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0話①「十人十色の毒々パラダイス」


 「草も、土も、空気だって……ぜんぶ毒じゃないか」


 兵士Aはガスマスクの中で呼吸を荒げつつ、震える手でアサルトライフルを握りしめた。


 「地獄のオアシスというヤツか。異常すぎて、逆に楽しくなってきたよ」


 彼はガスマスクの中で固唾をのみ、恐る恐る360度見渡してみる。

 青紫の草、ヘドロのような土。『毒霧どくきり』という名の天然毒ガスによって、空気すべてが生命の害と化していた。


 「コレが毒森…か。まだ、地獄のほうが愛嬌がある」


  呆然と絶望する彼(兵士A)の元へ、仲間の兵士Bが駆けよってくる。


 「おい! ボーっとしてんじゃねえぞ。毒森の肥やしにされてえのか?! 」

 「生憎、肥料になるつもりはない。しかし、ここにあるグロテスクな樹木は…」


 周囲を見渡してみると、そこら中に毒々しい樹木が建ち並んでおり、それらの木にはグロデスクな果実がたわわに実っていた。


 「ご所望どおり! 『毒果実の木』だよ。良かったな! 本当、退屈させねえ森だぜ! クソッタレ」

 「喜べる要素皆無なんだが。そうか、成程……毒果実の木。『天然の猛毒』を実らせる木、か」


 「 今は、授業してるヒマはねえ。おら! ヴィランさまの登場だ。拍手と歓声で迎えやがれ」

 「化物を歓迎する余裕なんて、1秒もないのだが……」


 二人の愚痴に応えるように『とある者』が、ゆったりと姿を現す。


 「ギィエガ……」

 「「 コボルト?! 」」


 森奥からノッソリと姿を現した乱入者は、紫色の甲殻で全身を守った人型の怪人。そして、二人が絶叫した通り、その怪人は『コボルト』の名称で知られている。


 「開幕早々、最低最悪のシチュエーションだ」

 (コボルトは、武装した兵士100人を瞬殺してしまう。おっさん二人で攻略できる相手じゃない)

 「兵士B……ここは、尻尾を巻いて敗走するのが、真理だと思う」

 「カッコつけて『敗走宣言』してんじゃねえ。そもそも、あの甲殻ボーイ? は音速で散歩するんだぞ! 背中を見せた瞬間、ガブリだ! 」

 「なら、戦うしか選択肢はない、か。どう考えても自殺行為だな……」

 「悟ってんじゃねえよ。タコ! 」


 ウダウダ言い争っている間にも、コボルトがジリジリと歩み寄ってくる。


 「ギィエ」

 「化物め。人間さまの恐ろしさを、腹一杯に味わいやがれ」

 「料理のフルコースみたいに、言わないでくれ」


 呆れ気味な兵士Aの指摘を無視して、兵士Bはアサルトライフルをありったけ連射した。


 ドドドドドドドドドドドド!

 乱雑な弾幕があたりの毒植物へ命中、毒果実の木が銃撃に晒され、その上から猛毒の果実がポタポタと落っこちる。


 「兵士B、無駄弾をつかうな。アイツにはッ! 」

 「ギィ、エ」

 

 銃弾の何発かがコボルトに命中したものの、相手の甲殻は傷の一つもなかった。


 「?! 野郎、銃弾のシャワーを浴びたってのに、涼しい顔してやがる」

 「忘れたのか。コボルトの防御力は戦車級だって、教官が知識をひけらかしてたろ」

 (コボルトの甲殻はいかなる衝撃にも容易に耐える。つまり、人間サイズの要塞って事だ! )


 対するコボルトもやられっぱなしではない。

 反撃だ……と言わんばかりに「ガイエ……」と低く唸り攻撃姿勢へ移る。さらに、シュン! と、目にも止まらぬスピードで二人の前から姿をくらませた。


 「き、消えた?! いや……ちがう」

 (アイツは人知を超えたスピードで自由自在に行動する。早すぎて『消滅した』ように錯視したんだ)


 「くるぞ! 兵士B 遺言を準備するんだ」

 「やられる前提でスタンばってんじゃねえ。このオレが返り討ちにして、やッ……」


 ……バシュ!生々しい斬撃音が兵士Bの台詞途中で轟き、兵士Aの横で「ドサリ」と何かが倒れる音が続く。


 (……? 。な、なんの物音だ? 兵士Bがエロ本でも落したのか? )


 物音の正体を確認するべく、兵士Aは肩を張りながら視線を横へ流す。すると……


 「へ、兵士B!!! あ、頭が……」


 そこには、頭部をうしなった兵士Bの体が転がっていた。


 「ギィエ」

 「まさか?! その手にもってるのはッ?! )


 案の定、コボルトの手には、無残に引きちぎられた兵士Bの頭が抱えられていた。


 「あの一瞬で、兵士Bの頭をもぎ取ったのか?! 笑えないな。音速で動き回る災害なんて」


 無敵の怪物コボルトの圧倒的な戦闘力に、兵士Aの体が震えてしまう。 


 「ギィ……エ」

 コボルトが獲物(兵士A)を弄ぶように、一歩一歩と距離を縮めてくる。


 「くっ! くるな! 」


 通用しないと自覚しているが、兵士Aにはアサルトライフルしか頼みの綱はない。震える指を銃の引き金にのせる、が……銃口が光るよりも、コボルトのアクションが早かった。


 「ガァッ」


 短く吠えるコボルト、甲殻の拳で兵士Aの顔面へパンチを繰りだす。見事、その一撃は兵士Aの顔面ガスマスクにクリーンヒットしてしまう。


 「ご、はぁ! 」

 (正拳突き……だとッ! 怪物のくせに、空手の真似事をするのか?! )


 たった一撃のパンチが兵士Aの脳天を揺るがす。哀れな兵士Aは、成す術もなく地面へ張り倒されてしまった。


 「ハアハア、デタラメなパワーだ。大型のトラックに当て逃げされたみたい、だ」

 朦朧とした意識のまま、何とか立ち上がろうと試みるが……


 「……?! ……が、ガスマスクが…… 」

 (してやられた。さっきのパンチで、ガスマスクのレンズが逝ってしまった! )

 「ヤバいって、レベルじゃない。このままでは毒霧に! 」


 空気中の毒霧(毒ガス)が、壊れたガスマスクのレンズを通過して、兵士Aへダイレクトアタック。毒霧どくきりは、毒森に充満する天然の毒ガス。人間の器官から体内へ侵入して、内側から人体を汚染し侵食してしまう為、その脅威は計り知れない。


 「毒霧は、死亡率100%の天然ガス……ゴホッ! ガハッ! 息が、できな……い」

お越しいただき、大変うれしく思います。


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