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30 公爵令嬢「殿下はお優しい方よ」

 町からしばらく走ると二階建ての宿屋風の家屋が見えてきた。


「まさかあれか?」


「ムーガ様も隠れ家を知らないのですか?」


「ああ。ラオルド殿下の所有で時々利用されている建物だそうだ」


「へ? ラオルド様が用意してくださったのですか?」


「そうだ」


 二人は馭者台から建物を見上げた。

 低い塀で囲まれた小綺麗な外観の建物である。


「赤茶色の屋根の二階建てに馬車置き場と馬のつなぎ場……。

間違いなくここだな……」


「ムーガ様が用意したっていうならわかるけど……」


「だなぁ。王族が使っているとは……」


「思えないですねぇ」


 それほどこじんまりとした家屋であったが平民なら中流より少し上である。


『王都から馬を飛ばせば三時間ほどの距離だ。ラオルド殿下は本当の休養に使っているのかもしれないな』


 ムーガは気を張って執務を熟すラオルドを思い浮かべた。ここまでは遠回りしてから王都へ戻ってくるような道順を選んだ。


『いつかラオルド殿下のお気持ちがキリア殿下に届くことを願おう』


 ムーガとヴィエナは馭者台から降り立った。



〰️ 〰️ 〰️



 一年程前のことである。


 エーティルはラオルドに覇気がなく憔悴していることに気がついた。

 だが、ラオルドもさすがの第一王子である。王城に勤める者たちの前ではそれを一切見せない。エーティルも個人的なお茶会での笑顔に不自然さを感じたぐらいである。


 何でも納得しなくては気がすまないエーティルはムーガに調査を依頼した。


「わたくしの杞憂ならそれでいいの。

それから。

もし本当にお元気がないとわかったとしても無理に理由を調べることまではしなくていいわ」


「その程度でしたら専属メイドに聞けばすぐに答えが出ます」


「調査をしているとわかられることはダメよ。ラオルド殿下はお優しい方だから心配をかけたと気に病むわ」


「難儀なお方ですね」


「それがラオルド殿下の素晴らしいところの一つですもの」


「わかりました。ではメイドの雑談として情報を取らせます」


 ムーガは子爵令嬢であるサナを調査に派遣した。小一時間で戻ってきたサナからの報告をエーティルに伝える。


「そう。やはりお元気がないのね」


「はい。ですがラオルド殿下がお隠しになろうとなさっておいでなのでその意志に合わせているようです」


「何も言わずとも主の意思を慮ることができるのは優秀だわ。そんなメイドからよく聞き出せたわね」


「サナにはラオルド殿下に注意が必要な来客があったときに護衛メイドをさせておりますのでメイド仲間との情報共有として話したと思われます」


「まあ! 他の王子殿下にも?」


「はい。サナだけではありませんのでいつかエーティル様にそれらの者たちをご紹介することもあるかと思います」


「ふぅ。陛下はわたくしによくムーガをくれたものね」


「エーティル様のご価値かと」


「うふふ。褒め言葉として受けておくわ」


 ムーガはにこやかに頭を垂れた。


 そして、エーティルとラオルドとの定例茶会の日となりエーティルの執務室へラオルドを迎え入れた。


「こちらへ招いてくれるとは珍しいな。俺の伴侶になると決心でもしたのか?」


「それはわたくしが決めることではないことをよくご存知ではありませんか。ふふふ」


「君の希望なら父上は聞き届けてくれるかもしれないだろう?」


 二人は互いに冗談だとわかっているので穏やかな雰囲気である。


「まあ! では次回にお会いできましたときに甘えてみようかしら」


「是非その結果を教えてくれ」


 ラオルドがエーティルの誘いでソファに座ると二人のメイドを見て驚き他のメイドがいないのかとキョロキョロした。


「護衛騎士だけとはどういうことかな?」


 一転して険しい顔になる。


 エーティルの執務室には人払いがされ警備はムーガの部下だけになりメイドはサナとリタが務めていることにラオルドは訝しんだ。


「本日はラオルド殿下にお聞きしたいことがございましてこういう形にさせていただきましたの」


 エーティルは真剣な眼差しで見返した。

『またしても予想と違うぅ!』と思われましたら★やレビューをいただけますと作者が『よっしゃあ!!』となり悶えます。


よろしくお願い致します。

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