27 師団長「そういうとこってどういうとこだよ」
少女は馬車の扉を開け頭からピンクのカツラを取りポイッと中へ投げ入れると自分の茶色の髪をくしゃくしゃと手で梳いた。
「暑かったぁ!」
「おいっ! それ高いんだから大事に扱えよ」
「こんな派手なもの二度と使えないですよね? もうゴミですっ!」
『パッタン』
少女は勢いよく扉を閉めた。
「いや、地方でならまだ行ける」
力強い眼力で颯爽と馭者台へ乗り込む。
「目立たないことが私達の仕事じゃないですかぁ。師団長になってボケちゃったんですかぁ?」
少女がヒョイッと馭者台に座るとムーガは馬車を進め始めた。
「ヴィエナ。疲れてるだろう? 中にいていいのだぞ」
ムーガは少女をヴィエナと呼んだ。
「窓もない馬車内なんて暇すぎですよ。昨夜はメイド部屋のベッドでゆっくり寝れたので疲れてないです。それにムーガ様が上司なのですから中に乗るのはムーガ様の方ですよ」
ムーガを上司と扱う少女ヴィエナは第三師団第二部隊の隊員である。
そして、ピンクさんであり、ウェルシェでもある。
「それは遠慮しとくわ」
「ほぉら! ムーガ様だって中は暇だと思っているじゃないですかぁ!」
「わっはっは!」「あはははは!」
気の置けない二人は笑いながら隠れ家に向かった。
「一ヶ月くらい隠れ家でのんびりしてろ。そうしたら王都へ戻れよ」
「えー、王都かぁ。ねぇさんたちに会うのは怖いんですよねぇ」
ヴィエナは第三師団第二部隊の女性騎士団員を名前に『ねぇさん』を付けて呼んでいる。
ケイルとヨハンも『にぃさん』『ねぇさん』呼びをしていた。第三師団第二部隊は商隊のフリをして地方を回るので普段から家族ごっこのように呼び合っている。
「ん? 何かあったのか?」
ムーガは首を傾げた。
「ムーガ様が王様にご報告へ行っている間にラオルド様が私たちのところへいらしたでしょう。
その時、ラオルド様がエーティル様に縋るように手を伸ばしたんですよ。でも、ねぇさんたちの眼力で一歩も近づくこともできなかったんですからぁ! 私なんかラオルド様の脇で倒れていたのにビビってチビリそうになりました」
ヴィエナはムーガに泣きそうな顔を向ける。
「リタ姉まで怖いんですよ。妹の顔忘れちゃったのかと思いましたよ」
エーティルの護衛騎士リタとヴィエナは義理の姉妹だ。
「ぶはっはっ!! 忘れられてなかったか?」
「はい。今朝もメイド部屋までお化粧に来てくれました」
ヴィエナは留置所ではなくメイド部屋で過ごしていたのだった。
その間留置所には第三師団第二部隊の隊員が配置されピンクさんがいないことに疑問を持たれないようにしたのはカティドである。
「なるほど。だからその顔か」
ムーガがヴィエナの頬を強めに擦るとムーガの日に焼けた手は白に近いクリーム色になった。
「えー!? ムーガ様がリタ姉を寄越してくれたんじゃないんですか?」
「エーティル様とお前以外のことはカティドに任せてあるんだ」
「あ! だからリタ姉たちは食堂で声かけられて驚いていたのかも。私はそれも知っていると思っていたから」
食堂で騒ぎを起こすことはムーガとヴィエナしか知らなかった。
「罪人が化粧できてるって第二師団の隊員たちに怪しまれなかったか?」
今のヴィエナの顔は当然ウェルシェだ。本来のヴィエナはどこにでもいる平凡な顔をしている。
「もちろん訝しげにされましたよ。でも、エーティル様からのお慈悲だと説明したら一発で納得してました。
…………ほんとに……。
…………まあいいですけど……」
その様子を想像し呆れたような同意するような笑いをするムーガにヴィエナは一睨みすると改めて吹き出してさらにヴィエナは眉を寄せる。
「さっきの護送護衛の一人なんて同期で合同訓練を何度もしたヤツだったんですよ! それなのに私に全く気が付かないし!」
「まあ、そう怒るなって。人は意識しなければ見たいようにしか物を見ないのだ。王子を誑かしたピンク頭を仲間の者だと見たいヤツはいない。
それより第三師団第二部隊のやつらに会いたくないのか?」
「は? いやいや冗談半分ですよ。ほんとに会いたくないわけないじゃないですか。
ムーガ様ってそういうとこありますよねぇ」
ヴィエナは大きくため息を吐く。
「そういうとこってどういうとこだよ」
「なんでもないです。それがムーガ様なんでそれでいいんです」
これ以上聞くと気恥ずかしい思いをしそうだと思ったムーガは澄まし顔で流した。
新展開に作者も右往左往www
プロットに基づきやってみます。
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