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秘密の告白




「……消えてしまいました」


「そうか。カナタ、助かった。こんなことになるとは思わなくて、悪かったな」


 権藤の霊が消えてしまったことを悲しげに告げたカナタに、ヤナギが労いと感謝の言葉を向ける。


「いえ」


 自分にしかできないことだった上、こんなことになるとは想定もしていなかったが、複製した能力で権藤の言葉を代弁したカナタは、自分の事を気遣ってくれたヤナギの言葉に感謝と共に会釈を返す。


「一つ、気づいたことがあります」


 その時、おもむろに口を開いたメガネは、ハルナとヤナギ――そして、この場にいる全員に向けて、冷静な眼差しを向けて口を開く。


「おそらく、この場所にこの世界の住人は来ません」


「!」


 行動目的の一つである、「この世界の住人である誰かがこの島にやってきて接触を図る」という可能性が限りなく実現不可能な用件であることを告げたメガネは、その理由を説明する。


「おそらくですが、『この島からの脱出』。それが、このゲームのクリア条件なのではないでしょうか。つまり、この島自体が彼らによって隔離されたゲームのステージ。

 おそらく、この世界の有力者と伝手があるか、彼ら自身がこの世界で購入するなりして所有権を獲得し、私有地としていると思われます。つまり――」


「この島に無関係なものが来る可能性は限りなく皆無ということね」


 メガネの言葉に、ハルナは思案気な表情を浮かべて呟く。


 権藤は、この異世界移住ゲームがどうなれば終了になるのかまでは聞いていなかった。だが、島に隔離されている現状を鑑みた時、そのクリア条件として妥当なものは「島からの脱出」だろう。

 それならば、賭け(ゲーム)を成立させるために外部の人間が介入することは極力避けるはず。

 つまり、この島に関係者でない者が訪れる可能性は皆無に等しいということになる。


「そんな……」


 あくまで可能性でしかないが、その仮説には説得力があり、合点もいく。

 ならば、この島にいても助けが来る可能性は、ほぼあり得ないと考えた方がいいだろう。


「それについてはまた後で聞くとして――次はお前にも話を聞かせてもらわなきゃいけねぇな」


 自分達が置かれた状況を理解し、表情を曇らせるメンバーを一瞥したヤナギは、しかしこの場でもう一つ明らかにしておかなければならないことを知るため、その視線を悠へと向ける。


