103話「主人公が、テロリストにジョブチェンジ?」
予想外の窮地にポカンとしてしまう華白。
激しく狼狽えながらも、混乱する頭を整理しようとする。
(ぶぶぶ、武装した人間。それって『翼さん達』だよ、ね? 」
ーー要するにーー
「翼さん達が、神社を襲撃したって事?! な、ななな! 何で~」
(どうして、選ばれし者の翼さんが…テロリスト行為を……)
そもそも何故、神社を攻め落とす必要があるのか?
黙々と思考する華白に構わず、雷昂(蛾)が現状を説明しはじめる。
「今は、ドブネズミのように床下に潜んで、無意味な時間稼ぎに勤しんでおる」
続けて、雷昂(蛾)は「神社が制圧された経緯」を語った。
「キサマと荒神業魔の決闘中に、奴らが神社を襲撃してきたのだ。それがしも神術で抵抗したが、勢いに圧されて……見事、このザマだ」
「わ、わたしがドンパチしてた時に、裏側でそんな事が……」
「フン。それと、猿共(兵士たち)を率いておるのは、キサマが信頼する『翼』とやらで間違いない」
「やっぱり、翼さんが主犯格。でも、動機がチンプンカンプンかも」
「フン。奴らの眼は総じて『血走って』おった。一応、交渉を持ちかけてやったのに……言葉が通じる連中ではなかったな」
「つ、翼さん達ッ! 頭のネジが狂ったの。ウソでしょ! 」
「わめくな。奴らに見つかるだろうが……」
雷昂(蛾)は、いつものように「フン」と呟き声のトーンを落とした。
「……神社は終わりだ。あと数分もすれば、それがしは奴らに殺虫されるだろうよ。嗚呼、600万年の歴史のある聖域(神社)が、ものの数分で陥落するとはな」
弱々しい雷昂の声に、華白は思わず身を乗り出した。
「諦めるのは100年早いかも! わたしが、そっちに行くから! 」
「愚か者! キサマまで、駆除される必要はない! 」
確かに、雷昂の言葉は正論。
華白が神社へ向かったとしても、錯乱した兵士に射殺されるのがオチだ。




