12月25日:クリスマス
やぁ、君は? ふむ……――というのだね? 私かい? 私はこの館の主さ。名前ねぇ、特にないから好きに呼ぶがいい、例えば、時間の番人とかね。なにやら未だに状況が理解できていなさそうだね。簡単に説明してあげよう。ここは時間の狭間にある時間の館さ。ここからはある特定の日だけ、その日の他の場所の様子が見れる。ふふっ……何が何やらって様子だね。よし、百聞は一見に如かずというものだ。今日は12月25日だ、クリスマスを楽しむ彼女らのところに案内してあげよう。
* * *
「寒い! 寒すぎる!」
「そんな薄着で外に出るからですよ!」
「その通りじゃな」
「元はと言えばパーティの準備を忘れたせいで外に出ることになったんじゃないですか!」
「落ち着け、結局いつものことだ」
「ごめんってば!」
もうわかっただろう? ここは彼女達のいる世界さ。とは言っても彼女たちの世界線ではないんだけどね。どういうことかって? 彼女たちの服装や世界の姿を見ればよく分かるだろう。どれもこれも君たちになじみ深い服、建物、人々じゃないかい?まぁそういうことさ、いわゆる現ぱろってやつさ。苦手なら帰るといい。
「相変わらずサタナ先輩は忘れっぽいんですから……」
「いや、メギルがしっかりしすぎなだけじゃろて」
「それはそうだな、本当にサタナの方が年下なのか?」
「あー! カルロッテ先輩が私のことバカにした!」
「事実なんだからあきらめてくださいサタナ。あなたがドジなのは大昔からでしょう」
「ナルディまで!? もう怒ったからね!」
ようやく全員が冬休みに入った今日。彼女らはクリスマスを祝うためにサタナの家でパーティを行うことになった。
「『準備は全部任せて!』と言ったのに寝落ちしてなにも準備してなかったのはサタナなんじゃから大人しく言われておくんじゃな」
「それはそうだけどぉ……そういえばサリさんの大学は冬休み遅いんだね」
「まぁそんなもんじゃろ。それよりサタナはこんなことしてる暇あるのかの?」
「ま、まぁ? あと1年あるし……」
「ナルディみたいに成績優秀でもないんだから頑張るんだな」
「私なんてまだまだですよ!」
「カルロッテ先輩は良いよね! スポーツ推薦で入っちゃってさ!」
「サタナ先輩も何か推薦で入ればいいじゃないですか」
「簡単に言ってくれるねメギルぅ……って! こんな話しに来たんじゃない!」
「そうじゃな、しかしこの時間にやってる店なんてあるのかの」
「まぁ私にあてがあるから心配しないで!」
そうサタナは自信満々に言うと足早に1つの洋菓子店へはいっていった。その後ろを4人は納得の顔でついていく。
「いらっしゃぁあああ⁉」
「イルナァアアア!!! 助けてぇえええ!!!」
サタナは店に入るや否や店員であり友人のイルナにしがみつく。あまりの突然の展開に他の客のいない店の中でイルナとサタナの声がこだまする。
「もう! 突然なんだっていうの? 今日は皆さんとパーティだって聞いてたけど」
「こんばんはイルナ、今日はこのポンコツがやらかしての」
「ケーキが欲しかったんだが……あるか?」
「えぇ⁉ サタナ、ケーキ買い忘れたの⁉」
「うぅ……返す言葉もございません……」
「まぁそれならこの後合流するときに持っていこうと思ってたものがあるけど……」
「神様、仏様、イルナ様‼ 本当によかった!」
「まぁそろそろお店閉める頃らしいし……丁度良かったと考えていいのかな」
「あはは……」
イルナは呆れたようにそう言いながら奥に戻り服を着替えケーキを袋に入れて戻ってきた。
「それじゃあしゅっぱーつ!」
店を出るとサタナは家に向かう道とは反対方向に歩を進めていく。そんなサタナをイルナは額に青筋を浮かべながら自分の方へグイっと引く。
