表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
16/27

同調



「これは――!?」


「俺と同じ!?」


 全身にヤナギと同じ紋様を浮かび上がらせたカナタは、困惑と共に自分の身体を見回す。


「そうか! コピー能力!」


 何が起きたのか分からないと言った様子のカナタと同様に全員が困惑する中、オタクは即座にその知識から一つの可能性に思い至る。


「コピー能力……つまり、彼の能力を写し取ったってこと?」


 それを聞いたハルナが簡潔に尋ねると、オタクは無言の首肯を以て答える。


「な、なるほど」


 オタクほどではないが、サブカルチャーに関する知識を持つカナタも自身に起きたことを理解をして、身体に浮かび上がった紋章を見る。


「おそらくですが、彼は触れた相手の能力を自分で使うことができるのです」


 川に落ちたヤナギに手を差し出し、握り返されたと同時に能力が発動した光景を思い返しながらオタクが言う。


「問題は能力を百パーセント複製しているのかそうでないのか、一度に複数の能力を複製できるのかといったことですが、まずは名前が先決! 複製、コピー――いえ、ここは格好よく同調、いえ『シンクロ』とでも呼びましょう!」


 思案気にぶつぶつと呟いていたオタクは、カナタの能力に名前を付ける。


「呼び方なんてどうでもいいが、本当に俺と同じ能力なのか?」


「それは、試してみるのが一番でしょうね。手近な岩でも殴ってみてもらいましょうか」


 オタクが名付けた渾身の能力名を軽くあしらったヤナギの疑問に同意したメガネは、その手法を提案する。


「……!」


 言われるまま、近くにあった岩を殴ったカナタは、自身の何十倍にもなるであろう質量を持つそれが粉々に砕け散る様を見て目を瞠る。


 薬の影響で、能力に関わらず、全員が地球にいた頃よりも身体能力がわずかに強化されている。

 だが、それでも岩を殴って破壊するなど、能力が発動する前の自分には不可能だったとカナタには断言できる。そしてそれは、この場にいる誰もが共感し、理解できることだった。


「とても便利な能力だわ。状況や戦況に合わせて臨機応変に立ち回りを変えることができる」


 その様子を見ていたハルナは、感嘆の声を零す。


 誰かの能力を複製して使えるのならば、戦闘要員として前線に立ってもらうことも、後衛で力を発揮してもらうこともできる。

 その能力の汎用性は、今いるメンバーの中でも抜きに出ているといえた。


「これが僕の能力」


(でも、これなんだか――)


