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さくらの一刻

作者: 森川めだか

君に捧ぐ


さくらの一刻


舞う


「もし僕を訪ねてくる人がいたらここに連絡してください」

管理人さんは手紙を受け取った。

「は、はい」


(てい)(てい)はかわしまに移り住んだ。

「ここは温暖で桜も咲くしいい所だよ」

川下にある小さな家だが二人は気に入っていた。

「あっち、行ってみましょうよ」

「ちょうどいい季節だ。桜も咲いてるね」

二人は詩吟しながら丘に登った。

「あれ、何かしら」

四本の桜に囲まれて黒い大砲が置かれている。

「おおづつ、って書いてあるね」

時は春秋戦国時代、和平と休戦が申し入れられ、わりかし平和な時代だった。

「武闘場がある」

見下ろせばレーンが引かれ竹刀を振るっている。

桜の花は劇のように舞う。「オーエス」というかけ声がこっちまで響いてくる。

「桜は不思議な花だ。去年も今年も来年も同じ様に咲いている。でも人と会えるとは限らないんだね」

「この時を一生、残せるものがあるとしたら素敵でしょうね」鄭は結婚指輪を付けたばかりの手をそっと丁の手に重ねた。

「桜から見れば、人の一生なんて一刻だ」丁はそっと鄭の体を抱き寄せた。

「覚えてるかい? 結婚の時、」

「あなた、言ったわね」

「君の目に映る僕は君色」丁は鄭の肩を持ち見つめた。

「今は桜が映っているよ」

二人の幸せな日々は長くは続かなかった。鄭が労咳になったのだ。

鄭は床の間に寝たきりで、咳を続けていた。

「熱が下がったらよく休むといいよ」丁は水まくらを取り替え、川に絞りに行った。春なんて、絞った手が桜色に染まった。

丁は少し血を吐いた。咳の中に混じっていたのだ。

「あなた、ごめんなさい」

「君が謝ることじゃない」

「お布団、汚しちゃったわね」

丁は水まくらを持ったままでじっと鄭を見つめていた。

「あなた、どういたしました?」

「古い口碑を思い出した」丁は横を向いた鄭の首に水まくらを当てた。

「火鼠は不老不死の効用があるらしい」

「あの蓬莱山にいるっていう?」

「君の知っているのか」

「蓬莱山そのものが口碑じゃないですか」

雷が鳴った。

「雪おこしだ」丁は窓を開けた。

渦を巻く氷と氷が擦れ合って雷が起こる。

丁は窓を閉め、鄭の頬をすり、「行ってくるよ」と言った。

鄭は肯いた。

「信を書くからね。行く先々で信を書くから、」

「あなたはいつも片道ね」

丁は武闘場の戸を叩いた。

「挺身隊というのはここですか」

行ってみると女だらけだった。

「あのおおづつを見て」

「あれは試作だ。桜台の砲のことか」

「男でも戦えますか」

女たちは顔を見合わせてから、笑った。

そうして、丁が挺身隊に入り、教育係はアイサといった。

銃剣を渡され、その構え方からみっちり教わった。

挺身隊は皆、菫色の衣紋を着て染め抜きで菫の花を象っていた。

丁だけは黒衣で、どうやら実戦に出られるのはアイサ、シャミス、ユーター、ニニ、モモのようだ。後はこの時代の教養として竹刀を振るうだけのようだ。

シャミスとユーターは姉妹で、モモは重火器を得意としている。あのおおづつを試作したのもモモだという。桜台の砲とは挺身隊の象徴で、軍勢を一瞬にして灰にするという。

挺身隊は桜台の砲を守り抜くことを旨としている。丁はモモにも蓬莱山へ連れ立ってほしかったのだがその目は始めから丁を信用していなかった。

「そろそろ銘を入れられる頃だな」

丁の銃剣に丁の銘が入れられた。

旅立つ前に丁は二人の住む家に鄭と寄り添って泊まった。

「悪い道は必ず広い道です」鄭は言った。

「人間の道を行くべきです。外道に走ってはいけません」

「やっぱり死ぬのは怖い」丁はできれば桜の下で鄭に謝りたかった。

「これで勝負させてください」

雪おこしが運命(さだめ)のように、また鳴った。

「何も食べないでも生きていられるの? 食糧はどうするの?」見捨てるつもりじゃないか。モモは丁を疑っていた。

「でもー」気の弱いニニが肩紐を締めた。

「私は入らないよ」

「モモの好きなようにしたらいいじゃん」シャミスは口に櫛を挟んでいる。

「あんたもやめときなよ」

