第5話 食材を探そうwith オオカミちゃん
めっちゃ長くなってしまい、びっくりした。
3話ぐらいに分けたほうがいいのかな…?
村人くん視点とオオカミちゃん視点 (純度95%)
月日は流れ、今は秋。
ーー今ってなんの季節だと思う?
ーー食欲の秋っ!
ーー正解。
なんていうバカみたいなコントを繰り広げた僕達は森の中で美味しく食べられる物がないかと手当たり次第に探していた。
「……そういえば、この前のお肉、ありがとうね。おかあさんも喜んでたよ」
「半分だけだけどね。アレは君とカブト関のお陰で僕は何もしていないし、もっと貰っても良かったのに…」
「それじゃあ、村人くんの分が無いじゃない。……ねぇ、カブト関ってまだ飼ってるの?」
「何処かに飛んで行っちゃってね…ごめん、オオカミちゃんが一生懸命に探してくれたのにさ」
白熱した試合を見せたカブトムシ相撲大会を経て僕は今日も人気者…とはいかなかったのだ。
僕のカブト関が優勝すると周りは盛り上がっていたが、納得のいかない村の子供によって逃がされてしまった。
鷲掴みにカブト関を掴んだと思ったらそのまま空へ投げてしまった。カブト関も驚いた事だろう、忙しなく羽根をバタつかせて村の囲いから飛び去ってしまった。
その後、その子の両親から謝られたが、一緒に過ごしたカブト関は帰ってこない。
悔しい気持ちはある。僕達が共にした時間は何だったのか、オオカミちゃんにどう説明しようかと頭を悩ませていた。それを彼女には見抜かれていたらしい。
「…いいよ。カブト関だって生き物だもの、自然でのびのびと生活した方が良いに決まってる」
「オオカミちゃん…。ありがとう、今日はオオカミちゃんの為に頑張って美味しい物をいっぱい見つけるから!」
「ふふっ、楽しみにしてる」
気合を入れて僕は草むらを掻き分けて探す。出来るだけ大きくて食べ応えのある物はないかと探していると見つけたのはキノコだった。
(なんだろう、いつも食べるキノコと違って色鮮やかで綺麗だ。カサも大きいし、食べ応えもありそう…きっと喜んでくれるに違いない)
引っこ抜こうと手を伸ばした矢先、オオカミちゃんの焦る声が僕の後ろから飛んで来た。
「村人くん、待って!」
「っ!どうしたのさ、オオカミちゃん!」
「それはトビテングダケ!食べたら、一日は目が覚めないって言われている危ないキノコなの!」
「ぇ…!?こんなに綺麗なのにそんな危ないキノコだったなんて不思議だね…オオカミちゃんにまた助けて貰っちゃった、ありがとうね」
「わたしもたまたま知ってたから良かったよ」
「まだキノコは色々な形があるけど、僕にはそれを見分けるだけの知識はない。だからキノコは諦めて他の山菜を探す事にするよ」
「それが良いと思う…」
キノコは避けて食べられる物を探していく。僕らは黙々と辺りを捜索していくが、なかなか集まらなかった。
「……ねぇ、村人くん。山菜を探しながらで良いからさ。わたしのお家の側にある湖に行ってみない?」
「えっ、いいの?オオカミちゃんのお母さんに怒られるって言ってなかったっけ?」
自分でも分かる山菜や木の実を取って小さな布袋へ入れていく。まだまだ余裕に入りそうな袋を見て息を吐いていた所にオオカミちゃんからのお誘いだ。断るわけが無い。
しかし、ふと疑問に思った。彼女の母親は気難しい人なのか、あまり家の近くで遊ばれたくはないらしいとオオカミちゃんから聞いている。
そんな事情があるのに僕が行ってみて良いのかと心配になってしまった。
「ーー大丈夫、おかあさんも漸く村人くんを認めるようになってくれたから。たまにおかあさんと湖で釣りをするんだけど村人くんもやってみないかなと思ってね」
「そうなら嬉しいな!まだオオカミちゃんのおかあさんに挨拶出来てないけど、きっとオオカミちゃんに似てて可愛らしい人なんだろうな〜。いずれ会ってみたいよ」
