第83話 YES か NO か・・・
視界に映るは血塗られた首だけのルー・・・
私達は咄嗟に目を逸らした。
え・・・どうして?・・・えっ?・・・どう言う事?
「あーあーあーいつも思うんだがね、殺した後を見るのが一番辛いよね」
「そりゃそうだろ、さっきまでニコニコしていた奴がよ・・・今は瞳孔開いてコッチを見上げてるんだぜ?不気味にも程があるぜ」
私達が動揺していると、窓の奥から話し声が・・・
今度はなんだ?いや、この声の主がルーを殺したのか!?
そんな事を考えながら今一度窓の中を見る・・・そこには・・・そこには・・・
ニンゲン・・・ではなく、異形の姿をしたバケモノが2匹佇んでいた。
所々ニンゲンの姿の面影はあるが、そんなモノを遥かに凌駕する触手の数々が蠢く。
「何よ・・・これ・・・なんなの・・・コレは?」
「異形者・・・」
私の呟きに答えるかのようにナイはそう答える。
────異形者!?アレが!?あの!?
異形者・・・本で読んだことがある。
人間が負の感情に支配された時、人外へと変貌する姿の総称・・・
異形者には様々なtype が存在し、人型、獣型、無生物型・・・
じゃあ・・・じゃあ、アレは人型の異形者だとでも言うの!?
それよりも、なんで・・・なんでこんな所に異形者が・・・はっ!?
『森の奥の柵には行っちゃあ行けない・・・』
G・ティーチャーはこれを知っていて・・・
そうだ!?G・ティーチャーは!?
G・ティーチャーは無事なの!?
「って言うか、よく育てれるわよね、こんなフロッピー達を」
「おいおい、お前が言うかそれを?」
「だってそうじゃない?CaReUeハウス学校にいる奴ら、ほぼほぼ死ぬ為に生きてる・・・殺される為だけに生きてるみたいな奴らじゃない?生かしてるなんて金の無駄使いにも程があるじゃない?さっさと全員殺せば良いのに」
─────え?
『さっさと全員殺せば良いのに』
────死?
『また、会う日まで・・・元気にね!!』
『『『お姉ちゃんも元気で!!!』』』
『じゃあ、皆んな。ベラとルーにお別れを言いましょうか」
「元気でね!ルー』
『ベラお姉ちゃん、元気でね〜』
『お手紙書いてね〜!!!』
嘘・・・嘘だ─────
私は・・・私達は────
死ぬ為に生きてきた・・・殺される為に生きてきたの?
「そんな事言うもんじゃありませんよ?貴方達。育てる事はとても素晴らしいことじゃない?生ある者に携わる事、頼りにされる事・・・とても感動的じゃない?」
この声は・・・この声はまさか・・・まさかだよね。
その予感、私の嫌な予感は的中した・・・
「G・ティーチ様はとても寛大な方でありますね」
G・ティーチャー・・・嘘だ・・・嘘だ嘘だ嘘だ!
G・ティーチャーまでも私達を騙してたなんて・・・そんなそんなそんな・・・
「ふざけた事抜かしてないで早く死体を綺麗にするのよ・・・それと、気付いてるわよ。メイ、ナイ、スミヤ、そこで見てるのは」
─────ッ!?気付かれていた!?
「不味い!メイ、スミヤ逃げろ!!!」
ナイのその言葉と共に素早くこの場から離れ、全速力で階段を駆け降りる。
「気付かれていた!?いつからだ!いつから気付かれてた!?」
「分からん!カメラにも注意していた筈だ!なのに何故気付かれたんだ!?」
そうだ!いつからだ!G・ティーチャーのあの言葉・・・
『気付いてるわよ。メイ、ナイ、スミヤ、そこで見てるのは』
あの言葉は相当前の段階で気付いていないと出ない言葉・・・
「まさか、僕達は最初から・・・最初から、この門に入る時から既に気付かれていたのか!?」
「そうよ」
ナイの動揺の声に前方から聞き覚えのある声が返答するかのように響いた。
しかし、それは違った。
私達が想像する者の姿では無かった・・・
声はそうだ・・・しかし、姿形がまるで違う。
目の前にいるモノは腕が6本・・・緑と紫色の皮膚・・・そして、一番に目ついたのは・・・明らかに・・・明らかに肥大化していおり、人1人なんなく飲み込めるであろう口だ。
「だ・・・誰だ!!」
ナイが動揺と恐怖が入り混じった声で叫ぶ。
「アラアラ、御免ナサイ。コノ姿デ貴方達ニ会ウノハ初メテネ。『G・ティーチャー』ヨ。デモマァ、コノ姿ダト・・・『G・イーター』ト呼バレル方ガ多イワネ。貴方達ハ好キナ方デ呼ンデ構ワナイワヨ」
事も気に、自分はG・ティーチャーだと言う。
もはや隠そうとせず、己の事を話すG・ティーチャー。
まっ・・・まさか、G・ティーチャーまでもが異形者だったなんて・・・
「な・・・なんで、こんな事を・・・なんで」
「ン?コノ姿ハヤッパリ怖イカシラ?仕方ナイワネ・・・じゃあ、こっちでお話ししましょうか?さて、貴方達には疑問があったわね。『いつから』気付いていたか・・・最初からよ」
「最・・・初から?」
いつもの姿に戻ったG・ティーチャーは最初から気付いていたと答えた。
「そう、ベラとルーをこの門に連れて行くまでの間・・・そういえばメイがベラの為に作っておいたネックレスを渡してないな・・・と気付いたの。それで、多分メイの性格からして恐らくここに来ると予感してたわ。そして、貴方達は案の定来た・・・」
やられた!!やられてしまった!!!