「私はお姉さんについてくだけ。それに面白そうじゃん」

モモは諦めて窓から外を見た。丁がレーンの横に座っている。

その目線は桜台を見上げているようだ。

「火鼠ってどんな形してるのかな」

「モモー、ちょっと手伝って」

「あ、私がやる」

「アイサじゃなくて蓬莱山へは丁が団長か」

「間違えないようにしなくちゃね」

丁が立ち上がった。レーンに沿って歩いている。小柄な人だ。

「モモ、私たちが帰って来るまで、砲、仕上げといてね」

まだ晒姿のモモを順番こに叩いて三人は更衣室を出て行った。

アイサは「死ぬことないよ」と言っていた。

「死にに行くことない」の間違いじゃないのか。

モモの不安をよそにアイサ、シャミス、ユーター、ニニの四人の仲間と丁はかわしまの家の玄関戸に立ち止まって「オーエス!」と叫んだ。

窓から影を確認すると、鄭も軽く笑って、「オーエス」と呟いた。風が戸を叩いた。

アイサの代理になったモモは新しいレーンを引いていた。蹴っ飛ばすと石灰が降ったみたいになった。

「雪、か」

どこにも桜なんて咲いてない。冬の桜。誰の心にも勝敗が付けられないものがあるんだろう。

鄭は吐き気を催した。

一生、取っておけるものがあるなら、不老不死にならなくてもいい。

人間の手に余る桜の木を。


呱々


 鄭の体調は悪くなる一方だった。モモが生活の世話も助産もするようになったが、丁に連絡する術はもうなかった。

「生きたまま捕獲するんだ」丁たちの相手は戦国ではなく鼠族であった。古くから田畑を守る益獣と信じられてきたが人間を喰う。今は里山に住んでいる。

枝を切り払って、蓬莱とは決して行き着けない場所。玉の枝を目指して進んでいた。

「モモは今ごろ、砲を仕上げてくれてるんだろか」

「何だ、ニニ、もう帰りたくなったのか」

「やだー、絡まっちゃった」

「丁、私たちがいなかったら一人でも行くつもりだったのか」

「ああ」

「無理難題だよ。聞いちゃ悪いよ」

「今、鬼を呼んだ」

「どこに?」

「シャミスの横さ」

「ユーターしかいないよ」

「はい、私です」

「鬼は人の姿をしている。人間には見えない」丁は立ち止まって、振り返った。

「決して名乗ってはいけないよ」

挺身隊の四人は互いの顔を見比べていた。

「名乗ったらどうなる」

丁は黒衣を翻し先に進んだ。

鬼は形なき物に形を与える。鬼は雪の子だ。きっと世界を変えるとしたら鬼だろう。

鼠族はなかなか出てこなかった、人も出てこない。一行を困らせるのはカゲバエだった。

銃も剣もきかない。血を吸われ、そこから血が出続ける。

「もう鬼は消えた」丁は倒れ木に座って、糒を食べた。銃剣で草叢を突き刺したかと思ったら、それは鼠族であった。丁はそれを火であぶり食べ始めた。

挺身隊の四人は血の出る所をかきむしっていたが、カゲバエとは違うゾゾとするものを感じた。この人は何か違う。

鼠族の間では百家が取り交わされた。めいめいの学のある者ばかりが集まって今後を話し合っていた。

「蓬莱山の火鼠がいると思っているらしい」

「どうする? このままでは滅ぼされてしまうぞ」

「経過観察か」

「人里へは下りないようにしよう」

モモは桜台に立って、砲を覗き込んでいた。

「んー」砲身の中へモモの声が響く。

「角度、かな・・」

鄭の身は鄭が助かるか、赤子が助かるか、二つに一つだった。

桜は今は花の一生を終えたかのように寒天に伸びている。

鄭の腹は何も食べていないのにふくれ、食べても戻すばかりであった。

モモは砲を乾拭きし、かわしまの家へ様子を見に行った。

「モモさん、あなたはどうして行かなかったんですか」

「いえ・・」

「でも・・」

「火鼠を取ってきたら、それを食べるのですか」

「それも戻すでしょうね」

「私も鼠なんか・・」と言ってる間に、鄭は身を反り返した。

「頭が出て来た!」鄭は断腸の声を上げ続けていた。

モモは赤子を取り上げた。

「元気な男の子です」赤子を鄭に抱かせた。

「円ってどこにもない」赤子は母の手に抱かれると泣き止み、すやすやと寝入った。

(てい)です。この子の名前は帝です」モモは鄭の身を案じた。

「来年の桜まで何とか・・」

「ここが蓬莱か」丁とその一行は立ち尽くしていた。

「ボーゼン」

アイサは念仏を唱えていた。

金色の桜が咲いている。玉の枝といって似つかわしい。