「警戒心が強い人だから、多分まだ村人くんの前には現れないと思うよ。後、私の方が絶対に可愛いもん。だから、村人くんはわたし以外の女の子に可愛いとか言っちゃダメ!」
プクーッと頬をボールみたいに膨らますオオカミちゃん。彼女の変化に戸惑いながらも僕はハイハイと適当に言葉を返して誤魔化す事にした。
「そういえば、オオカミちゃんさ。釣りって言ってたけど具体的にはどうするんだい?」
「…村人くんはそういう所は鈍いんだよね。はぁ、釣りって言うのはね。木の棒に糸と糸の先に針を仕込んだ物でお魚を取る遊びみたいなもの、なのかな?」
「僕が鈍い…?そんな筈は無いと思うんだけど…それにしても魚か、村じゃなかなか食べられないレアな食材だよ!どうやって取るの?」
「針の先にエサを付けたら湖に投げ込んでひたすら待つの。お魚が掛かったら手応えで分かるから後はお魚との勝負。釣れた時は凄い感動すると思うよ」
「面白そうで良いね!確かオオカミちゃんのお家ってここら辺だったよね?」
歩きながら落ちていた丸い木の実を袋に入れる。遠くに反射する水面を見つめて彼女に尋ねる。
「うん、あの光っているところ。わたし、先に行って準備して来るね!」
オオカミちゃんはそう言って颯爽と去っていく。後ろから彼女の背中を見ているけど、やっぱり僕よりも走るのが速い。
僕と遊ぶ時は加減してくれていると思うと何だか悔しい。種族の差とはいえ、相手は女の子。足の速さだけは自信があったので、誰にも負けないつもりだった。
(これからは身体をもっと鍛えよう。オオカミちゃんに勝つ為にもね)
亜人だからなんだ。負けているならその分を鍛えれば良いだけなんだ。僕はオオカミちゃんと全力で遊んでみたい。このままじゃ、彼女に置いてかれそうで不安で仕方ない。
帰ったら村の大人にどうやって鍛えれば良いか聞いてみようと心に誓い、歩いて湖の畔まで到着した。
両手には細長い木の棒を持ったオオカミちゃんが佇んでいる。その足元には大きな水を張ったバケツもあった。
僕の姿を確認するとニヤリと彼女は笑った。
「これで釣るのっ!村人くんは初めてだからわたしのやり方見ててね!」
「これが…釣り?オオカミちゃんの言ってた通り、糸の先に針があるね」
渡された木の棒をよく見ると木の先端に固い糸が括り付けてあり、その糸の先にはおかしな方向に曲がっている針もある。
「この針にこの餌をつけるでしょ〜、そしたらこう!」
オオカミちゃんは意気揚々とその針の先に丸い団子みたいなのを取り付けると木の棒を大きく振って針と一緒に付いている団子を湖に落とした。
「後は待つだけ。簡単でしょ?」
「簡単だけど…本当にこれで大丈夫なの?この団子みたいな奴が餌って水に入れたら溶けない?」
「溶けちゃうけどそれでも釣れるから平気。おかあさんと一緒に作ったの。粉とかいっぱいコネコネしたんだよ」
「ふーん、あっ…オオカミちゃん!糸がピンって伸びてる!」
「此処からが釣りの面白いところ…見ててね!」
そう言ったオオカミちゃんの横顔はいつにも増して真剣だった。糸と連動して彼女の持つ細長い木の棒もしなり始める。
オオカミちゃんはまだ動かない。じっと水面を見つめて微動だにしない。やがて糸がたらりと垂れ下がると同時にオオカミちゃんが木の棒を後ろに思いっきり引いた。
「うおおおおおっ!!凄いっ!」
水の中から勢いよく顔を見せたのは、オオカミちゃんの言う通り、お魚だった。口元には針が突き刺さっており、先端が返しになっているから外れないようだ。
空を舞い、弧を描いてオオカミちゃんの手元に魚は来る。慣れたようにキャッチした彼女に向かって僕は興奮気味に話し掛けた。
