだ。それなら多分……安心かも)


 ところが、翼がもう一つの障壁をサラリと添えた。


「しかし、毒ノ聖花壇へ『歩いて行くことは不可能』だ。なぜなら、花壇の周辺一帯が『毒の茨道どくのいばらみち』に囲まれているからな」

(殺意に満ちた名前が、出てきたんだけどぉ?! )


「毒の茨道どくのいばらみちは、膨大な量の『毒の棘蔦』が牛耳る猛毒エリアだ。立ち入った獲物を『毒棘どくとげ』の生えた蔦で捕食してしまうらしい」

(ソレって、殺人植物がゴールテープの前で『通せんぼ』してるようなモンじゃん! そんなのぉ、飛行機でもなくちゃ攻略できないかも)


 勝手に落胆する華白と対照的に、翼が茨道の攻略法を解説する。


「諸君、心配はいらん。俺たちには、この十式装甲車がある。コイツの耐久力があれば、毒の茨道だって余裕で通過できるだろう」


 単純明快な解決法に「なるほど……」と頷く兵士たち。


「外見はハリボテでも……コイツの耐久性は天下一品らしいからな。どんな悪道も楽勝ってワケだ」

「確か、タクティカル・ホイールだったか? 地形に合わせて変形する、器用なタイヤを採用してるらしいぜ」

「さすが、毒森攻略用に設計された骨董品だな」


 兵士たちの会話に耳を傾けつつ、華白は『十式装甲車で、毒の茨道を突破する』という強引な作戦に納得した。


「……安心かも。車の中で、ずっと座ってれば良いんだから」


 兵士たちの声でワイワイと賑わう車内にて、翼のポケットからピロ♪ピロ♪と電子音が鳴る。彼(翼)はポッケから「無線機」を取り出し、真剣な表情で「………そうか。了解した。」とトランシーバーに返答。さらに、ハッキリとした声で部下たちに命令を下した。


「今、『毒森北側どくもりきたがわ』にエンカウントした。あと、数時間で花壇に着くだろう」


 華白は、翼の合図に背筋を強張らせてしまう。


(つ、ついに! どどどどど! 毒森の入口に不法侵入しちゃった! )


毒森北側どくもりきたがわ』は地下都市に最も近いため、人類からしてみたら『スタート地点』のような立ち位置に属している。


 華白はガスマスクの中で生唾を飲み、車内の窓から外の様子を眺めた。


「木も、地面も、全部グロデスクかも。こんなところ……死神だって訪問しないよ」


 誰にも悟られぬよう、泣き事を重ねている、と……


「あれ? 外に、何かが…いる? 」


 華白は、『何か』が毒森の奥で動いていることに気づいた。


「な、何……こっちに、装甲車の方に、近づいて来てる? 大きな影、クマ? 」

(10m先の森奥、影が動いている、かも)


 華白の目に映る『熊らしき大影』は、ゆっくり確実に装甲車の方へ直進してきている。


「もうッ、窓が汚れてるせいで、よく見えない。掃除しておいてほしいかも」


 汚い窓に文句を垂れながら、目を凝らしてみるが…

 森全体が毒霧に覆われている為、外を目視するのは困難そのものだった。



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