「俺はこんな物に用はない」丁は声を上げた。

「火鼠をよこせ!」振り上げた銃剣で玉の枝の一本を折ってしまった。

百家が震えながら出て来た。その手には血のように赤い鼠を抱いていた。

「これが火鼠」もう死んでいる。

丁は指一本でつまみ上げた。

「ここに人はいるか」

「ここは自然界。後にも先にも人はいません」

「では、信を頼む。互いの繁栄を願って」

「窮鼠猫を嚙む、とな」百家の一人が、下を向いて呟いた。

河に流れるのは他生。

モモは珍しく手に入った甘夏を届けに鄭の所に寄った。

玄関戸を開けると、明かりがついていない。

床の間で臥せっている鄭の横で前かけをした帝が泣き喚いていた。

モモは腕から甘夏を落とした。駆け上がると鄭はもう死んでいた。

その乳房には蠅帳が被せられていた。

「鬼の所業だ」

モモは帝を抱き上げた。鄭の指から結婚指輪が、星から土間へ落ちた。

「教えてやるもんか」

丁にはこの子に指一本触れさせない。鄭の遺志が何であろうと。

「行ったのと同じ道を辿れば迷うこともあるまい」

「もうカゲバエやだよー」

「鬼、何の役にも立たなかったね」

「燃えてないね」

「これ、食べるんですか」

「喰うよ」

「走って行くよ」

「オーエス! オーエス!」

泣く力もでないんだ。お布団しか残されていなかった。

モモも影で見ていた。言えなかった。いつもありがとうね。

モモはまさか本当に火鼠を持って帰って来るとは思わなかった。

「本当に守るべきものは何か、考えることね」

全智者の元へ旅立ったんだね、鄭。

「それで、鄭は何か言ってなかったか。私のことを薄情だとか何か言ってなかったか」

「何も」

「最期は・・、いや、いい」

丁は口で火鼠の皮を剥いだ。挺身隊の女はまた背骨も凍るほどの何かを感じた。一線を越えた人がここにいる。死んだら目の色がなくなると言うが、丁の目にも何の色もなかった。

「不思議だなあ、家族といえば鍋が浮かぶ、不思議だなあ」

挺身隊を押し分けて何かが届けられた。

「今ごろ届きやがって」それは蓬莱から鄭に送った信だった。

「いつだって昨日から何も食べてない」丁は一人で鍋を囲んだ。

見ていられないので挺身隊は家の外に出た。川が流れている。

グツグツ煮立った湯に丁は火鼠をつみれにして入れた。火が通るまでに信を開いた。

鍋はたちまち茶色くなった。

「君と見た色尽くしの桜の方が綺麗だったよ。蓬莱はね、目に浮かぶものでいいんだ。あと一日待ってくれれば君の咳も収まるよ。永続の人間・・」

咳をした丁は人の姿をした鬼だった。


賽子


 あの日あの時なんだろう。

丁は昔原にいた。鄭と会うために。昔原はこぞに帰る。

千草が風に揺られている。当り前のように鄭はそばにいる。

かわしまから、ああ、そうだ、桜台の砲を見に行く時だ。

あれは22の時だったね。

「あなたには子供がいるのよ」

「男の子? 女の子?」

「て・・」

「え? 聞こえないよ」

「て・・」

咳さえ白い。

「君、労咳は大丈夫かい?」不思議なことに咳をしているのは丁の方なのだ。

「バッタモンつかまされたみたいだな」丁は黒衣の上から腕をかきむしった。

「あれは火鼠なんかじゃない、血鼠だ」丁は黒衣の下は見せない。

「君に食べさせなくてよかった、あれ?」

鄭はもう先に桜台に行っている。

「やあ、桜だ」

去年の桜が咲いている。

何でこんな色してるんだ。丁は目をえぐるようにしてこすった。黄緑色をしている。

昔は桃色をしていた。

「君に見せるつもりだった玉の枝も、あれ、何でだろう、金色をしていたような」今はもう記憶の中で金色が黄緑色に見える。

何て優しい目をしてるんだろう。昔原の鄭は砲をこすっている。

桜の木には丁が磔刑にされている。運命に歯向かったから。

「こんな物じゃなくて、君を守り抜くべきだった」

鄭は下を向き笑った。レーンを見ると今は誰も走ってない。

「あなた、どうして生まれてきたか知ってますか?」

鄭はまだ砲をこすっている。

「知ってる嘘」

丁は鄭の手を取った。

「あ・・」言葉にしようとしても出てこない。

「あ・・」

「年とったカラスみたい」鄭は笑った。

桜が散るように鄭の姿も薄れていく。

桜はまた咲くのに、もう君とは会えないの?

