第85話 フェアな戦い
宣言通り木曜日投稿になってしまった・・・
テクにご飯だと呼ばれた私達は食堂に向かっている最中、スミヤが小声で話し出した。
「戦うって決まったが、問題が山の様に積み上がってるぞ。例えば勝負の内容だったりな」
「確かにね。勝負って言っても一対一で戦うのか大勢で戦うのかで作戦が全く変わってくるからね」
「う〜ん・・・私は後者だと思うな。だってG・ティーチャー言ってたじゃん」
『CaReUeハウス学校の生徒全員であるモノと戦って貰うわ』
「生徒全員で戦う・・・つまり、『猟り』ってことじゃないかしら?」
私は昨日のG・ティーチャーの言葉を思い出しながら答えた。
しかし、これだと更なる問題に直面してしまう。
「なるほどね・・・でも、全員って言っても1歳の赤ん坊もいる訳だし・・・」
そう、CaReUeハウス学校の生徒には1〜4歳までの生徒が半分を占めている。
彼等も戦闘に参加だなんて無理に決まってる!
「それもあるが、もし全員で戦うことになったら家族にはどう説明する?」
あ─────
そうだ・・・一番頭に入れておかないといけない事を考えてなかった。
家族の皆んなにCaReUeハウス学校の真実を・・・
G・ティーチャーが敵だという事を・・・
ルーもベラ姉さんもそれ以前に卒業した家族全員が殺されてしまった事を・・・
全部を皆んなにどうやって伝える事かを考えなければならないのだ。
「いかに事実といえど、伝え方考えねぇと信じてもらえず、笑われたりするぞ。信じたとしても最悪泣き叫んで終わりって可能性もあるしな」
「ど・・・どうしよう」
「今考えて不安になっても仕方ないよ、メイ。もうすぐ食堂に着く、G・ティーチャーに作戦を聞かれても不味いからこの話は朝食の後にしよう」
「・・・うん」
──────
────
──
「───今日も時間通りね。メイ達が何故か手伝ってくれなかったから遅れたかと思ったけど・・・まぁ、何はともあれ・・・」
『いただきます』
────私は朝食を食べながらも頭はどうやって皆んなに話すか考えていた。
正直に学校の真実を話すべきか・・・
でも、スミヤの言う様に最悪家族の皆んなが泣き叫んでしまうかもしれない。
もしそうなってしまったら、勝負どころの騒ぎじゃない。
じゃあ、本当の事は言わずに嘘をつくべきか・・・
でも、それをやってしまったらG・ティーチャーとやってる事は同じではないか?
家族には・・・家族には嘘をつきたくない!
一体どうすれば─────
「さて、皆んな食事中だけどよく聞いて?この後、いつもだったら8時から授業なんだけど、今週1週間は無しにするわ」
・・・・・・えっ?
「なんで〜?」
「どうしてなの?G・ティーチャー」
「どこか具合が悪いの〜?」
「そんなんじゃないわ。実は1週間後、ある体育大会が開かれる事が決まったのよ。それで今日から1週間はそれに向けての訓練をする期間を与えるのよ。その間はメイ、ナイ、スミヤ達に先生をお願いするわ」
・・・罠だ!
これは罠に決まってる!
普通、敵にわざわざ訓練をする時間を与えるか?
そんなことはしない!するメリットが存在しない!
必ず裏があるはずだ!
でも、分からない!G・ティーチャーの考えがまるで読めない!
一体何を考えているんだ!
「まぁ、詳しい話は3人に伝えるから・・・食べ終わったら後で私の部屋に来なさい・・・ニィィ」
ゾクッ!
笑った・・・今、私達を見て笑った・・・
何を考えているんだ!全然分からない!
──────
────
──
朝食後、私達はG・ティーチャーの部屋にすぐには行かず、またナイ達の部屋で話し合った。
「どう思う?2人共」
「いや、明らかに罠だろ!訓練の時間をくれるなんざ!」
「うん、私もそう思う。完全に罠だって・・・」
スミヤも同じ考えのようで声を荒げながら答えている。
「確かにそうだね。でも、僕はチャンスだと考えているよ。仮に罠だとしても訓練する期間をくれたんだ。ならその期間を利用しない手は無いからね」
「・・・そりゃ・・・そうか」
「フッ、じゃあ行こうか、G・ティーチャーの策を探りに・・・」
そうか!これはG・ティーチャーが用意してくれた2回目の話し合い・・・言い換えれば、腹の探り合い。
いかにこちらの情報を与えず、相手の情報を抜き取るかが勝つことへの第一歩なのだ!
私はそう思考しながらG・ティーチャーの部屋へと向かい、部屋の前に着いた。
コン コン
「入っていいわよ」
2回ノックをしG・ティーチャーの了承を得て私達は部屋へと入る。
「少し遅かったじゃない?まぁ、すぐに来てとは言ってないから良いけどね・・・って、3人とも顔が怖いわよ。どう?コーヒーでも飲むかしら?」
「「「・・・・・・」」」
「無駄口は叩かないって訳ね・・・いいわ、貴方達が聞きたいこと、なんでも答えてあげるわ。勿論、勝負の内容もね」
えっ─────
「何?ビックリした顔してるのよ。もしかして話さないとでも思っていたの?それだとフェアじゃないじゃない。昨日の夜にも話そうかと思ってたけど、遅かったしね。ただそれだけの事よ」
「・・・じゃあ、聞きます。勝負とは具体的に何するんですか?」
ナイが口を開いた。
「貴方達も薄々気付いてるでしょうけど、戦う相手は異形よ・・・でも、安心なさい。それほど凶暴じゃない相手よ。ソイツを殺せば貴方達の勝ち。貴方達の負けはリタイアを宣言するか、全員殺されるか」
「全員・・・とは?」
「戦闘に参加して貰うのは5歳以上の生徒15人よ。いくらなんでも4歳以下に戦えなんて無茶は言わないわ。その15人で異形と戦って貰う・・・それだけよ」
5歳以上・・・流石のG・ティーチャーもそこは配慮しているのか。
そして、勝負は私の予想していた通り大勢で戦うみたいだ。
うん、5歳以上ならなんとかなりそうだ、皆んな体力テストの点は良いみたいだし・・・
「分かりました。では、なぜ授業を休みなど言ったんですか?其方が不利になるだけでは?」
「不利・・・ね。違うわよ。その逆よ。貴方達に力を付けて貰いたいから訓練の時間を与えたのよ」
訓練の時間を与えた?
「3人とも納得いってない表情ね。でも、本当の事よ。ハッキリ言ってあげるわ。今の貴方達で異形と戦えば、ものの数秒で殺されるのは目に見えている。それじゃあ何も面白くはない。さっきも言ったでしょ?戦いとは常にフェアである事が大事なのよ」
「「「フェア・・・」」」
「そうよ、同じ期間で力を蓄えた者同士が戦う・・・これが真の戦いってものよ。私が用意する敵は私が今育ててるの。だから、1週間の時間が欲しかった」
異形を育てる為の1週間・・・
やはり、ナイとスミヤの言った通り裏があった。
「だから、安心なさい。貴方達の訓練の邪魔はしない、監視もしない。貴方達が企てる作戦も盗み聞きもしない。貴方達の1週間の集大成を1週間後の楽しみとして取っておくわ。貴方達には期待しているわ、なぜなら貴方達は私が育てた最高傑作なのだから」
次回投稿は来週の水曜日になります。
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