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7話「ガイド係はセクハラおじさん」

 

 ーーそれからーー

 埃っぽい窮屈な車内で、華白は体育座りして息を潜めていた。


「こんなポンコツに毒森に行けっていうの……竹馬の方がマシかも」

「戦場を子供の遊び道具で、駆け回れるワケ無いじゃないか。見た目は頼りないけど、この『十式装甲車』は、僕たちの悪あがきに力を貸してくれるはずさ」


 十式装甲車……頑丈な軍用タイヤを駆使し、ありとあらゆる悪環境を走行できる「搬送用の装甲車」。走行力&運搬力、共に優れており、およそ10人の兵士を運搬可能だ。


「多分、言ってることは、分かる、けど……右も左も、男しかいない……オタサーの姫でもない限り、メリット皆無かも」

「オタク……とか、久々に聞いたよ」


 華白は、呆れ気味なカケルの返事に少しだけ安心しつつ、車内の片隅で小動物のように縮こまった。座席などと言うモノは一切備わっておらず、華白を含めた兵士たちは皆、冷たい座席の上に座るしかなかった。


「うぅ、せまい、最高に窮屈かも。息をするのも、しんどい」

「……おい。口を開く度、クレーム並べんじゃねえよ」


 目の前であぐらをかいている髭面男が、文句ばかりの華白に語りかけてくる。


「ノッポ嬢ちゃん。清々しいほどのビビりっぷりだな。豆知識を教えてやる。お前みたいなのは、ホラー映画やモンスター映画で一番最初に死ぬんだぜ」

「知ってても、知らなくても……役に立たない情報かも」


 パッと見た感じ、男の年齢は40代後半辺りに見える。


「簡単に死ぬつもりはない、かも。荒神業魔のことも、コボルトのことも、徹夜して頭に叩き込んできました、からッ……多分」

「知識だけで、地獄を生き抜けるかよ。コボルト共の脅威はキチガイ染みてる。奴らは『毒霧の中でも、平然と活動できる』からな」


 コボルトが『毒霧の中でも活動できる』という情報に頷く華白。


「コボルトの皮膚はとっても分厚いから……毒ガス……毒霧に耐えられるって、教科書に載ってたかも」

「オレたちは奴らの皮膚を『フォートレス甲殻』って呼んでる。どんな毒環境からも、コボルトを守る鉄壁の鎧ってヤツだ。これぞ、現代版ナイト様だぜ」

「騎士にしては禍々しすぎるかも」


「それに、フォートレス甲殻はべらぼうに分厚くてよ。風の噂によると、チタン合金よりも30倍頑丈らしいぜ。毒霧程度が平気なのも納得だ」


「でもな……どんな力にも、弱点は付きモンだ」と、髭面男が『フォートレス甲殻の欠点』を捕捉する。


「アイツコボルトも無敵ってワケじゃねえ。猛毒クラスの毒は、流石にシンドイらしいぜ」

「多分……どれだけ硬くても、上位クラスの毒からは身を守れないって事ですね」


 フォートレス甲殻で防護できる毒の種類は「普通の毒」まで……どうやら、毒森の所々に存在する『猛毒&超毒』などの上位クラスの毒には無力みたいだ。


「猛毒草に猛毒の木。猛毒茸に猛毒リンゴ。どんなクリーチャーも、触れたら一発アウトの愉快な仲間たちだ」

「……ちっとも楽しめる気がしないかも」

(本当に、全部「毒」なんだ。そんなのに……人間が触っちゃったら、どどどどど…どうなるのおおおお)


「………」と黙り込みながら、心の中で絶叫してしまう華白。


「すっかり縮こまってるじゃねえか。漏らしちまったか?」

「うぅ……」


 すると、横に座っていたカケルが二人の間に割り込んでくる。


「狭い車の中でセクハラだなんて……関心しませんね、大尉」


 カケルから『大尉』と呼ばれ、得意気に鼻を鳴らす髭面男。


「誤解だぜ。可愛い兵隊ちゃんに、特別授業してやってんのさ」

「苦しい言い訳はやめてください。ボクの目には、女の子に絡むオジサンにしか見えませんよ」


 このやり取りから、二人が知人同士であると察する華白。


(大尉って、かなり上の階級かも。多分、カケルの先輩?)


 大尉(髭面男)が華白を顎で差しながら、カケルにおちょくるような口調で語り掛ける。


「この長身女が、テメエの彼女なのかよ? 彼女に身長で負けるとか、哀れすぎて泣けてくるぜ」


 大尉から「カケルの彼女」と煽られ、華白は思わず青い瞳を見開いた。


(え、彼女おおお?!嬉しい、かも……)


 が、しかし……


「違います。彼女は、だだの幼馴染ですよ」


 カケルにキッパリと、『ただの幼なじみ』と訂正されてしまう。


(で、ですよねぇ~)




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