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100話「負けヒロインとポニーテイル」
「…………」
カケルが消えてしまい、空っぽになってしまう華白の両手。
「……おかしな夢に、感染しちゃったぁ~」
ギリギリ、ズキズキと痛む胸。
心臓が裂かれそうな痛みが、華白一人に圧しかかる。
「あぁ……うッ!うぅ」
華白は涙でグショグショになった顔を雑に拭ってから、『汚れたヘアゴム』を軍服の胸ポッケから取り出した。このヘアゴムは7歳の頃にカケルから貰った宝物だった。
「……となりで、見てて……カケル」
決意を胸に刻みながら、ヘアゴムで後ろ髪を束ねてみせる。
「わたしィは、多分……」
後ろ髪をぎこちない手つきで束ね、ボロいヘアゴムでギュッと縛り上げる。この髪型は7歳の頃、カケルに教わった『ポニーテイル』というヤツだった。
「0%に立ち向かってみせる、かもッ! 」




