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17 高位貴族当主「どういうことですかな?」

 キリアはラオルドを見ると悲哀を含ませて側近たちの後ろ姿を見つめていた。


「第一王子殿下」


 キリアは気持ちを感じないように仕切り直して兄たるラオルド第一王子と向かい合う。


「貴方はここにいない彼の者が愚か者だとわかっていらっしゃいましたよね?」


 ウェルシェはここには呼ばれておらずまだメイド部屋で簀巻き状態だと思われる。

 ラオルドも気持ちを切り替えてキリアに向き合った。


「当たり前だっ! だが、エーティル嬢に害なそうとするほどまでとは思っていなかったがな……。

エーティル嬢。申し訳なかった」


 ラオルドが裁判長席に向かって頭を下げた。ドリテンとソナハスは自分たちも頭を下げたりしなかったのにラオルド第一王子殿下が公爵令嬢に頭を下げたことにとても慌てた。


「我々は知らなかったのです」


「我々はあの女に近寄っておりません」


 側近二人は手振りを大きくして自己防衛の言葉を並べる。


『ダンッ!』


 キリアが机を大きく叩いて立ち上がった。


「貴様らは兄上のあのお姿を見てもまだ保身に走るのかっ! 本当の側近であったならば『自分の責任です』と言って自害するくらいの気持ちを持て!

王子たる兄上に頭を下げさせておいて図々しくも己を可愛がるなど恥を知れっ!」


 エーティルでさえもうキリアを止めたりしなかった。


「知らなかったでは済まされませんよ。側近として王子殿下に侍る者をキチンと調査し、そぐわぬ者となれば王子殿下の反対を押し切ってでも排除せねばならないのです。それが王子殿下の側近のお仕事ですわ」


「お前たちに厳しく言えなかった俺にも落ち度はあるのかもしれない」


「「ラオルド殿下……」」


「だが、側妃であろうと側近であろうと主たる者を支えるために存在するのだ。胡座をかいて与えられた仕事だけすればよいものではない。お前たちはその努力を怠っていたのではないか?」


 慈悲と憂いを含むラオルドの口調に側近二人はハラハラと涙を流した。その涙は反省からなのか未来への諦めからなのかは本人たちだけが知ることである。


 そこへ二人が文官採用試験のテストをやった結果が届けられた。キリアが確認してエーティルに渡し、エーティルは確認するとサナに手渡した。サナはラオルドの元へそれを持っていく。

 それを見たラオルドはため息を一つ吐いてそれをテーブルに置いた。おもむろに席を立ち何も言わずに出ていった。


 エーティルがムーガに指示を出しキリアとエーティルは退室し解散となった。


 自分たちのテスト結果を知らないが多少自覚があるドリテンとソナハスは俯いていたが近衛兵に促されて立ち上がりその部屋を出た。そして父親たちが国王陛下と謁見中ということでいつもの執務室に監視付きで待機となった。


 第二裁判室でエーティルたちがドリテンとソナハス側近二人の聴取を行っている頃ムーガの手配で編成された近衛兵が側近二人の親である公爵家侯爵家当主を聴聞室で待つ国王陛下たちの前に連れてきていた。


 国王陛下と王妃陛下が座っている場所は腰半分より高く両陛下の前方に柵がありその下段には十人ほどの文官が机に書類を置いて構えている。


「これはどういうことなのですかね?」


「わたしどももお聞きしたいことがありましたから良いですが」


 二人の当主はゆっくりと左右の面々を確認しながら前へ歩み謁見の位置には演説台が二台横に並べられそこに二人の候爵が立つ。その両サイドに柵が置かれその奥に並べられた椅子に多くの大臣職副大臣職を担う高位貴族の当主や後継者たちが揃っていた。


 両陛下へ頭を垂れることもなく口を開いた。


「いろいろとご説明いただかねばなりませんな」


「忙しい合間をぬって来ておりますからね」


 当主たちの後ろに控えていた近衛兵が殺気立つが自分より下位の貴族の子息になど興味もない二人は何も感じない。


「立場を弁えた方がよろしいかと。今は謁見の時ですからなぁ」


 両陛下より下の段の高官たちの真ん中に宰相を務める初老の公爵が座っていた。無表情よりは微笑かなというほど微妙な表情である。

 

「我々高位貴族当主は国王陛下から忌憚のない意見の陳述とざっくばらんな言動を許されているはずですが?」


 当主二人は我が意を得たりというように口角をひしゃげた。

 国王陛下は普段から臣下の意見を取り入れたいと言いそう実践していたことは事実である。

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