35 第一王子『新公爵の勘違いを正さねば』
三日後、ラオルドは自らノンバルダを招待した。
「ラオルド! やっと決心してくれたのだな。私は嬉しいよ」
「まあ、その話は後で。ノンバルダに見せたいものがあるのだ。付いてきてくれ」
ラオルドはノンバルダと護衛を伴って王族の執務室のある中棟から王宮へと足を向けた。
中棟から王宮へと続く扉の前には屈強な衛兵が四人もいた。
「殿下。そちらの方は?」
扉を守る衛兵が生真面目に質問する。
「公爵家の新当主だ。俺の従兄弟にあたる。今日のことは両陛下にご許可をいただいている」
「はい。承っております。ご気分を害されましたら申し訳ございません」
「いや、職務を全うしてくれるのは嬉しいし安心する。これからも頼むぞ」
ゲストについて伝達は受けていても顔を知らない場合その者であるかの確認は必要であるのだが、実際に王族が伴っているとスルーしてしまうことはある。
「ありがたきお言葉でございます」
四人が揃って頭を下げた。
ラオルドたちがその扉を通る時には外側の二人はそのまま真正面を向いているが内側の二人が横を向き入宮を見守る。
「ジロジロ見られて気分が悪いな……」
扉からしばらく歩いてノンバルダが不満を零す。
「同伴者から脅迫や何らかの洗脳を受けている場合もないとは言えないから俺の様子も含めて観察しているのだ。それも彼らの仕事だ。仕事に忠実で我々を守ってくれている」
「いや、あの目は私を軽視しているのだ」
「公爵家の新当主だと説明したのにそんなわけないだろう」
隣に並び歩くノンバルダに呆れたような諭すような笑みを見せた。
「私は公爵家の者らしくないからな」
「俺とノンバルダの顔は似ていると誰もが言うぞ。兄弟のキリアよりもノンバルダと兄弟との方が納得するとまで言われている。
俺は体格は父上だが顔の作りは母上似だからな」
「だが、ラオルドは銀髪で私は茶……だ……」
自分の髪を両手で隠すように握ったノンバルダは下を向き顔を歪める。
『……また髪か。俺の話で劣等感が薄まればいいが……』
ラオルドはため息を飲み込み行き先を見つめて歩いた。
「ここだ」
ラオルドが止まったのは重厚で豪華な扉の前だ。ここにも衛兵が四人いた。
「ここは肖像画室だ。歴代の国王の肖像画が飾られている。現国王の肖像画が王城廊下の正面に飾られているのは知っている通りだ。
ここは極秘というわけではないのだが肖像画は国宝にあたるから王族または王族に伴われし者しか入れないことになっている。
五年に一度、建国記念の日に王城に飾られるが見たことはあるか?」
「記憶も覚束ない頃に見に来たとは聞いているが私の記憶にはない。
前回は人が多すぎて入城を断念したのだ」
ノンバルダは劣等感ゆえか人付き合いが好きではないし人混みも好きではない。
「そうか。それならば是非見てほしい」
ラオルドが衛兵に向かい首肯すると恭しく扉が開かれた。奥にある大きな窓には鉄格子が付けられている。
「ラオルド殿下がいらっしゃるということで王妃陛下のご指示がありカーテンを開けてあります」
「そうか。ありがとう」
普段は絵画保護のため分厚いカーテンが閉められている。
「我々はこちらでお待ちしております」
ラオルドの執務室から付いてきた護衛が頭を下げラオルドは頷いて了承した。
ラオルドとノンバルダだけで入室する。
部屋に入るとラオルドは左手の壁伝いにあるき始めた。ノンバルダは大人しく付いていく。
「ここには未来の国王の肖像画が飾られる予定だ。あと五枚ほどは並ぶな」
輝ける王家の未来を思いラオルドの頬は緩むがノンバルダはピクリとも動かさない。
一枚目の肖像画の前に着くいた。
「これは前国王陛下。俺のお祖父様だな」
「やはり金髪……」
ノンバルダが奥歯を噛んだがラオルドはそれを見ようとせず前国王陛下の肖像画を仰ぎ見ている。
「残念ながらお会いしたことは幼き頃なので朧気だがこのような輝く金髪ではなかったと思う。お年を召していらしたからかもしれぬがな」
ラオルドは再び足を進めた。




