第8話 オオカミちゃんがいない
こっそり1話投下。
村人くん視点。
ーーあれから1年が経過した。
あの後、オオカミちゃんとお別れをして春が来た。雪が解け始めて日差しが暖かくなる中、僕の心はまだ残っている雪の様に冷たい。
僕は春の季節に村長のおじさんと約束していた農作を手伝う事になっていた。
まず行ったのはスコップを地中深くに突き刺し、土を何度も掘り返して冷たい空気に晒す事だった。
この作業は土の中に眠っている害虫を死滅させる事が目的らしい。何度も掘り返していると土もべっちょりからサラサラとした感じに変わってくる。
いい感じに土が仕上がったら、今度はそこに種を蒔く。土に少し穴を開けてそこに少量の種を入れる。入れたのを確認したら土を穴に被せて次っという感じだ。
最初は慣れない作業と力仕事に悪戦苦闘しながら必死になって働き、覚えていく。
少しでも考える暇があると、オオカミちゃんと遊んだ日々を思い出して辛いのだ。
彼女は後2年、帰らない。そう言っていた。
筋肉痛が酷い時は、お手伝いを中止にしてその日はただボーッと部屋の天井のシミを数えているだけだった。
朝から昼は農作業をし、夜は楽しかったあの日々を思い返すのが日常になっていた。こうして会えなくなってから気付いたのだ。自分の日常にオオカミちゃんが入っていたのかを…久しぶりに寂しいと感じてしまう。
「早く……会いたいなー……」
そんな状態のまま、春から夏になった。種はあれから成長して、土の中から葉っぱが飛び出している。立派に成長を遂げた野菜達はどんどんと収穫していくのだ。
農作業をやるにつれ、腕や足などに筋肉が付いてきたのが分かる。鍬を振り下ろす事が出来るまでには僕も野菜と同じく成長していた。
収穫を終えたら今度はこの土の中にまた種を植える。冬に向けての備蓄を作る為だ。
疲れている身体に鞭を打って動かせる。村の大人達は他の子供達と同様に遊んで来いと言うが、生憎と僕に友達と呼べる親しい人はオオカミちゃん以外いない。
こうして身体を動かす方がいいと断り、大人と混じって汗を垂らす。
ーー夏が過ぎて秋。
畑のお世話をしている影響もあって以前よりもガッシリと身体が出来てきた。成長期という事もあり、走る速さや体力は去年の僕と比べるとあのオオカミちゃんといい勝負が出来そうだ。
これで再会した時の楽しみが出来た。どちらが上か勝負する事が楽しみで仕方ない。
色褪せた視界が少しだけ晴れる気がした。
それともう一つ、僕にとって生活の変化とも言える事がある。
「村人く〜ん。もうお手伝いが終わりならこっちで一緒に遊ばない?」
「"美人ちゃん"……僕はいいよ」
「女の子ばかりで遠慮してるんでしょ〜、みんなもいいよねー?」
土で汚れている汚い僕の手を強引に引っ張って2人程いる女の子のグループの中へ連れて行かれる。
この美人ちゃんに最近はよく帰りに話し掛けられる事が多い。
彼女はオオカミちゃんと同じく気配り上手の女の子であり、この村の中じゃ、かなり可愛い方だろう。
僕はオオカミちゃんとよく遊んでいたので可愛いは見慣れている。だから別に遊ぼうって言われても他の男の子達とは違い、はっきりと断れる。
……まあ、断っても結構グイグイ来るから流されちゃうのがいつものパターンだ。
以前は遠巻きに此方を伺っていた彼女達だが、あるきっかけを境に積極的に関わってくるようになった。
村人くん
オオカミちゃんがいなくてテンションガタ落ち。
農作業を少しだけ楽しんでいる。
美人ちゃん
今回新たに出て来た謎の女の子。
村人くんと仲良くしてそうだが……?
◆
最後まで読んでくださりありがとうございます。
少しでも面白いと思っていただけたら、ブックマークの登録と広告の下にある【☆☆☆☆☆】で評価してもらえると嬉しいです。
モチベーションにもなりますので、感想等もよかったら聞かせて下さい!誤字脱字も教えて頂けたら幸いです!