「これが釣り…!本当に魚が手に入るなんて凄いね。僕もやってみたくなった!」
「まぁ、こんなところ。お魚が掛かっても焦らないのがコツ。糸が垂れた時に引いて、糸が張った時は何もしないで待つ。これさえ出来れば、村人くんも釣れると思うよ」
オオカミちゃんは水の入ったバケツに針を口から外した魚を入れる。スイスイと水の中で泳ぐ魚を見て早速、やってみる事にした。
「これを付けて…投げ入れるっと。後は待つだけで何もしない。…うん、結構簡単だね」
「掛かってからが勝負だから、気を抜かないで」
待つ事、数分。僕の手に強い振動が感じられた。
「来たっ!オオカミちゃん、掛かったけど、どうするんだっけ?!」
「焦らないで、ゆっくり木の棒を前に倒して…糸が垂れたら……いまっ!引いて!」
「ぐぬぬぬぬ!結構、力が強い!手が痺れて……」
木の棒から魚が激しく暴れ回るのが、手に伝わって来る。何とか押し引きを繰り返しているが、なかなか釣れそうにない。
僕の握力が先になくなるか、魚が大人しくなるかの我慢比べだが、手が痺れて力が入りづらくなってきた。
「村人くん、わたしも手伝う。タイミングを合わせて一緒に引こう?」
「…オオカミちゃん。頼む、僕1人じゃ無理だ。手伝って欲しい!」
「うんっ、わたしが合図するから村人くんは後ろに思いっきり引いて!」
こくんと頷いてオオカミちゃんからの合図を待つ。まだ暴れ回る魚に怖気付きそうになるが、僕の後ろには彼女がいる。
僕の後ろから手を回して木の棒を支えてくれているので、再度握り直して力を入れる事が出来た。
「この感じ…大きいかも!いくよー、せーの!」
「せーの!!」
身体を後ろに倒して、体重で木の棒を引く。オオカミちゃんも一緒に引いてくれたので、抵抗していた魚は先程と同様に宙を舞って釣り上げられた。
魚が釣り上げられた事で僕らの身体は後ろへ倒れ込む。当然だ、だって後ろに体重を掛けたのだから。
背後にオオカミちゃんがいる事を思い出した僕は必死に身を捩って彼女の後頭部に手を差し込んだ。
「うぉっ!?」
「きゃっ…!」
共に崩れ落ちる僕らの身体はふかふかとした地面に受け止められる。
いや正確に言うとするならば、僕だけは地面と衝突しなかった。彼女の柔らかい身体を下敷きにしてしまったからだ。
「ごめん…怪我とかない…?」
「……っ、だ、だいじょぅぶ」
頭は打たないように手を直前で差し込んだから大丈夫の筈…な訳なんだけど、オオカミちゃんの顔は真っ赤に染め上がっていた。きっと怒っていると思った僕は急いで彼女の上から退いた。
「僕が鈍いから巻き添えにしちゃったんだ。本当にごめんね、オオカミちゃん…」
「えー、あー、大丈夫っ!わたし!尻尾あるし、ふかふかだから!」
申し訳ないと思っているけど、アタフタとするオオカミちゃんに僕は少し笑ってしまった。いつもクールな彼女が慌てたところなんて久しぶりに見たからだ。
「…もう、笑わないでよ。そんな事より見て、こんなに大きなお魚が取れたみたい!」
「あははは、うわぁ、本当だね。僕達がこれを釣ったんだ…」
まじまじと僕は彼女が持って来た魚を見る。その大きさはオオカミちゃんの肩幅と同じぐらいの巨大な魚だった。
これだけ大きいと2人で食べても大丈夫そうだ。
「バケツに入れるにしてもこれだけ大きいと入らないよね。どうしようか…?」
「おかあさんがお家にいるから捌いてもらって来る。村人くんはまたお魚釣ってて!」
「分かった。今度は1人で釣ってみせるよ。きっとオオカミちゃんのおかあさんがその魚を見たらビックリすると思うよ」
「ふふっ、そうだねー!」
オオカミちゃんは元気いっぱいに釣り上げた大きな魚を持って家に突撃しに行った。僕もさっきのでコツは掴んだ。
(今度は1人で釣ってオオカミちゃんにカッコいい所を見せるんだ!)