 ヤナギと同じ身体強化の能力が発動している証である紋様が浮き出た腕に一瞥を落としたカナタは、ちいさな声で呟く。

 だが、欲していたはずの力を得たというのに、カナタはその表情に一抹の憂いの色を隠せなかった。


「ところで、こいつ食えるのか?」


 カナタの能力に感心しつつ、先にミモリにアヤノを治療させているヤナギは、事切れたオロチの死体をて尋ねる。


「……ええ。毒を生成する器官を取り除いたり、下処理をする必要はあるけれど、食べられるみたい」


「そうか。じゃあ、とりあえず持って帰るぞ。オイ、タムラ。これを収納するぞ」


 その質問にハルナが事典の能力で可食を判断して答えると、ヤナギはタムラを呼びつけて、オロチの死体を収納へ入れる。

 明らかにその入り口よりも巨大なであるにも関わらず、オロチの巨体はタムラの腹部の収納へと取り込まれ、瞬く間に消えてしまう。


「さて。さっさと水を回収して離れるぞ。また、さっきのやつみたいなのが来たら面倒だ」



◇◇◇



「――なるほど。これで、一通りカナタ君の能力について分かりましたね」


 水を回収し、オロチを食料としてひとまず利用することを決定した一行は、ロッジへと戻る道すがら、オタクによるカナタの能力検証を行っていた。


「一つ、能力を複製するには、対象者の身体――つまり素肌に左右どちらかの手のひらで触れなければならない。

 一つ、複製できる能力は一つ。別の能力を複製すると現在複製している能力は消えてしまう。ただし、再度取得は可能。

 一つ、能力の複製は本人の意志によらない。つまり、触ってしまった時点で能力を獲得してしまう。この点については注意が必要です」


「はい」


 オタクの口から告げられる自身の能力――「シンクロ」についての確認に、カナタは神妙な面持ちで首肯して理解を示す。


「便利な能力じゃねェか。これからは頼りにさせてもらうぜ。カナタ」


「はい」


 オタクの説明を聞いたヤナギに言われ、カナタは緊張した声で答える。

 その表情には隠し切れない不安が浮かんでいるものの、それ以上にようやく自分の能力を見つけることができた安堵と、仲間のために役に立つことができるという嬉しさが勝っていた。


(彼の能力は確かに有用だ。しかし、獲得できる能力が私達のそれに限られるのだから、我々が命を落として数が減れば、それだけ能力に制限がかかってしまう)


 その様子を横目で見ながら、メガネはカナタの能力に関する不安を心の中で呟く。


(ですが、そんなことを考えても仕方がない。今はこれ以上一人も欠けることなく、生きてこの島を脱出することが最大の命題なのだから)


 能力を複製するカナタの「シンクロ」は、仲間が減ればそれに従って能力の選択肢が減っていくリスクを備えている。

 とはいえ、そんな可能性を危惧しても仕方がない。

 一人でも多く、理想を言えば、これ以上誰一人かけることなく生き延びることが最大の目的なのだから、いたずらに不安をあおる必要もないとメガネは己の考えを胸の内に秘める。


(私は生きて、この世界で成功を掴む。そのために、この世界に来たのですから――!)


 そうしてカナタの能力を検証しつつ歩いていると、行きよりも体感的に短い時間でロッジへと戻ってくることができた。


「……ッ」


 ロッジに帰ってくるなり、冴えない印象を持つ青年――「冴山悠」がその表情に深い憂いを浮かべて視線を落とす。


「?」


「少し、いいかしら?」


 その様子を訝しげに見ていたカナタは、不意にアヤノに声をかけられて視線を向ける。


「この後、手合わせ――というか戦いの練習相手をお願いしたいのだけれど、いいかしら?」

「え? えっと……僕全然戦えないですよ」


 抑制されたアヤノから戦闘訓練の相手として指名されたカナタは、戸惑いながら答える。


 シンクロの能力を使えば、アヤノの魔剣の能力を複製することはできるが、自身に戦闘技能がないことを自覚しているカナタは、その相手が務まるとは思っていなかった。

 だが、その答えはアヤノにとっては想定の範疇だったらしく、事も無げに話を続ける。


「あなたも、最低限戦う技術は必要でしょう? 私でよければ、簡単なレクチャーをしてあげられるわ。多少の傷も、ミモリさんの力があれば治せるのだし」


 シンクロで能力を複製できても、ヤナギやアヤノと同じように戦えるわけではない。

 能力を活かし、かつこの世界で生きていく確率を少しでも上げるため、多少の戦闘技能は必要になるというアヤノの指摘はもっともなことであり、カナタとしても断る理由はなかった。

 