気付かれていた!ネックレスの事まで知られていた!
来る事も、私の性格を読んで分かっていた!
G・ティーチャーは初めから何もかも知っていた!ナイとスミヤも付いてくる事も読んでいた!
「門の場所の監視カメラもわざと経年劣化してるように見せかけたの。ナイはこういうのを気が付いてくれると思ったからね。そして、案の定カメラの盲点に気付いて死角から入ったと思わせた・・・本命がそこにあると知らずに・・・」
「(自分が見つけた死角・・・それは全てG・ティーチャーから与えられたモノ・・・
そして、入口以外の監視カメラの有無・・・
必要すらないのも当然な事・・・
既に城に入った時点で僕達は負けは決定しているのだから・・・
負けた・・・完全に、全てにおいて・・・)」
「思考する生き物は実に単純な生き物・・・自分で発見したモノには疑いやしない。そうして気付かず罠に落ちる・・・そういう所において貴方達がベラに劣っているのよ」
これが・・・G・ティーチャー・・・本音
信じてた・・・信じてた・・・
本当に大好きだったのに・・・大好きだったのに・・・
G・ティーチャーにとって私達は最初から・・・
『殺される為だけに生きてるみたいな奴ら』
怖い!悲しい!泣きたい!裏切られた!G・ティーチャーに裏切られた!
「・・・それで真実を知った僕達をどうするつもりですか?殺すんですか?」
「フッ・・・それは貴方達次第じゃないかしら?」
私達次第?どういう事だ?
「さっきはああ言ったけど、貴方達3人が本気で逃げればこの場所から逃亡する事だって簡単よ。それくらい貴方達は優秀って事ね・・・でも、それは出来ないわよね?メイ」
「あ・・・」
その言葉の意味に私は気付いた・・・
「何言ってんだ!逃げれるってんなら逃げるに決まってるだろ!」
「無理・・・逃げれない・・・ここに彼等を残せば確実に・・・置いて行けない・・・」
そうだ・・・私達は逃げれても、家族はどうなる?
決まってる・・・殺されるに決まってる!
これ以上、家族が殺されるのは見たくない!!!
「流石、メイ・・・家族思いの貴女ならそう言うと思ってたわ・・・なら、そうね・・・私と勝負をしない、メイ、ナイ、スミヤ?」
「「「しょ・・・勝負?」」」
「そう、1週間後・・・ある場所でCaReUeハウス学校の生徒全員であるモノと戦って貰うわ。そこで貴方達が勝てば逃がしてあげる、どう?」
ある・・・モノ?戦う?それに逃す?
「逃がしてくれるって・・・本当かどうか分からな────「じゃあ、今すぐ死ぬ?」
「「「────ッ!!」」」
「今、貴方達に与えられてるのはYESかNOよ!早く答えなさい!」
初めて見る・・・真剣で冷酷な目を向けるG・ティーチャー・・・
YESかNOか・・・そんなの・・・そんなの決まってる!
「「「やる!そして、勝って自由を手に入れる!」」」
「・・・フッ、良い返事ね、1週間後楽しみにしてるわ。じゃあ、今日はお休みなさい・・・真っ直ぐ校舎に戻るのよ」
G・ティーチャーはそう言って入口まで私達を見送ると、再び城の中へと消えて行った・・・
「・・・勝てるかな・・・私達・・・生き残れるかな・・・」
「かな・・・じゃない。勝つんだ!生き残るんだ!」
「そうだ!ベラ姉さんと約束したじゃないか!家族を守るって・・・絶対に勝とう!」
「「うん(おう)!!」」
私達は夜空にそう誓った・・・
──────
────
──
『─────と言うことがありまして・・・すいません、ベライザ様。また勝手な事をしてしまい』
「良いのよ。それも彼等の能力を上げる為・・・でしょう?G・ティーチ」
『はい、つきましては何人か監査役が必要になりますが・・・』
「それはこちらで用意するわ・・・ちょうど借りを返して貰おうと思っていたところよ。じゃあ、また後で連絡するわ。それじゃっ」
ブッ・・・ツー・・・ツー・・・ツー・・・ツー・・・
「さて、この前の情報の借り・・・返して貰うわよ・・・ニャルラ────」
次回投稿は来週の水曜日になります。
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