「て・・」

「あ・・」

「て・・」

「あ・・」

二人の手は離れた。

丁はレーンの向こうにいつの間にかできたホワイトゴールを見ていた。

モモに育てられた帝は挺身隊に入った。今はまだ幼いので足球ばかりしている。

挺身隊の中で黒衣を着ているのは丁だけで他の女たちと同じ染め抜きの菫の衣紋を着ている帝は女の子みたいだった。

丁は武闘をしないで門の敷居に座って腕をかいてばかりいる。

「団長、どうしたんですか。本当はカゲバエに刺されたんじゃないですか」

「いや、そんなことないよ」

ニニが行ってしまうと、丁はシャミスらと足球をしている帝の後ろ姿ばかりを見ていた。

「辞める?」アイサは聞き返した。

丁は肯いた。

「まあ、それもいいが、」

「すまん」

夕暮れにまだ帝は球を一人でホワイトゴールに蹴っている。

「帝くん、おじさんの名前知ってるかね」

「団長」モモに育てられた帝は父のことも知らず女しか信じられないようだ。

「君に残すからね、団長を」丁は行ってしまった。

帝がホワイトゴールに球を取りに行くと、さっきの人とよく似た姿の鬼が立っていた。

「もう暗いよ、帰らないと」

帝は口を利かなかった。

「君の名前はだーれ?」その鬼が指に引っかけているのは蠅帳だった。知りもしないのに帝はどこか熱が出たように頭の中に湯がたまっている気がした。

「帝」

鬼は消えた。

「これで戦が終わる」丁は呟いた。

帝は挺身隊を帝身隊として、それを率いて春秋戦国時代を終わらせ、天下統一を果たし始皇帝と名乗った。

モモが側近となり、帝の秘密を知っているのはモモだけになった。

年を取れない。帝は22のままだった。モモは鬼を信じなかったが帝は丁の探し状を出した。それは親としてではなく鬼としてだった。

帝が始皇帝となって最初に命じたものは別れの自由だった。権利として女からも破談を申し入れられる。

それは自分を知らない、そして自分も知らない父への不信感からだった。

「宇宙が始まる以前からこの国は存在していたのだ」

「贈答品には不向きかも」ニニとユーターは迷っていた。丁のかわしまの家には火鼠の皮しか残されていなかった。それを漬け込んで酒にしたのだ。

「いいじゃん、行っちゃおうよ」

始皇帝の元へ来たニニとユーターはまずモモの所へ通された。

「お久しぶりー」

「これ、手土産」

「あら、いいじゃない」

「今度さー、同窓会みたいなもんなんだけどさー・・」

「オーエス、ってね」

「寂しくなるね」

「結局、使わなかったもんね」

「腹が減っては戦にならぬ」人払いした始皇帝は呟いた。

「白いめしより人を喰わせろ」


花影


 アイサ、シャミス、ユーター、ニニ、モモのかつての挺身隊の五人は桜台の砲に集まった。

「じゃあ、点けるわよ」

「ドーンって鳴るのかな」ニニは耳を押さえた。

「ここに丁がいないのも・・」

砲は後ろ向きに発射され、四本の桜は一瞬にして灰になった。

「あーあ、なくなっちゃった」

「これで、挺身隊も解散だな」アイサが銃剣を地に刺した。

「駆け抜けた、ね」

始皇帝は火鼠の皮の酒を飲んでいた。目の縁が赤い。

「や」これは。窓からは桜が見える。昔原の桜か。

菫色の衣紋も枯れるように染め抜きが閉じた。

自分の手には見たこともないしわができていた。

顔を触ると髭が伸びていた。年を取れる。何があったのか知らないが帝はそう言うしかなかった。

「お母さんありがとう」また一杯、火鼠の皮の酒を飲んだ。

桜の花びらが一枚、酒に浮かんだ。

「めでたしめでたし、か」

始皇帝が年を取れるようになったのは丁の舌がなくなったからだ。

火鼠に中から喰われていく。

永遠に生まれ変わることを許されない丁は鄭の労咳が伝染していた。それでも生き続ける。

もう六年、図書館にいる。片方の目はガラスでできている。もう片方は黄玉だ。

自分の体を修繕しながら生きて、残った部分は首だけ。

「残りあと1000年」それは玉の枝が元通りに育つまでなのか、鄭の背中に言えるまでなのか。

「ご本人様でございますね」司書に案内されて訪ねてきた女があった。

丁は自分の子供の記事を切り抜いていた。その前に誰か座った。

「やあ、」

「その声はシャミスか」

「あの司書・・」

丁は振り返った。

「鄭だ。私の失くした体で作った」

「書き残そうと思う」

「何をだ。桜台の砲か世にも稀な馬鹿な男の話か」

「卵白記だ」

丁は鋏を動かす手を止めない。

「鄭、鄭」

司書がやって来た。

「桜は」

鄭は窓の外を見た。

「寒すぎるようです」

「毎日、聞くんだ」

シャミスは丁の鋏を持つ手を止めた。

「悲しい話になったな」

「鬼もこんな事はすまい」

「お前が喰ったのは本当に火鼠だったのか」

丁は答えなかった。

「春代の砲はそのままか?」

シャミスは答えなかった。

「私の全人生はさくら一双だった。灰になったのか? 永久に・・」


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