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20 文官「貴方たちの子息は武術で秒殺されました」

「幼い頃から家で家庭教師をつけて鍛錬させていましたよ」


 公爵家当主が鼻息を荒くする。


「ええ。我が家もです」


「お二人はご子息の鍛錬は実際にはご覧になっていらっしゃらないのですか?」


「私より武術に優れた者が見ているのですから必要ないでしょう」


 侯爵家当主も頷いている。


「さすがに互いの子息はご覧になっていますよね?」


「いえ。同じ家庭教師でしたのでその者が良いと言えば問題ないでしょう」


「それはそれは……」


 宰相が隣に座る文官に目配せすると文官は一つ頷いて姿勢を正した。


「先程、第三裁判室にてキリア第二王子殿下がドリテンとソナハス両名の聴聞を行われました」


 この文官は休憩前の第三裁判室でキリアとエーティルの前に座っていた者の一人だ。他にも三人がここに並び証人としての役割もしている。


「犯罪者扱いではないですかっ!!」


「証人にも聴聞はいたしますよ。それにここまでくれば……」


 手を翳して当主たちを制する宰相は呆れ顔である。宰相の終わりの呟きが聞こえなかった当主たちは唇を噛んで睨んでいる。


「えー、続けます。その聴聞においてキリア第二王子殿下のご指示でドリテンとソナハス両名の模擬戦が行われ……」

「酷すぎます!」


 当主たちが身を乗り出した。


『ゴンッ!』


 力強く小槌の音が響いてそちらを見やると目を細めて自身の怒りを抑えようとしている国王陛下が見下ろしていた。


「話が進まぬ。宰相に発言を求められるまで口を開くな。できぬのなら猿轡でも用意させる」


「な…………。か、かしこまりました」

「わわわわかりました」


 当主たちは目を泳がせた。文官は立ち上がり国王陛下に一礼して座り直す。


「えー、キリア第二王子殿下のご指示ですね。ご指示でドリテンとソナハス両名の武術の実力を測るため近衛兵との模擬戦が行われました。模擬戦は素手での体術で相手となった近衛兵は重い甲冑を付け動きにくい状態でありさらには新人近衛兵で十七歳の少年二人であります」


 侯爵たちは肩を撫で下ろした。二十四歳になる体格もそれなりに良い二人ならその条件なら負けはしないだろうと考えたのだ。


「結果、ドリテンとソナハス両名は一秒保たずして投げ飛ばされました」


 聴衆はざわめき侯爵たちは身を乗り出して口をパクパクさせた。


「どうぞ」


 宰相はため息交じりで許可を出す。


「誇張した報告書なのではないですかなっ!」


「いえ、誰かの報告書ではありません。

国王陛下にお聞きいただいていることをわかった上での私が見た結果の口頭報告です。我々四名は先程まで第三裁判室での聴聞において裁判官席におりました。そして、我々四名での口裏合わせをしないよう監視されております。

その上で私の報告に反論をしないということはここにいる三名は私の報告に間違いがないと考えているということです」


 三名が大きく首肯した。


「彼らは国王陛下の御前で虚偽報告をするほど愚か者ではないですよ」


 宰相が呆れの笑みで付け足した。


 脇の扉で誰にも聞こえぬほどのノックがされ扉の前に立つ衛兵が耳を澄ますとくぐもった声がした。衛兵が扉を少し開けて様子を窺い頷いてから向き直るとそれに気がついた宰相が視線を送る。


「失礼いたします。ご指名の証人が参りました」


「通してくれ」


「はっ!」


 衛兵は今度は人が通るくらい扉を開く。衛兵と同じ甲冑を着た者に連れられて来たのは別の重々しい甲冑を着た三十歳を越えたと思われる者であった。


 その者が頭を下げる。


「発言を許す」


「はっ! 王城騎士団所属マイアスです。主に王城外衛兵を務めております」


 重々しい甲冑は外勤務の者たちが着ているものである。内勤務の者は動き重視のため軽めの甲冑を着ている。


「子爵家の者か」


「はいっ! 子爵家が三男でございます。子爵家はすでに兄が継いでおります」


 どう見ても三十歳は越えているので兄に子供がいても不思議ではない。


「で? マイアスがここに呼ばれた理由はわかっているか?」


「はいっ!」


「では証言いたせ」


 宰相は淡々と話を進めていった。

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