表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
時間の館  作者: 霜華みあ
5/11

2月3日:節分

 はぁ、ひゃんほひはんはへ。……やめたまえ。まさか、今来るとは思わなかったんだから仕方がないだろう。私だって恵方巻くらい食べるさ。こほん……改めて。やぁ、ちゃんと来たんだね。1か月も前だったからてっきり忘れているかと思ってたよ。やっぱり私が恋しかったんだね? ……うれしいことを言ってくれるじゃないか。それはそれとして。今日は2月3日。彼女(サタナ)達の世界に案内するとしよう。


 * * *


「今日は節分ですね」

「そうだね、でも特段何かやることもなくない?」

「確かにそうかもしれないですが、豆まきと恵方巻を食べることくらいしましょう?」


 今日は2月の頭、新年になってから1か月たって町の様子も落ち着いてきたころ、サタナとナルディはいつも通り帰路についていた。


「まだまだ寒いね」

「ですね、週明けには雪が降ると言ってました」

「雪! 豆まきじゃなくて雪合戦しよ!」

「この地域じゃ降っても積もるとは思いませんが、積もったらしてもいいかもしれないですね」

「先輩!」


 サタナたちの前から元気に表れたのは元々同じ中学校の後輩のラッセムだった。彼女はそのままのスピードでサタナに突っ込んでいく。

 そんなラッセムとは対照的にかなり後ろの方から肩で息をしながらリーライムが現れた。


「大丈夫ですか、リーライム」

「は……はい……なんとか……」

「ラッセム、私も久々に会えてうれしいけど……いきなり突撃するのはやめない⁉」

「いやだ!」

「そういえば、2人はどこに行ってたのです? 学校がある方の反対方面から来ましたけど」

「豆!」

「豆?」

「お姉さま、説明になってません。この先の黒原神社で豆まきがあったのです。参加すると豆をこんな感じで何袋かもらえるので毎年参加しているんです」


 リーライムがショルダーバックから何袋かの豆を取り出して見せる。豆は透明な袋の中に入っており、袋には黒原神社の龍紋のシールが貼ってあった。


「ユラたちはこんなことまでやっているのですね。毎年やっているなら誘ってくれたって良いですのに」

「だね、今から行ってみる?」

「ですね、リーライム、ラッセム教えてくれてありがとうございます」

「うん!」

「はい!」


 リーライムたちと別れて彼女らが来た道を進んでいく。神社に辿り着くと神社は人でごった返していた。

 敷地を少しずつ進んでいくと敷地の真ん中に見慣れない櫓があるのが見えてきた。どうやら櫓の上の巫女さんたちが豆を投げているらしく参拝者はそれをもらうために来ているらしい。


「随分にぎわってるね」

「そうですね、よっと。これで3個目です」

「ナルディは身長が高いからいいよね! 私なんてまだとれてすらないんだけど!」

「あれ、ナルディ来てたんだ!」

「あなたですか……」

「ちょっと! まだ何もしてないじゃん!」

「ナルディ、サタナ。来てくれていたんですね」

「ユラさん! そうなんだ、リーライムが教えてくれてね」

「リーライム……あぁ、あの銀髪の! あの子もかわいいよね!」

「だよね!」

「そういえば、さっきサリさんとカルロッテさんが来てましたよ。何やらあなたたちを探して居たらしいですけど?」

「そうなんですか? サタナ、何か聞いていないんですか?」

「……やっば。スマホの電源切りっぱなしだった……そういうナルディは⁉」

「私はそもそも電源が切れてます」

「なんで誇らしそうなの……まぁいいや」


 サタナはスマホの電源をつけてサリからの連絡を確認する。そこには「夕飯を食べに儂の家に来い!」とだけ書いてあった。


「夕飯のお誘いですか。また突然ですね」

「そうだね。まぁまだ準備も何もしてなかったし有難くいただきにいこっか」

「それじゃあ、お仕事頑張ってください」

「うん、ありがとう」

「ナルディ帰っちゃうのぉぉぉおおおお‼」

「サタナ、帰りましょう」

「う……うん……」


 ユラは無情にもリアンの首根っこを掴んで神社の奥へと消えていった。

 サタナとナルディはその足で神社から徒歩数分のところにあるサリとカルロッテのシェアハウスに向かった。


「よく来たのじゃ!」

「サリさん、急にどうしたの?」

「まぁまぁ、とりあえずはいるのじゃ!」

「お、来たか」

「カルロッテさん……ってこの食材たちは何⁉」


 居間では大量の段ボールに入った食材たちがカルロッテの周りを取り囲んでいた。食材は野菜から肉、魚などなどざっと見ただけでも20種類くらいはありそうだった。


「カルロッテの実家から送られてきての、まぁ儂の実家でもあるんじゃが」

「私の親はそろって心配性だからな……時々こんな感じで大量の食材が送られてくるんだ」

「まぁこんな量保存のしようもなくての。お主らと一緒に食べれば何とか減らないかと思っての」

「なるほど。てっきり恵方巻を作るのかと思ってた」

「これらで作ってもいいんじゃないですか?」


 そういうわけで恵方巻の材料にするべく食材の下準備を始めていると玄関の扉が開く音と共にメギルの声が聞こえてきた。


「サリ先輩、来ましたよ~ってなんですかこれ⁉」

「今日は恵方巻パーティじゃ!」

「いったい何がどうしてこうなったんですか……」

「実家から来た」

「え?」

「実家から届いたんだ」

「これ全部?」

「あぁ」

「師匠のご両親はすごいですね……」


 しばらくして大量の恵方巻が出来上がった。その数20本。


「何やってるんですか⁉」

「いやぁ作ってたら楽しくなっちゃった」

「これじゃあ静かに食べるんじゃなくて本当に口数が減りますよ!」

「落ち着けメギル。お前が半分食べればいいんだ」

「何を真面目な顔しながら言ってるんですか⁉」


 結局、1人1本ずつ食べて残りは持って帰ることにして食べ始めることになった。黙々と食べ続けた後、黒原神社でもらった豆まきをすることに。


「そういえばなんで豆なんだろうね」

とされているからじゃ。ちなみに炒り豆じゃないと魔を射れないからダメなんだそうじゃ」

「ふーん、じゃあちゃんとなげなきゃだね」

「よし、投げるとするか」

「うん! それじゃ……」

『鬼は外! 福は内!』


 * * *


 やぁ、おかえり。君はちゃんと豆まきはしたのかい? やらなきゃ怖~い鬼が現れちゃうぞ? そんなの嘘だって? 強ちそんなこともないかもしれないよ? 如何せん、私のようなものがいるんだからね。ふふっ、怖がらせるつもりはなかったんだ許してほしい。まぁ、私ほどの者に会ったから君の身に悪いことは起きないと思うよ。多分。次、君に会えるのは、2月14日になるね。またすぐに会えることになるからさみしい思いはさせずに済みそうだ。それじゃあ、鬼は外。福は内。


節分ですね。私の家ではいつも恵方巻を食べているのですが、それでようやく思い出しました。次からはちゃんと準備しておこうと思います……。それでは皆さんのもとから邪気が払われますように! 鬼は外‼ 福は内‼

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