気合いを入れて棒を握る。そして大きく振りかぶって湖の中に餌がついた針を投げ入れた。
◆
村人くんを湖に置いて家の中に入る。玄関の扉に背中を預けてドキドキと鼓動する胸を手で押さえ、浅くなっている息を整えた。
「ハァハァ…はぁ…ふぅ…、本当に鈍いんだから」
玄関の扉越しに外を見れば、村人くんがヒットしたであろう竿を持って悪戦苦闘している。その無邪気な笑みに落ち着かせた筈の心臓がまた激しく動き出した。
きっとわたしが顔を真っ赤にした理由なんて怒ったぐらいにしか思っていないに違いない。
わたしが頭を打たないように手を回してくれた事やその真剣な眼差しにときめいていたなんて気付くはずもない。
「おやおや〜、見てたぞ。オオカミ、お前。あの坊主に見惚れてただろう?えぇ、憎いねぇ」
そう、にぶにぶの村人くん以外には気付かれる。現にわたしの頬をツンツンしてくるおかあさんにはバレていた。
「からかわないで、おかあさん。早く、これ捌いて」
「はいはい、いや…あたいが教えるからオオカミが捌いてみろ」
「やり方は何となく分かるけど…でも、まだ一緒に遊びたいし…」
「チッチッチ。甘いね、オオカミ。あたいが捌いたところで特に何もない。だがな、オオカミが捌いたとなれば話は別だ」
「わたしが捌いたら…」
ゴクリッと喉が鳴る。
おかあさんはわたしの様子を見て更に話を続けた。
「いいか、オオカミ。雄ってのは家庭的な雌にとにかく弱い。胃袋を掴めば、後はこっちのもんだ。想像してみろ?お前が作った物をあの坊主が食べる所を…」
「村人くんが…わたしの料理を食べる…」
わたしが作ったご飯を食べて、あの素敵な笑顔をわたしに振り撒いてくれる。美味しい、美味しいと言ってくれる光景が目に浮かぶ。
「そうだ。そしてそれは坊主の身体の一部となっていくんだ。胃袋さえ掴めば、奴はオオカミの料理なしでは生きられなくなる」
(わたしが村人くんを…わたしの料理なしじゃ生きられないなんて…)
想像しただけで、顔が熱くなる。おかあさんはニヤリと笑って言った。
「きっと、嫁に欲しいと思うだろうなぁ?可愛くて料理が上手い嫁と優しい旦那、そしてその子供なんていた日には、幸せってもんさ」
(お、およよよめ、さん!?)
恥ずかしさの余り、頭から湯気が立ち上る。頭がピンク色で埋め尽くされてしまいそうになる。
想像しただけで動かなくなった娘を見て母親は心の中で愚痴る。
(ちょっと揶揄い過ぎたな、こりゃ)
「ーーと、いうことだ。オオカミ、どうする?」
……おかあさんはこの状況を楽しんでいるだけだろう。そんな手には乗らない。外では村人くんが待っているのだ。そんな事で時間を潰してしまうなんて勿体無いじゃないか。
「わたしに捌き方を教えて下さい。おかあさん!」
「はいよ」
頭で分かっていても心は違うのだ。プライドなんて、湖に落としてしまった。それよりも乙女心に火を引けたのた責任は取ってもらわなきゃダメ。
エプロンを身に纏い、髪の毛が入らないように耳の穴が空いた頭巾を被る。
準備満タンのわたしにおかあさんは鼻で笑うとまずは鱗の取り方だと丁寧に教えてくれた。
◆
「遅いなぁ〜、オオカミちゃん。やっぱりお母さんと揉めたりしているのかな?」
僕がオオカミちゃんと遊び始めてから、彼女の母親は見た事がない。
警戒心が強い人だとは言っていたが、流石に此処までオオカミちゃんと遊んでいるのだ。何処かで必ず目を光らせているのだろう。何だか、そんな予感がしていた。
僕が待っている間に釣った魚は2匹だけ。流石にあの大きさまでとはいかないが、小腹が減った時に丁度いいぐらいのサイズが釣れた。
今も湖に餌を付けて糸を垂らしているが、当たりはない。魚の方も警戒してしまったのだろうか?待てど待てども何もない。
ボッーと湖を眺めていると魚が時折、跳ねる光景が目に入った。その跳ねた数を数えて今は時間を潰している。
「魚が3匹、魚が4匹、魚が…」
