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能力検証



「コホン、あくまで僕の推測ですが、能力にはいくつか性質があるのではないかと思われます


 小さく咳ばらいをしたオタクは、さらに自身の考えを述べていく。


「性質?」

「はい。例えば、ヤナギさんは、その姿からも分かる通り、普段から能力が発動していると思われます」


「確かに。この模様が能力だってんなら、俺の力はいつも使われてる――いや、使ってる状態が普通になってるってことか」


 ヤナギは、この世界に来て目覚めたときから身体に紋様が浮かんでいた。

 その身に浮き出た紋様が能力行使の証なら、最初から能力が使われていたということになる。


「つまり、常に能力を使っている状態ってことね。常に能力が発揮されている状態、『常態型』とでも仮に呼びましょうか。ということは――」


 合点がいったように呟いた春奈に、オタクは鷹揚に頷いて話を続ける。


「はい。姿が変わっていない方は、能力の形態が全く異なるか、能力の性質が異なるのではないかと考えられます。

 例えばですが、『能力を使うぞ』と思って使うタイプ、『本人の意思を無視して勝手に発動する』タイプ、あとは『特殊な条件を満たす必要がある』タイプなんかが考えられます」


 自身の培ってきた知識を元に可能性を羅列したオタクは、隼人と綾乃へ視線を向ける。


「そちらのお二人などは、思い当たるところがあるのではないですか?」


「確かに、俺は疾く走りたいって思った」

「私も、戦うという意思を持っていたと思います」


 自分達が能力を使った時のことを思い返した隼人と綾乃は、納得したように呟く。


「なら、私も似たようなものでしょうね」


 そう言って声を発した塚原は、自身が発生させたバリアのような力を思い返し、眼鏡を軽く持ち上げる。


「さて。ならば、ここにいるメンバーの能力を把握することが先決ですね」


 およそのことを把握した塚原は、ロッジにいる全員を見回して言う。


「これから私達はこの世界で生きていくしかありません。元の世界に戻る方法を探すのか、あるいはこの世界で生きていくのかは分かりませんが、これから何をするにしても、私達に宿ったこの能力が大きな力になることは間違いありません。

 誰に何ができるのかを検証し、私達に何ができるのかを知ることは生存するために必要なことです」


 メンバーを見渡した塚原は、あえて詳細に語ることで各々が能力を把握することの重要性を全員に訴えかける。


「そうね。なら、私も多分だけど、私も能力が分かったかもしれないわ」


「ほう?」


 それを聞いて頷いた春奈の言葉に、塚原は眼鏡の下でその視線に鋭利な光を宿す。


「さっき、怪物を見た時に『あれは何?』って思ったら、その情報が浮かんできたの。その生き物の名前とかみたいな情報が分かる――多分、私はそういう能力なんだと思う」


「それは、鑑定能力!」


 春奈から語られた能力にオタクが目を輝かせる。

 なぜかこの場にいるメンバーは、こういった話に疎いが、鑑定能力は異世界へ行った際の定番中の定番。オタクからすれば、テンションを上げずにはいられない内容だった。


「鑑定というよりは、知識を検索して取得するみたいな………どちらかといえば、『事典』の方が近いかもしれない」


「そうですか」

「……なんで落ち込んでるの?」


 自分の考えを述べた途端に肩を落としたオタクに、春奈は困惑した表情を浮かべる。


「例えば、私達を鑑定し、能力などを見極めることはできますか?