「なんで、(あれ)のことを黙ってた? カナタができてたってことは、てめぇにはもっと前から権藤の霊が見えていて、声も聞こえてたってことだよな?」


 なぜ霊視の事を話さなかったのか――その理由を問い詰められた悠は、恐怖に顔を歪め、全員からの視線に目を伏せる。


「ちょっと。心配しないで。彼も、私達も、あなたを責めるつもりはないの。ただ、話を聞かせてもらいたいだけなの」


 眼光鋭く威圧するような低い口調を発したヤナギを窘めたハルナは、悠に目線を合わせて努めて優しい声で語りかける。

 ハルナの柔らかな声音にも顔を俯けたまま目を合わせない悠は、しかし全員の視線を感じて、もはや言い逃れはできないと観念したのか、少しの間をおいてその重い口を開く。


「俺は、冴山悠じゃない」


「え?」


 絞り出すような声で一つの事実を告げた悠は、思いもよらぬないように戸惑うハルナの声を聞きながら、地面を見つめて言う。


「俺の本当の名前は、『九条(くじょう)(いつき)』。冴山悠は、俺の彼女(・・)だ」


「!」


 悠――否、九条樹が明かした真実に、全員が目を丸くする。

 本物の冴山悠は女性。ここにいる冴山悠だと思われていた男は、その名を使っていた別人に過ぎなかったのだ。


「俺は、この世界に来た日、悠を殺した(・・・・・)んだ」


 抱えた膝に顔を埋め、冴山悠の名を騙っていた男、九条樹――イツキが、涙に震える声で自身の罪を告白する。


「殺した、って」

「殺人ってこと?」


 その内容に声をひきつらせたメンバー達の口から零れた疑問に、イツキは小さく首肯を返す。


「きっかけは些細な喧嘩だった。その喧嘩で、ちょっともみ合いになって、はずみで悠は机の角に頭をぶつけて、動かくなって、息もしてなくて……」


 その時のことを思い出しているのか、顔ざめた表情で語ったイツキは、自分に向けられる視線に耐えかねたように顔を上げる。


「殺すつもりはなかったんだ! 本当だ! 信じてくれ!」


「分かった、分かった。で?」


 事故とは言え、悠の命を奪ってしまった罪悪感と、殺人犯として見られている辛さに声を荒げるイツキに、ヤナギは話の続きを促す。

 そんなヤナギの様子に再び目を伏せたイツキは、それからの行動を話し始める。


「怖くて、怖くて、どうしようかと思っていたら、悠の携帯に今日のことが書いてあった。だから――」


「忍び込んだってわけか……やつら、参加者が違うって知ってて無視しやがったな」


 自分がしたことを一つ一つ震えた声で明かすイツキに、ヤナギは苦々しい表情を浮かべる。


 ノワール達、このゲームの主催者側は誰に招待状を送ったのか、参加者を把握しているはず。

 にも関わらず、イツキがここにいるということは、冴山悠を騙っていたことを知りながら黙認していたということだろう。


「ねぇ、この人どうするの? その……人殺し、なんでしょ?」


 その話を聞いていた優愛が警戒しながら尋ねると、ハルナは仲間外れにされてしまうのではないかという恐怖に青褪めているイツキを見て言う。


「どうするって言われても……放り出すわけにもいかないでしょ?」


「ここは日本でもありませんしね。彼を裁く法が適応されるかと言うと……それに、彼の言葉を信じるならば、あくまで痴話喧嘩の事故だったということになります。少なくとも、私達に危害を加えることはないでしょう――そうですよね?」


 ハルナの言葉に、同意を示したメガネに尋ねられ、イツキは何度も首を縦に振る。


「さっき全員で生き残るっていったばっかりだしな。悪さをしない限りは様子見でいいだろ」


 そのやり取りにヤナギが付け足すと、カナタをはじめとしたメンバーの大半が同意、あるいは容認を示す態度を取る。


「そういうことでお願いします。皆さん、協力してこのゲームをクリアしましょう!」


 その様子を見回し、全員の意見を取りまとめたハルナの言葉が、静かな森の中に響いた。




 異世界移住の思惑を知り、共通の目的を掲げたカナタ達メンバーは、それから一致団結してこのゲームのクリアを目指して着々と準備を重ねていった。


 この島を脱出するため、外界と繋がっていそうな橋へと向かうため、全員が数日間過ごすことができる水と食料を集めた一同は、真実を知ってから一週間後、ついに出発の時を迎える。



「いきましょう」


 全員のリーダーであるハルナの言葉に、全員が首肯を返す。


(誰一人欠けず、この島を出て、この世界で生きていくんだ)


 その言葉に決意を新たにしたカナタは、同じ目的を持つ仲間達と共にロッジを後にし、橋がある方向へと進んでいくのだった。




浅野由紀子あさのゆきこ」 死亡


 女子高生か女子大生らしき女性。


生駒優愛いこまゆあ


 大人びた印象を持つキャリアウーマン風の女性。


ユウナ 「石田優菜いしだゆうな


 顔立ちは整っているが、あまり華のない地味な女性。 能力「火」



ミツキ 「江口美月えぐちみつき


 胸元の大きく開いた妖艶な色香を感じさせる女性。 能力「闇」



オタク 「小田拓也おだたくや


 オタクのような容姿の青年。 能力「爆発」



ハヤテ 「黒島颯くろしまはやて


 迷彩服を着た男。  能力「ステルス」



権藤大河ごんどうたいが」 死亡


 色黒の男。



斎藤朝陽さいとうあさひ」 死亡


 少し派手な印象の男性。



イツキ 「九条樹/冴山悠」


 冴えない印象の男性。

 恋人の冴山悠本人を誤って殺してしまい、逃げるためにその名前を騙って紛れ込んだ。 能力「霊視」。




リョウマ 「桜庭竜馬さくらばりょうま


 顔立ちの整った美男子。高所恐怖症 能力「飛行」



ミモリ 「式原美守しきはらみもり


 少女。能力「治癒」




ヒオ 「鈴木日緒すずきひお


 ギャルのような女性。 能力「ビーコン」



高杉詩帆たかすぎしほ


 明るく人当たりのよさそうな女性。



ハヤト 「橘隼人たちばなはやと


 好青年。 能力「駿足」



タムラ 「田村健吾たむらけんご


 ふくよかな体型の男性。 能力「収納」



塚原敬つかはらけい


 知的な印象を持つ眼鏡の男。 能力「防壁」



ヒマリ 「永瀬日葵ながせひまり


 イヤホンを着けた少女。 能力「危機察知」



七海薫ななみかおる


 平凡な女性。



ヨースケ 「野々村(ののむら)陽介ようすけ


 髪を染めた軽薄な雰囲気の男性。



アヤノ 「氷崎綾乃ひさきあやの


 日本刀を携えた黒髪の美少女。 能力「魔剣」




ハルナ 「美作春奈みまさかはるな


 清楚な印象の女性。 能力「事典」




宮原誠義みやはらせいぎ」 死亡


 中年男。




ヤナギ 「柳克人やなぎかつと」 


 強面の男性。 能力「身体強化」




カナタ 「結城叶多」


 平凡な少年。能力「シンクロ」


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