「おーい、村人くん!お待たせ〜」
僕が6匹目を数えているとオオカミちゃんから声が掛かる。顔を声がした方へ向けるとそこにはエプロン姿の格好をしたオオカミちゃんが鍋を両手に持って此方に近寄って来ている。
「オオカミちゃん、その格好可愛いね!その頭巾も耳のところに穴が空いてて可愛いと思うよ」
「あはは〜、ありがとう。お腹が減ったからなんとお鍋にしてみました〜!朝に取った山菜も入ってるから美味しいと思う」
「おぉっ、それは美味しそうだね。でも、オオカミちゃんのお母さんも一緒に食べたりしないの?」
「おかあさんはいいの。さっき味見して貰ったし、後は2人で食べて来なさいって言ってたから大丈夫」
オオカミちゃんは一度、その鍋を僕に渡してその辺にある丸い石を円状に置いていき、葉っぱと木の枝をその中へ置く。そして何処からか持って来た網をその上に敷いた。
僕から鍋を受け取った彼女は網の上に鍋を乗せた後、マッチを擦って火を起こす。火は囲いの中にある葉っぱや枝に燃え移り、パチパチと静かに燃えている。
その間、僕は慣れたように動くオオカミちゃんを見て固まっていただけだった。
「…手際が良いね。よくこうしているの?」
「おかあさんと狩りに行く時は大体、いつもこうなの。火の扱いは要注意だから気をつけているんだ」
「へー、何だか尊敬しちゃうよ。オオカミちゃん、何でも出来るんだね〜!」
「わたしもまだまだ出来ない事は多いから、そんなに期待しないでね…、ぐつぐついって来たからフタ、開けるね」
蓋を開けた瞬間、白い煙が僕らの目の前で大きく広がった。山菜と魚の良い匂いが鼻を刺激し、口の中で涎が溢れてしょうがない。
真っ白い大きな魚の切り身と山菜がスープの中で混じり合っていてとても美味しそうに見える。
「はいこれ、お箸とお皿。村人くんが先に食べて良いよ」
「えっ、いいの!?」
「いいよ。食べたら感想、聞かせてね?」
オオカミちゃんからお箸とお皿を受け取った僕は自己主張が強いその大きな白い切り身に向かって箸を伸ばす。
柔らかくてほろほろと崩れそうな切り身を皿に乗せて山菜で器用に包んで口へと運んだ。
溢れ出す魚の美味しさと山菜の香ばしさ、それを掻き消さないように薄くも濃くもない丁度いい塩梅のスープは、控えめに言って最高だった。
「美味しい…これ凄く美味しいよ!オオカミちゃん!」
僕にオオカミちゃんみたいな耳と尻尾があったらきっと激しく動いているだろう。今までで食べて来た何よりも勝る美味しさが此処にあった。
「えへへ…喜んでくれたら嬉しい。これ、わたしが作ったの。村人くんに喜んで欲しくて…」
「料理が上手なんて、いいお嫁さんになるかもね。それにしても、こんなに美味しいのは生まれて初めてだ。早く食べないとオオカミちゃんの分も食べちゃうからな!」
「お嫁さん…えへへ。わたしも食べるから残しておいてね!」
パクパクむしゃむしゃと美味しさのあまり、がっついてしまった。食べ終えた頃にはお腹がいっぱいになり、釣った魚の事なんて覚えていられなかった。
満腹になった心地よさと幸せな気持ちで瞼が重くなる。隣にいた彼女は火を止めて後片付けをしているのに僕は睡魔に襲われて夢の中へ旅立った。
起きたら、日が暮れていて不味いとおもったが、オオカミちゃんはいつにも増してご機嫌な様子で安心した。
村人くん
初めての釣りで凄く楽しかった。オオカミちゃんの手料理も最高だったとご満悦。
帰りに釣った魚をオオカミちゃんにあげた。
オオカミちゃん
母親の口車に乗せられたが、後悔はしていない。
むしろ感謝とばかりにその夜、肩叩きをした。
オオカミちゃんの母親
ついつい、娘を揶揄ってみたかっただけなのだが、予想以上に娘が乗ってきたので、真面目に料理を教えた。
娘の肩叩きを受けて、今日飲む予定だったお酒は控えた。
◆
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