第19話 モコ以外の家族か…
そこは都内のとっても高くて大きな億ションの最上階である。
なんか高そうなガウンを来てワイングラスを片手に夜の夜景を見てる六十代くらいのオッサンがいた。
身長は百六十程と低め、お腹は結構出ており頭皮も少し薄い。しかしとても傲慢そうな性格が顔に出ていて第一印象であまり好きにはなれそうにないタイプの人間である。
「今晩は、失礼します」
「!? だっだれだ、どうやってここに…」
言葉の途中で話せなくなった六十代くらいのオッサン。身体も動けなくなった。
どちらも僕の魔法である。
このオッサンはドラマとかでよくいるとても悪い大人だ。要はコイツとコイツの部下がクズ代表みたいな半グレ連中のグループを幾つも用意して当然その間には極道とかヤクザな組織が幾つもあり、それを使って連中に指示を出しているのだ。
クズ代表みたいなのが捕まらない理由、それはこのオッサンとその部下がこの国の色んな所に顔がきくとても偉い人達だからである。
そうっとっても偉くてとっても悪い人達だからである。
こんな連中がふんぞり返ってるからこの国は駄目なんだよと言いたい気分の僕だ。しかしそんな話をここにしにきたのではないのだよ。
「こちらから話しますのでそのまま黙っていて下さいね。まずは貴方達の裏の顔についてですが…」
「!?」
そこから少し話をしていく、するとどんどん表情を変えていくオッサン。
何か言いたい事があるのだろうが、クズ代表みたいに口を開けば不快な言葉を並べるだろうから最初からこちらの話だけをする事に決めている。
こちらが話したのはコイツとそのお仲間達の素性、これまで罪として問われなかった犯罪歴やら不倫関係にある女性のお話やらととにかくこのオッサンとそのお仲間達が他の人間に絶対に知られたくないであろう情報を魔法を使って集めたのでそれらについて話していった。
要はもう貴方達はお終いですと言う話をしにきたのである。
「……しかし、残念な事にこれらの話が社会で表に出る事はないんでしょうね」
僕の言葉にとても偉い人は少し勝ち誇った様な顔をした。
「けど大丈夫、そう言う相手でも社会的にでも物理的にでもどうとでも出来るのが魔法使いですからね」
「!?」
とても偉い人が持っているワイングラスには赤ワインが少し入っていた。そのワイングラスに人差し指を向けて指をパチンとする。
するとワイングラスの中身が勝手にドンドン増えていくではあ~りませんか~。
「!???!?!!?!!?」
「安心して下さい、種も仕掛けもありません。何しろ魔法ですからね」
とても偉い人のワイングラスを持つ手が動く、当然本人の意思とかではない。
「ささっ人生最後のお酒です、楽しんで下さいね」
「…………ッ!」
「あっ既に貴方のお仲間さんにも会ってきてるのでご安心を……終わるのは貴方だけではありませんからね」
「ッ!? ッ! !?!?」
何やら必死の形相で抵抗しようとしてるけど無駄でありますよ、とっても偉い人。
「今まで散々理不尽に奪って、搾取してきたでしょう? そんな貴方の最後としては相応しいと思いますよ?」
そう言って僕は転移した、もちろん愛しの我が家へと帰ったのである。
ちなみに別に死んだりはしないよ?
飲んだら全裸で天下の往来で裸踊りをしながら自分達がしてきた悪事を大声で叫び続ける様になるだけである。
…………一生ね。
◇◇◇◇◇◇
そして三日後。平和となった筈の我が家に僕とモコ以外の存在が。
「モコ~モコ~!」
「ニャア~ン」
「…………」
そうっアヤメさんがまだウチにいるのだ、ウチに住み着いてモコを今まさにモフモフしているのだ!
魔法の事は絶対に秘密にすると、魔法の契約書まで書かせたので後は自由ですと解放したら……何でか大学を中退して徒歩で我が家まで来てしまった。
「魔法とか異世界とか、そんな世界の実在を知って今更社会で勤め人なんて出来る訳ないじゃない! 私をこんな風にした責任とってここで雇って頂戴な!」
と我が家に転がり込んできたのが一昨日の事だ。
そのアグレッシブさとか行動力は称賛に値すると思い、そしてここで追い出すと本気で泣きそうな顔をされたこともあり今は我が家で働いてもらっている。
主な仕事は家の掃除やら庭の草むしり、料理は無理との事なので後は洗濯とかをしてもらっていた。
そして一番の変化として、何故かアヤメさんはメイド服を着用する様になった。あのメイド喫茶とかに出て来る方のメイド服である。
何でかと聞くと。
「私ってこう言うのは形から入るタイプなのよ、家の洗濯や掃除をする人間ってファンタジーな世界だとやっぱりメイドさんでしょう?」
とのことである。
「………それに、アキちゃんこう言うの好きそうだしね~~」
と言って胸の谷間を強調してきた、何故かアヤメさんのメイド服は胸元の布がカットされていてスカートも太ももが見える程に短いと言うまさにエロメイドさん仕様のヤツだった。
確かにそう言うのが嫌いではないけど……その通りとは絶対に口にしたくない僕である。
「モコ~モコモコモコ~~!」
「ニャア~ン」
「………ふっ」
しかしまあ、我が家に三人目の家族が出来た気がして、悪くない気分の僕であった。
ここで完結です、また別の作品も投稿したいと思っています。よろしくお願いします。