116話「霧隠れのメスガキたち」
……それから3分後。
二人のガスマスク兵が捕虜(華白と雷昂)を処刑するべく、道具部屋の鍵を開錠し、動かざる扉を乱暴に叩き開けた。
「メスガキども、お待ちかねの処刑タイムだ」
兵士二人組はアサルトライフルを抱えながら、暗闇の部屋を見渡す。
ところが、処刑対象の少女たちの姿は見当たらない。兵士二人組は彼女らが『部屋のどこかに隠れている」と推測して、床や物影をライトで照らし合わせた。
「どこに隠れてやがる? 時間稼ぎしてもムダだぜ」
部屋の隅々をライトで照らし、ここでようやく二人が違和感を抱く。
「……いない」
そう、どんなに部屋中を探しても、華白と雷昂の姿が見当たらないのである。
「ふざけやがって。アイツら、どこに消えやがった?! 」
「脱走したとでも言うのか? そんなマジックありえない! 」
二人とも「捕虜が脱走した」というアクシデントにパニック状態。
血走る視線で床を見下ろし、とあるモノを発見して鼻息を荒ぶらせた。
「こりゃ、手錠かッ。こ! 壊れちまってやがる! 」
兵士二人組は『壊れた手錠が二個』床へ放置されている事に気づいた。
「チタン合金の手錠を壊すだって?! メスガキに、そんな芸当ができるわけねえ」
「いや。壊れている……というより『溶けている』の方が近いかもしれない。見てみろ、手錠そのものがドロドロに変形している」
「ワケわかんねえ。あのエセ軍服女が、硫酸でも持参してやがったのか?! 」
「さあな。何が起こってるのか? サッパリだが……とりあえず……」
「このイレギュラーを、井竜隊長に知らせねえとな」
「……ああ。大人を舐めた借りは、命で支払ってもらおう」
ガスマスク兵二人は「捕虜の脱走」を翼に報告するべく、道具部屋からバタバタと離脱する。
しかしながら、彼らは気づいていない……道具部屋の天井に屋根裏へ通じる『隠し扉』があった事を……