「イルナ? どうしたの?」
「どうしたのじゃないよ! まさか買いにきたのって……」
「全部じゃよ、ぜーんーぶ!」
もはや呆れを通り越したイルナはその場に崩れ落ちる感覚に何とか耐えてその場でふらつく。
「本当に何やってるの……」
「いや、ちゃんとやる気はあったんだよ? ただ、その……」
「うん、これ以上は言わなくていいよ……」
一行はイルナを連れて商店街通りへと向かった。商店街はこの寒さの中クリスマスの熱気で満ちていた。
「まだ真夜中ではないとはいえ賑わってますね」
「そうだな、それでサタナ。どこに行くのか決めているのか?」
「ハツキのところ!」
「そういえばハツキは今ピザ屋でバイトしているんでしたね」
「なんかクリスマス期間は稼ぎ時!らしいよ」
「クリスマスのおともにピザはどないですかぁ!」
一行は友人のハツキを探していると遠くの方からもはや聞きなれた大阪弁が聞こえて来た。
「あっちですね」
「そうじゃな」
声のする方に進んでいくと少女がピザをたたき売りしている異様な光景が見えてくる。そんなよく分からない状況ではあるものの客の集まりはよさそうである。
「あのー、ハツキさん?」
「サタナ……と皆さん!こないなところでなにやっとるんでっか? もしかして集合時間すぎとんね⁉」
「まだ大丈夫ですよ。ただ、私たちはピザを買いに来たんです」
「安心したってや! ウチの方ですでに準備済みやねん!」
「おぉ! ナイスだよハツキ!」
「どうせサタナなら忘れると思うてましてん!」
「ちょっとぉ⁉」
サタナがハツキによるストレートパンチを受け瀕死状態になっている時、店の扉が開き店主が顔を出した。
「ハツキちゃん!」
「ガーラさん! どないしたん?」
「お友達来たんだろ! もう上がっていいぜ!」
「おおきに! ほなら次は年明けに!」
「あぁ! っと、忘れてた! こいつを持っていくといい」
ガーラは店の裏にハツキを呼ぶ。しばらくしてハツキは鉢に入った自分の背丈の半分より少し小さいもみの木を抱えて戻ってきた。
「ガーラさんが持ってってくれやって!」
「私が用意してないのバレたかな……」
「知らんけどありがたく受け取っておけばええんちゃう?」
「そうだね! それじゃあまだ準備してないのは……」
「一応聞きますけど、サタナ先輩は交換用のプレゼントは用意してますよね……?」
「それは大丈夫!」
「寧ろなんで……?」
そうして用意する物と友人が揃った一行は楽しそうにサタナの家に向かうのであった。
「着いたぁあああ!」
「どっかの誰かさんがちゃんとしてればこうはならなかったんじゃがな?」
「そのおかげでイルナとハツキを連れて来れたからラッキーだったでしょ⁉︎」
「はいはい、そうですね。じゃあ準備しちゃいましょう」
「ナルディが構ってくれない⁉︎」
「今日ばっかりはナルディちゃんが正しいと思う……」
そう皆揃って不満を溢しながらも楽しそうにイルナ、ナルディ、ハツキは料理をサリ、メギル、カルロッテは部屋の飾り付けをそれぞれ準備する。
「あはは! こんなぬくぬくしながら準備が進んでいくなんて良いクリスマスだね!」
『お前(あなた)は手伝えぇええええ!!!!』
「あっはは!!! それじゃあ皆メリークリスマス!」
* * *
やぁ、おかえり。彼女らの様子はどうだった? そうかい、それは良かった。え、次この館に来れるのはいつかって? そうだね……12月31日だね。その時にまた会えることを楽しみにしてるよ。それじゃあ、メリークリスマス。
なんとなくの思いつきで今朝から書いた物なので
文章構成、誤字脱字などが見受けられる可能性があります。
どうかご容赦ください。
こんな小説ですが楽しんでいただけることを祈っております。
それでは皆様、メリークリスマス!