「……分かりました。ただ、できればあまり怪我しない方向でお願いしたいです」


「それは、あなた次第よ」


 戦う技術が必要なことは頭では分かっているが、可能であれば怪我をしたくないというカナタの言い分に、アヤノは抑制の利いた声で答えて手を差し出す。

 握手を求めるように差し出されたアヤノの手が、「自分の能力を複製しろ」という意味であることを遅れて理解したカナタは、躊躇いがちに答える。


「悪いけれど、少し付き合ってもらえるかしら?」


「いいですよ。お互いに大怪我をしないように気を付けてください」


 治療要因としてアヤノに声をかけられたミモリは、ここまでの話を聞いていたこともあって、快く承諾する。


「どっちが勝つか賭けましょうか?」

「そんなの成立しませんよ。普通に考えれば、どっちが勝つかは明白なのですから」


 それを見ていたヨースケが楽しげに言うものの、メガネは一笑に付してカナタとアヤノを一瞥する。


「お願いします」

「あ、お願いします」


 礼儀正しく一礼したアヤノが魔剣を構えると、カナタも同じように頭を下げて同じ形状をした魔剣を構える。


「先手をどうぞ」

「……では、遠慮なく」


 アヤノに言われて深く息を吐いたカナタは、気合と共に切りかかる。


 実際、この訓練の結果は分かり切っており、そして予想を裏切るような事態は起きなかった。


 一合、あえて魔剣を受けたアヤノは、その刃を受け流して、そのまま切り返してカナタの喉元に黒い刃を添える。


「まいりました」



「まあ、分かり切った結果ですな。能力は同じでも、使い手次第で差がつく。カナタ氏では、アヤノさんに勝てないでしょう」


「そうね」


 その様子をさりげなく見ていたオタクの言葉に応じたハルナは、カナタに勝利したアヤノへと視線を向ける。


(浮かない顔ね。剣術の素人に勝ってもそこまで嬉しくはないということなのかしら? それとも、他に気になることでもあるのかしら)


 二人の表情は、いずれも晴れやかというわけにはいかないものだった。


 未経験とはいえ負けたカナタは単純な悔しさか、あるいは今後自分が戦っていけるのかという不安だろうが、勝利したアヤノも何かを気にしているように見える。



「気にしないで。少し訓練すれば戦えるようになると思うわ。そもそも私だって、あんな怪物と戦う技術なんてないんだから」


「はい」


 微笑を含めた穏やかな声でカナタを慰めたアヤノは、自身の手と、そこに握られた魔剣へと一瞥を落とす。


「――やっぱり身体能力自体は彼の方が優れている。見たところ、身体を鍛えているということはないのに……これが男と女の差ということね。今は経験の差で私が勝つけれど、彼が真剣に鍛えたなら……」


 自らの細い腕と魔剣を見て零れたアヤノの独白は、誰の耳に届くこともなく、静かに空気に溶けていった。



浅野由紀子あさのゆきこ」 死亡


 女子高生か女子大生らしき女性。


生駒優愛いこまゆあ


 大人びた印象を持つキャリアウーマン風の女性。


ユウナ 「石田優菜いしだゆうな


 顔立ちは整っているが、あまり華のない地味な女性。 能力「火」



ミツキ 「江口美月えぐちみつき


 胸元の大きく開いた妖艶な色香を感じさせる女性。 能力「闇」



オタク 「小田拓也おだたくや


 オタクのような容姿の青年。 能力「爆発」



ハヤテ 「黒島颯くろしまはやて


 迷彩服を着た男。  能力「ステルス」



権藤大河ごんどうたいが」 死亡


 色黒の男。



斎藤朝陽さいとうあさひ」 死亡


 少し派手な印象の男性。



冴山悠さえやまゆう


 冴えない印象の男性。



リョウマ 「桜庭竜馬さくらばりょうま


 顔立ちの整った美男子。高所恐怖症 能力「飛行」



ミモリ 「式原美守しきはらみもり


 少女。能力「治癒」




ヒオ 「鈴木日緒すずきひお


 ギャルのような女性。 能力「ビーコン」



高杉詩帆たかすぎしほ


 明るく人当たりのよさそうな女性。



ハヤト 「橘隼人たちばなはやと


 好青年。 能力「駿足」



タムラ 「田村健吾たむらけんご


 ふくよかな体型の男性。 能力「収納」



塚原敬つかはらけい


 知的な印象を持つ眼鏡の男。 能力「防壁」



ヒマリ 「永瀬日葵ながせひまり


 イヤホンを着けた少女。 能力「危機察知」



七海薫ななみかおる


 平凡な女性。



ヨースケ 「野々村(ののむら)陽介ようすけ


 髪を染めた軽薄な雰囲気の男性。



アヤノ 「氷崎綾乃ひさきあやの


 日本刀を携えた黒髪の美少女。 能力「魔剣」




ハルナ 「美作春奈みまさかはるな


 清楚な印象の女性。 能力「事典」




宮原誠義みやはらせいぎ」 死亡


 中年男。




ヤナギ 「柳克人やなぎかつと」 


 強面の男性。 能力「身体強化」




カナタ 「結城叶多」


 平凡な少年。能力「シンクロ」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