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時間の館  作者: 霜華みあ
6/11

2月14日:バレンタインデー

 それで、チョコはもらえたのかい? まぁその顔を見ればなんとなくわかるけどね。あはは、悪かったって。これをあげるからそんなに怒らないでほしい。なんだいその顔は、怪しいものが入ってそうだって? 失礼だな、ちょっとだけ珍しい私の国の素材を使っているだけさ。食べるかどうかは君に任せるけど、私は食べてほしいかな。さて、今日は2月14日。彼女(リーライム)たちの世界に案内するとしよう。


 * * *


「とも……ちょこ?」

「うん! リィも作ろうよ!」

「作ろう!」


 イギリスからやってきた留学生のリーライム・ルサソレーナとラッセム・ヴァントゥーラは友人の源 捺希を交えて今日のイベントについて話していた。


「そう! 友チョコ! さっき捺希ちゃんから教えてもらったんだ!」

「そういえば、イギリスではバレンタインデーに何かしないの?」

「そうですね……イギリスでは日本と同じようにチョコレートを贈りあう習慣はありますね。ただ、日本と違って男性から送ることの方が多いかもしれないですね」

「そうなんだ。じゃあホワイトデーはどう過ごすの?」

「ほわいとでーって?」

「え? 3月14日に男性がバレンタインのお返しをするっていうイベントなんだけど……もしかして……ないの⁉」

「今調べてみたけどホワイトデーは日本生まれの文化らしいよ」

「知らなかった……」

「それで、その友チョコはどのように準備すれば?」

「買うのでもいいし、作ってもいいね!」

「作りたい!」

「よし、作ろう!」

「おー!」

「少しくらい私にも話させてください……」


 こうして、とんとん拍子に話が進んでしまった結果、リーライムはラッセムと共に捺希の家を訪れていた。


「初めて来たけど、落ち着いた日本民家って感じで物凄く好き!」

「ラッセムたちは寮に住んでるんだっけ?」

「うん! 量の生活も悪くないよ!」

「ただ、このようなときにキッチンなどを使えないのは不便ですね」

「確かに。とりあえず入って入って!」

「お邪魔しまーす!」

「お邪魔します」


 3人は支度を済ませてキッチンに立ち調理を始めようとするが、肝心なことを何も決めていないことに気が付く。


「なに作る……?」

「うーん、今あるものでささっと作っちゃうならガトーショコラが妥当かな?」

「ガトーショコラ!」

「私に作れるものなんでしょうか……」

「リィは不器用だもんね!」

「うるさいです……」

「大丈夫だよ! 混ぜて焼くだけだし!」


 そう言って捺希は冷蔵庫から板チョコを100g取り出してラッセムに渡す。


「これを湯煎するから溶けやすくなるように粗みじん切りにしてください」

「らじゃ!」


 ラッセムは持ち前の器用さであっという間にみじん切りを終わらせてボウルに移す。捺希はその中にバターを100g入れて、ボウルごとお湯の入った鍋に入れる。


「じゃあ、リーライムはこれを滑らかになるまで混ぜて!」

「分かりました」

「私は?」

「お休み! とはいってもそんなにかからないとは思うけどね」

「終わりました!」

「なんだ、ラッセムがああやっていう割には手際良い……じゃん……?」


 リーライムに任せたボウルの中身は確かに混ざっていたがチョコが辺りに飛び散っており、自慢気なリーライムの顔にもついているほどだった。


「ね?」

「うん……よし、次にいこう。次はこの中に卵を1個と砂糖を50g入れて泡だて器で混ぜて」

「分かった!」

「次は?」

「じゃあ、薄力粉40gをこのふるいに慎重に入れてくれる? 慎重にね?」

「わ……わかりました!」


 ラッセムが混ぜ終えたボウルに振るった薄力粉40gとベーキングパウダーを3g入れて、捺希が手慣れた様子で粉気がなくなるまで混ぜ合わせる。


「あ、そこのオーブンの中に天板を置いて160℃で余熱しておいて!」

「おっけー!」


完全に粉気のなくなった生地を15㎝型に流し込んでいる間に160℃の余熱が終わると捺希は天板の上に型に入れた生地を置いて時間を30分にセットする。


「さてと、待ちますか!」

「はーい!」


 * * *


「お姉さま、ここ間違ってます」

「えぇぇぇ……もう嫌だぁ……」

「なんというか本当に対照的だね。でも、姉妹じゃないんだっけ?」

「うん、リィは私のいとこ! 私の方が4か月お姉さんなんだ!」

「そうなんだ。リーライムみたいなかわいい子からお姉さまって呼ばれるのずるい!」

「ふっふーん! この特権は譲れないね!」

「無駄口をたたくのはそこまでにして、進めましょう……」

「お!」


 3人が共に(リーライムに頼りきりになりながら)宿題を進めていたら、オーブンが鳴った。その音を聞いてラッセムは真っ先に文房具を放ってキッチンに駆けていった。


「ラッセム、ステイ。まずはいったん出してみてこの竹串を指して中まで焼けてるか確認しなきゃ」

「はーい。うん、竹串に何もついてないよ!」

「よし、それじゃあこれを冷やして後はおしまいだから……」


 しばらく待って粗熱が取り、冷蔵庫で30分ほど冷やした後、捺希はケーキを8等分にカットしてそのうちの6つをそれぞれ丁寧にラッピングして手渡す。


「こんなにいいの?」

「もちろん! お兄さんにも渡してあげて!」

「ありがとうございます。お兄様もきっと喜んでくれると思います!」

「だね! 早く帰って渡そう!」


 リーライムとラッセムは捺希と別れて帰路につく。時計は既に17時を過ぎていたが外はまだ明るく冬が終わりつつあることを告げていた。

 しばらく歩いて家に着くとミレハイルが心配そうな顔をして玄関まで走ってくる。


「リーライム、ラッセム……遅くなるなら一言かけてくれ……」

「ごめんなさい。その……」

「ハッピーバレンタイン! これあげるから許して!」

「これは?」

「捺希さんのところでこれを作ってきたんです。だから遅くなってしまいました……」

「そうなの。ごめんなさーい!」

「ラッセムはもっと反省しなさい。まぁとりあえずちゃんと帰ってきてくれたから不問にするが、次は気をつけなさい」

「はい!」

「分かった!」

「それじゃ、僕からはこれを」


 ミレハイルはキッチンの戸棚から2袋のドーナツを取り出した。それをリーライムとラッセムに一つずる手渡す。



「リーライム、ラッセム、ハッピーバレンタイン!」

『ハッピーバレンタイン!』


 * * *


 やぁ、おかえり。それで、君は誰かに送ったりしたのかい? 親、友人はたまた恋人。せっかくのイベントなんだし何か送ったりするといい。送るときはお菓子の意味にも気を付けてね。え? 私の送ったそれは何かって? 私の口から言わせるだなんて君もかなりの意地悪だね。 キャンディーだよ。……次会えるのは3月3日だよ。それじゃあ、ハッピーバレンタイン!


バレンタインは自分で作っておしまいなので今年作ったもののレシピをリーライムちゃんたちに作っていただきました。写真も載せようと思ったのですがいろいろと不安が残るので今回はなしでお許しください。

それでは皆様、ハッピーバレンタイン!

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