第16話 アヤメさんの決戦
そして一週間後、遂にアヤメさんの決戦の日が訪れる。今日のお昼ご飯に昨日のカレーの残りを食べてる時になって決戦の日時を伝えたら盛大にカレーを吹いたアヤメさんである。
二日目のカレーを台無しにするとは、カレー大好きアヤメさんらしからぬ暴挙である。まあ今の今まで決戦の事を話さないでいた僕の落ち度でもあるので何も言わないよ。
その後はクズ代表の事やお仲間をその日の夜にまとめてお掃除する旨を伝える、当然僕はピンチになるまで手を貸さないっと言うか貸す必要は恐らくないだろうことを話してビビりまくるアヤメさんを勇気づけたりした。
そしてカレーを食べ終えた僕達はお腹が丁度いい具合になるのをマンガ本を読んだりスマホゲーをしながら一日のんびりして……行動を開示した!
場所はどっかの廃ビル、クズ代表の思考から場所の特定はしたけど具体的な地名は不明だ。
そこに横並びでズラッと立っている野郎連中、その全員が目の焦点があっていない。どうやらクズ代表はちゃんと仕事をしたらしく彼の頭の中にあるクズ友はみんなここに集まっていた。
しかし残念ながらこのクズ代表の上にいるであろう面々の姿はない。流石にスマホ一つで気軽に連絡を取れる相手ではなかった様だ。
…………まあ、ソイツらに関してはおいおい事を済ませるとしよう。
魔法で僕と一緒に廃ビルに転移したアヤメさんから一言。
「もうこの状態のクソ先輩達をぶちのめして終わりしてしまおうかしら」
「そこは精々苦しめて欲しいので、魔法を解除してからでお願いします」
クズ代表はアヤメさんが言うとおりクソ代表でもある。本当に禄でもない生き方をしてきた社会の粗大ゴミだ。
よってここで行われるのは決戦とは名ばかりの一方的なワンサイドゲーム、彼ら半グレ達に勝ち目はない。
廃ビルの出入口もこの空間も魔法によって生み出された不可視の壁によって既に封鎖されている。
そして僕自身も魔法で姿を見えなくしてるのでクズ代表とお仲間に見つかる事もないだろう。
後はアヤメさんがこれまでの被害者達の分と本人の分の怒りを爆発させるだけである。
「……本当に私で勝てるの?」
「余裕ですね、必要なら僕も魔法でサポートしますので万が一にも負けません。ボコボコにした後は記憶をイジりますからアヤメさんやこれまでの被害者に二次被害が及ぶ事もありません」
「………ふっよし、やってやろうじゃない!」
アヤメさんが棍棒を地面の叩きつけて大きな音を廃ビル内に響き渡らせる。
それと同時にクズ代表達の魔法を解除した、彼らの目の焦点が合う。
「こっここ……は?」
「こんにちはクソ先輩。 それとその仲間のクソ友達さん達」
突然自分達の集合場所にいた事もそうだが棍棒を軽々と肩に担ぐアヤメさんを見てクズ代表のお仲間は少し後ずさりした。
しかし直ぐにクズ代表が声を上げる。
「ビビるなっあんなの見せかけのオモチャに決まってんだろ! 美月ちゃ~ん、少し見ない間に随分と美人になったねぇ? それだけ可愛ければこれから働く所で沢山稼げると思うな俺~」
「キモイ、ウザい、何よりそんな来るはずもない未来を妄想してるクソクソ先輩のクソ妄想に吐き気がします~」
「……………アッ?」
「アッ? じゃないわよ、舐めたこと言ってないでさっさとかかって来なさいよ……このゴミ共が」
「アッアアアアヤメーーー!」
アヤメさんの言葉にキレたクズ代表が回りの子分達に指示をとばす。
「お前ら! 向こうは一人なんだ、囲んで袋にしろぉおっ!」
大人数で一人を嬲る事にとても慣れていそうな面々は余裕の足取りでアヤメの元に歩き出した。
「そ、そうだよな。オモチャに決まってるんぜ」
「少し頭はおかしいみたいだが、顔と身体はかなり良さそうだな~」
「キリヒコ! 先ずは俺達がっで良いんだよな?」
会話も酷いもんである。
そんな連中にアヤメさんは無言で棍棒を振るった。
「…………え?」
そう言いたくなる気持ちは分かる、だって人間が空を十メートル以上ぶっ飛ばされる姿なんて今まで生きてきて見たことなさそうだしね……。