3月3日:ひな祭り
あれぇ~? もうきたのかぁ~い? なんだいその顔は~? 酔っぱらってなんかないさぁ~。ただの甘酒を飲んだだけだよぉ~? ほら~、ちゃんと力も使えるぅ~! いってらっしゃぁ~い。
* * *
「サリ、これはここでいいのか?」
「なにやってるんじゃカルロッテ! お主はひな人形を飾ったことはないのか⁉」
「無いな。こんな育て方されて女の子の祝いなどされたことがあるように見えるか?」
「まぁそれはそうじゃな。それはそうとナルディたちはいつ頃来るとな?」
「少し遅れるらしい。サタナが単位ぎりぎりだから提出物だけでもやらせているそうだ」
「あやつは相変わらずじゃな……」
冬の厳しい寒さが終わりを迎えて地域によっては桜の息吹を感じられ始めた今日。サリの家ではひな祭りを祝う準備が行われていた。
「サリ先輩~。カルロッテ師匠~! 来ましたよ~」
「メギル。来てもらってなんだが肝心の主役がまだ来てなくてな」
「課題に追われているんだそうじゃ」
「サタナ先輩は相変わらずですね……あ、忘れる前にこちらを」
メギルは手元の袋をごそごそするとひなあられと菱餅を取り出す。
「商店街を通りがかった時にハツキさんが持たせてくれたんです」
「彼女もずっとどこかしらで働いているな。体の方は大丈夫なのか……」
「お主がそれを言うんじゃな。まぁ今度会ったときに礼でも言っておくかの」
「そうしてください。あれ、コタツ片づけちゃったんですね……」
「まぁ邪魔だしな」
「じゃな」
「北の方出身だからいいですよね! まだまだ寒いですよ!」
「そうか?」
「そうでもないじゃろて」
「4℃は寒いですって!」
「こんにちは~」
「やっとこれたぁぁぁああああ‼」
ドアが開くと同時に瀕死状態のサタナが部屋に入ってきた……倒れこんだ。そんなサタナの横をナルディはスタスタと通り過ぎて台所に向かう。
「大変でしたね……サタナ先輩……」
「ここまで課題を放置したサタナの自業自得じゃからそんな言葉をかける必要はないのじゃ」
「うっ……正論パンチ……」
「まぁ課題はやって置くべきだ。私もそこまで頭はよくないが課題はやっていたぞ」
「お主は儂が見てなかったらやってなかったじゃろ!」
「カルロッテ先輩は他ができるからなぁ……」
「まぁ僕の師匠最強なので!」
「どうしてお前がそんなに誇らしそうなんだ?」
しばらくしてナルディが忙しそうにしながら台所から顔をのぞかせる。
「サタナ、これらを運んでください」
「任せて!」
「つまみ食いはだめですよ」
「そんなことしないよ⁉」
「僕も手伝います!」
「メギルはこっちを手伝ってほしいのじゃ。いかんせんカルロッテが使い物にならん久手の」
「うるさい」
「分かりました!」
しばらくして涙目になったサタナがちらし寿司をはじめとするひな祭りの食べ物を机に並べていく。
「しっかりやったんじゃな」
「ナルディのご飯がおいしそうなのがいけないんだ!」
「それはとても嬉しいことですが、それとこれとは別の話です」
「むぅ……って随分立派なお雛様だね!」
「これは儂の実家で長いこと保存されていたやつじゃからな。立派で当然なのじゃ」
「なるほど。確かに年季を感じますね」
「それよりも早く食おう!」
「花より団子な奴じゃな……まぁ確かに美味しそうじゃが」
「そういえばひな祭りの時って何か言うことってあるんでしょうか?」
「確かに考えたこともなかったな」
「特にないんじゃないんでしょうか? 僕のイメージでは明かりをつけましょぼんぼりに~って感じです」
「まぁひな祭り自体、女子(おなご)の健やかな成長を願うものじゃから友人間で祝うものでもないしの」
「まぁいいんじゃない? ちょっとメギルに申し訳ないかなってぐらい」
「大丈夫ですよ。5月5日を楽しみにしておきますね!」
「ちゃっかりしておるの」
「まぁ乾杯! でいいんじゃない?」
「いいんじゃないでしょうか?」
「雑じゃな。まぁ文句はないの」
「それじゃあ乾杯!」
『かんぱ~い!』
「まるで飲み会じゃな……」
* * *
うぇ……あれ? いつの間に帰ってたんだ……正気に戻ったかって? おかげさまでね。それにしても神みたいな存在であるこの私が酒に負けるだなんて……一生の不覚……え? 普通は甘酒なんかで酔わないって? うるさいなぁ! 次は3月14日だから笑ってないでとっとと帰れー!
甘酒で酔っぱらうなんてことってあるんですかね? 如何せん自分じゃ飲まないものですからよく分からないのですが色んな漫画、小説出そうなのでまぁそういうものとしておきましたとさ。それでは皆様、ひな祭りを祝ってかんぱーい!