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18 宰相「モノクルはいいですよぉ」

 宰相公爵は当主たちの言葉を肯定し何度か首を縦に振る。


「そうですねぇ。我が国の国王陛下は大変に寛大でいらっしゃりぃ我々臣下の意見にも快く耳を傾けてくださりぃいつも国民を第一にお考えになる素晴らしい方ですねぇ」


 当主たちは勝利を確信したとニタリと笑う。


「ですがぁ……。だからといってぇ公の場で立場を弁えない行動をすることはぁ偉大なる国王陛下を愚弄していることになるぅとおわかりにならないのですかぁ?」


 宰相は極限的にやさしぃぃぃ口調で語りかけた。


「このような場所ではぁ言われずとも踏まえることがぁ高位貴族としての教養だと思いますがぁ? お二人はどう思われますかぁ?

もしや! この状況をぉご理解しておられませんのか? お二人には是非是非モノクルをご利用なさることをオススメしますよぉ。これは誠によく見えるのですぅ。ほっほっほ」


 宰相は自慢のモノクルの縁をススと撫ぜた。 


 宰相公爵の切り返しに周りの役職貴族たちは小さく笑っている。さらには国王陛下は右手で口元を隠しているし、王妃陛下は扇を大きく広げて顔全体を隠しているが肩は震えているので二人とも笑っていることは明白であるが誰も指摘はできない。二人の後ろに控える側近たちも苦笑いだ。

 二人の当主はワナワナと震えだした。


「まともな解答など望んでおりませんよ」


 宰相は先程の二人の表情の真似をして口角をひしゃげさせ皮肉めいた笑みを見せる。それを見た当主二人は顔を赤くして睨みつけた。


「ほっほっほ」


 宰相は煽りに対してあまりに素直に反応した二人に思わず笑ってしまい隣に座る高官になだめられた。

 

「すまぬすまぬ。

ではそろそろ真面目にやりましょうかね」


 宰相の言葉に高官たちが姿勢を正して自分自身の肝に喝をいれた。 


「まずはそちらのお話を聞きましょう。聞きたいこととは何ですかな?」


「我が家の三男のことです。近衛兵ごときに拉致されたと聞きましたが」


 公爵家当主は鼻を持ち上げて威厳を表した。


「我が家の次男もです。全く以て失礼極まりないですなぁ」


 候爵家当主は力強く頷いた。

 周りが目を細めて軽蔑していることに気が付かずに二人で満足気に笑っている。


「拉致されたわけではありません。国王陛下の命の元に召集され裁判室にて王子殿下が聞き取りをなさっておられます」


 宰相の隣に座る高官が述べると侯爵はタンと机を叩く。


「何ですかそれはっ! まるで何かの犯罪者のような扱いではありませんかっ!?」


「はて? 犯罪者ではなくとも証人や弁護人も呼ばれることはありますよ。犯罪者と断定するとはもしや何か聞かれてマズいことでもおありなのですかな?」


「そんなものあるはずもないっ!」


「ならばお二人のご子息から話を聞くとした国王陛下のご判断に何か問題でも?」


「「グッ……」」


 二人が奥歯を噛み締めたことが見て取れたが宰相はサラッと無視して手元の資料に目を落とした。


「その息子さんからの証言に確認が必要なものがいくつかありましてな」


 頭を上げるとニコリと笑う。


「それをお二人にお聞きするためにこちらへ来ていただいたのです」


「わかりました」


 二人は渋々といった様子で頷いた。


「助かりますよ。

では一つ目。

ドリテン、ソナハスの両名はお二人からの推薦ということで間違いございませんかの?」


「ええ。国王陛下が第一王子殿下の側近を探しておられたので我が息子を推薦しました」


「私もです」


「我が息子ながらなかなかに優秀でしてなぁ。第一王子殿下の側近は数名が首になっておりますが我が息子は未だに重宝されているようです。わっはっは」


「私の息子もすでに三年ほど側近を務めておりますが解雇されるような愚鈍な者たちとは格が違うようですね。ハッハッハ!」


 当主二人は目を合わせて本当に自慢気に笑っていた。

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