101話「疲弊しきった追跡者」
……かくして、華白は毒の沼から離れ岸辺へ上がった、が……
岸上へ着いた途端、エメラルドグリーンの瞳が青い瞳に戻り、ガクっと左足の膝が崩れ落ちてしまう。
「あうッ、あ……足の力が! 多分、猛毒バフの反動かも」
猛毒によるパワーアップの制限時間が終わり、ドッと疲れが押し寄せて来る。荒神業魔との死闘で、かなりのエネルギーを消費してしまったが、一秒たりとも止まっている猶予はない。
(荒神業魔をわからせるチャンスかも。アイツだって、さっきの戦いで崖っぷちのはず……)
「はやく、荒神業魔をストーキングしなくちゃ」
(た、たしか…アイツは『南側』へ、トンズラこいたっけ?)
ターゲット(荒神業魔)の逃走経路は朧気に理解しているものの、焦りは禁物。
現段階では、あらゆる情報が不足している為、罠が待ち伏せている可能性だってありえる。ここは一旦、雷昂(蛾)と作戦を練り直して、確実に荒神業魔を追い詰めていきたい。
「情報が雑魚すぎるかも。とりあえず、謹崎さんに色々聴かなくちゃ……」
青い瞳をキョロキョロ動かし、雷昂の使い魔(蛾)に呼びかける。
「謹崎さん。そろそろ出番かも」
されど、蛾(雷昂)の姿は確認できず、シーンとした静寂のみが続くのみ。
「『かくれんぼ』なんか、してるヒマないよ。はやく、アイツを追わなくちゃ~」
どれだけ呼び掛けても、雷昂(蛾)の姿は見当たらない。
静まり返った沈黙の中、華白は居ても立っても居られず「謹崎さん!」と叫ぶ。それにも関わらず、幼女の返事は一切返ってこなかった。




