魔王転生
~6000年前 魔王城〜
「勇者よ」
目の前に倒れている男に、俺は語りかけた。
「貴様は負けた、大人しく転生するがよい」
男はなにを言っているのか分からないといった顔で俺の顔をじっと見てから、言葉を発した。
「・・・なぜ殺さない、なぜ俺が転生するのを見過ごす・・?」
・・・確かにこいつを殺せば人間どもの気力をいくらか削げるのかもしれない。だが俺に幾度となく挑み、死闘を演じたこいつを殺すのはいささか気が乗らない。
「・・・ただの気の迷いだ。さっさと転生するがよい。」
男は警戒するような素振りを見せたが俺に殺す気がないと理解すると警戒を解いた。そして転生のための魔法陣を構築しながら俺に尋ねた。
「俺が転生した後、人間をどうするつもりだ。彼らにはもはや対抗する力など残っていない。」
ふむ。それについては全く考えてなかったな。だがこいつのいない戦いなどただの蹂躙だ。面白くもなければ仲間を守るために必要な戦いでもない。
「そうだな・・・魔族と人間との支配領域を定めてさっさと停戦するか。その後は俺も転生する。」
男は驚いたような顔を見せた後、ほんの少しだけ笑った。
「俺たちは戦いあった。憎しみあった。だけどもしかしたら、他の道もあったのかもしれないな。」
そう言葉を残し、彼は転生した。
人間との停戦協定は問題なく結ばれた。4000年以上続いた魔族と人間の戦いは今ようやく止まった。平和な世の中に力の象徴たる魔王はいらない。
「私はもう行く。ついてきたいやつのみついてこい。」
そう配下に告げ、俺は転生した
初めて書く小説なので拙い文章ですが楽しんでいただけたら幸いです。もしなのかアドバイスがありましたら遠慮なくコメントしてくださると助かります。