「やってみたけど無理ね。誰を見ても、『ホモサピエンス』とか、人間、日本人みたいな情報が出てくるだけみたい」


「そうですか。では、やはり全員の能力を検証する必要がありますね。まずは念のため、彼と同じように身体に異常がある人はいますか?」


 個人の情報というよりは、その生き物に関する詳細を知る能力らしいことを確かめた塚原は、まずはヤナギのように明確な身体の変化が起きていないかを確認する。

 とはいえ、身体に目に見えた変化があったのならば、すでに本人が申告しているだろうし、何より周囲の人間も気づくだろう。

 この問いかけはあくまで確認程度のものでしかなかったが、塚原の予想に反して手が挙がる。


「……あ、あの~」


 そう言って手を上げたのは、ふくよかな体型をした男だった。


「あなたは……」

「あ、田村です」


 名前が分からずに言い澱んだ塚原に名乗った田村――田村健吾という男は、おもむろに着ていた服をはだけ、自身の腹部を露出させる。


 そこには、その体格にふさわしい膨らんだ腹部があった。

 だが、それはただのお腹ではなく、噛み合わされた牙を思わせる扉のようなを金属質のそれになっていた。


「ひぃっ」

「何これ?」


 それを見た周囲の人間から押し殺したような悲鳴めいた声や訝しげな声が零れる。


「身体の一部が金属のように……そんな能力もあるのですね」


「なんか、開きそうな形してるよね?」


 塚原ぎ驚きながらも冷静に分析していると、その形状を見た春奈が思案げに呟く。

 扉を思わせる金属質の腹部に覚えた違和感を確かめようと検証していると、田村自身の手でならその扉を開けられることが分かった。


「うわ」


「え? 何これ、キモ」


 その扉の中は、まるで宇宙のような暗黒空間になっており、それを見た周囲の者達が逃げるように半身を引く。


「オタク! なんか意見はないのか?」


「見た限りですが、この穴が敵を吸い込んでしまうブラックホールのような力を持っているか、何かを入れておける収納能力ではないかと」


 自身の知識から可能性を提示したオタクに、ヤナギと春奈は顔を見合わせる。


「……とりあえず、何か入れてみるか」

「そうね」


「待って下さい。もしそれがブラックホールのように引力を持っていたら、全滅していたところです!」


「確かに……ちょっと迂闊だったわね。ごめんなさい。

 仕方ない。本当は危険だから避けたかったけど、能力の検証は外でやりましょう」


 塚原の指摘に頷いた春奈は、あまり乗り気ではない様子で提案する。


「でも、外にはさっきみたいな化け物が……」

「しかし、例えば爆弾のような能力を持った人がいてここにいる全員を吹き飛ばしてしまうかもしれないですから」

「それは……」


 わずかに溢れた不安と恐怖の言葉も、オタクのその説得で尻すぼみになっていく。


 外には少し前まで自分達の命を脅かした怪物達がうろついている可能性がある。

 だが、ここで能力の検証をして自滅することも避けねばならない。

 それが苦渋の判断であることは誰にも明らかだった。


「とにかく、外に出ましょう。能力が判明している者たちで守りますから」


 塚原の言葉にメンバーは渋々従い、再び外へと出るのだった。



※※※



「じゃあ、まあ、とりあえずこれか」


 外に出て真っ先に行われたのは、田村の腹に生じた金属の扉の検証だった。

 手近な木から折った細めの枝を手にしたヤナギは、それを田村の腹の穴へ入れようと試みる。


「……お、なんか、吸い込まれるみたいな感覚があるな」


 手にした枝が吸い込まれるような感覚を覚えたヤナギは力任せにそれを引き抜くが、長さが変わったようには見えなかった。


「途中まで差し込んで引き抜いても、入ってた部分がそのままということは、収納系と考えてもいいのかな?」


「次は全部入れてみるか」


 春奈の言葉に応じたヤナギは、その言葉通り小枝を田村の腹に吸って吸い込ませる。


「どう?」

「何ともないです」

「じゃあ、さっき入れたものを取り出せる?」


「え? この中に手をっこむんですか!?」


「心配すんな。指を突っ込むだけでいい。仮に指がなくなっても、あの子の力があれば再生できる」


 自分のこととはいえ、今日までなかった得体のしれない穴に手を入れる恐怖に怯える田村に、ヤナギが諭すように言う。

 その視線が捉えるミモリが持つ治癒能力は、身体欠損すら治療することができることはすでに実証されている。

 とはいえ、だからといって平気になるわけでもない。


「っ、たく」


 田村が怯えていると、ヤナギは仕方がないことだとは思いつつも、やや呆れたように嘆息し、自身の手をその穴へと入れようとする。


「――っ!?」


 しかしその瞬間、黒い穴はヤナギの身体の侵入を拒むかのように弾き飛ばしてしまう。


「ぁん?」


「これは……生き物を生きたまま入れることができないか、あの中に手を入れることができるのは彼自身だけということでは?」


 怪訝な声を発したヤナギに、その様子を見ていたオタクが意見する。


「だとよ」


「分かりました」


 柳の言葉に意を決した田村は、恐怖を押し殺して自分の腹部に生じた穴に手を突っ込む。


「ひい!? ……なんとも、ないですね」


 その感覚にうわずった悲鳴を上げ、咄嗟に手を引き抜いた田村だったが、その手に変化はなかった。

 拍子抜けしたように呟いた田村が再び腹穴の中へと手を入れると、その手には先ほど吸い込まれた小枝が握られていた。


「あ」


「決まりだな」


 それを見たヤナギが呟くと、オタクと春奈も小さく頷いて同意を示す。


「いいじゃない。収納できる容量はこれから検証する必要があるだろうけど、彼――タムラ君、がいれば、荷物が運べて便利だわ」


 こうしてふくよかな体型の男――タムラは、収納能力の持ち主であることが証明された。


浅野由紀子あさのゆきこ」 死亡


 女子高生か女子大生らしき女性。


生駒優愛いこまゆあ


 大人びた印象を持つキャリアウーマン風の女性。


石田優菜いしだゆうな


 顔立ちは整っているが、あまり華のない地味な女性。



江口美月えぐちみつき


 胸元の大きく開いた妖艶な色香を感じさせる女性。



オタク 「小田拓也おだたくや


 オタクのような容姿の青年。



黒島颯くろしまはやて


 迷彩服を着た男。



権藤大河ごんどうたいが」 死亡


 色黒の男。



斎藤朝陽さいとうあさひ」 死亡


 少し派手な印象の男性。



冴山悠さえやまゆう


 冴えない印象の男性。



桜庭竜馬さくらばりょうま


 顔立ちの整った美男子。


式原美守しきはらみもり


 ゆるふわ系少女。




鈴木日緒すずきひお


 ギャルのような女性。



高杉詩帆たかすぎしほ


 明るく人当たりのよさそうな女性。



橘隼人たちばなはやと


 好青年。



タムラ 「田村健吾たむらけんご


 ふくよかな体型の男性。 能力「収納」



塚原敬つかはらけい


 知的な印象を持つ眼鏡の男。



永瀬日葵ながせひまり


 イヤホンを着けた少女。



七海薫ななみかおる


 平凡な女性。



野々村(ののむら)陽介ようすけ


 髪を染めた軽薄な雰囲気の男性。



氷崎綾乃ひさきあやの


 日本刀を携えた黒髪の美少女。




美作春奈みまさかはるな


 清楚な印象の女性。 能力「事典」




宮原誠義みやはらせいぎ」 死亡


 中年男。




ヤナギ 「柳克人やなぎかつと」 :能力「身体強化」


 強面の男性。




カナタ 「結城叶多」


 平凡な少年。


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