第77話 堕とし子
来週で7章最終話
「────貴様は『堕とし子』で殺してやろう」
「『堕とし子』・・・だと?」
何だ?それは・・・
アークはそう口にしようとした瞬間・・・
ザワ・・・ザワザワ・・・ザワザワザワ・・・ザワザワザワザワザワザワザワ
辺り一帯がざわめき出す。
否、蠢き出したと言った方が正しいだろうか・・・
「な・・・何だッ!?」
声を荒げながらアークは辺りを見渡す。
明らかに空気が変わった。
ベッタリした重々しく、凍てつくような空気・・・
何十人もの眼から一斉に見られているような感覚・・・
「何をしたッ!!─────なっ!?」
一瞬だ。
たった一瞬目を離しただけだ。
ただ周りを見る為一瞬目を離しただけだった。
しかし、次に目の前の男・・・アザートに目をやると、不気味な笑みを浮かべながら消え掛かっている。
否、辺りと同化・・・暗闇と同化していった、と言う方が正しい。
まさに闇に同化していく悪魔・・・
「すっ・・・姿を隠そうが意味が無い!貴様の攻撃は俺には届かん!何をしても無駄だ!」
この空間に必ず居るであろうアザートに向け、吠叫ぶアーク。
ガザッ
アークの左方向からある音がたった。
「そこか!!」
ドバァァァン!!!
アークはそこに発泡・・・肉片や血飛沫が舞うことは無い・・・
空を斬ったか・・・否、違う。
血や肉の代わりにナニカが宙を舞った。
黒いナニカが宙を舞った。
「何だ?・・・ヒィ!!」
アークはその正体を見破った瞬間、背筋が凍る。
その正体とは何か?
一言で言い表すなら『蟲』
大量の蟲の集合体であった。
蟻、団子虫、亀虫、蛾、百足、蚰蜒、蜘蛛、蜚蠊・・・et
それら全てが蠢きあっている。
「新たな能力『堕とし子』は2段階の攻撃に分かれている。それは1段階目だ」
何処らからともなくアザートの声が鳴り響く。
「1段階目・・・それはある種無差別攻撃であり、全ての敵に相対出来るであろう攻撃だ。普通なら『蟲』は恐怖、嫌悪感を湧くだろう?」
「な・・・何が言いたい!!」
まだ何もされていない・・・
ただアザートの攻撃はまだ恐怖を煽っているだけだ。
しかし、この攻撃は着実にアークの精神をすり減らしている。
「そして、時が経つと・・・顕現する。貴様の恐怖の根幹が・・・」
「何?」
そうアークが問うた次の瞬間、
瞬間、気配・・・
後ろから複数の人のような気配が発する。
「今度は何だ─────えっ」
振り返ると・・・
「お前脚遅っそ!」
「おい、こっち来んじゃねーよドンガメ!」
「クセーんだよ!」
眼前には思い出したくも無い記憶・・・
封じていた幼少の頃の記憶が存在した。
* * *
アーク 小学校時代
「おい、みんな見ろよコイツ。50m15秒だってよ。遅すぎるだろコイツ」
「亀じゃね。ドンガメだコイツ。アッハッハッハッハッハッハ!!」
「おい、コイツ泣いたぞ!亀って確か泣くのって子供産む時って聞いだぞ!」
「じゃあ、子供産むんじゃね?亀生まれるんじゃね?」
「産〜め!」
「「産〜め!」」
「「「「「「産〜め!!!」」」」」」
* * *
「な・・・なんだこれ!なんなんだコレは!」
アークはアザートに向け怒鳴るも何も返ってこない。
「何うるさい声出してんだよ!亀!」
「うるせーんだよ!トロいくせに」
アークを虐めていた者達が罵る。
「う・・・うるさい!俺はもうあの頃とは違うんだ!お前らよりも速いんだ!」
アークはそれらに向かって怒鳴る。
「・・・プッ・・・アッハッハッハッハッハッハ!!!速いんだってよ、亀が!」
「そんな訳ないじゃん!速い訳ないじゃん!亀の癖に」
それらは煽る、煽る、煽りまくる。
徹底的にアークを煽りまくる。
「なっ・・・なんだと!!!」
「だったら走ってみろよ!速いってのを証明してみろよ」
「「「そうだそうだ〜、証明しろ〜」」」
その言葉にアークは尾が切れた。
「やってやる!見てろよ、お前ら!!!」
そう言ってアークは走り出す─────事はなかった。
バダンッ
代わりに倒れたのだった。
「おいおい、見ろよみんな。倒れ出したぜ!まさかそのまま走るのか?いや、亀だからそりゃそうか」
「「「アッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハ!!!」」」
それらは一斉にアークを笑い物にした。
「違う、コレは違う!足がもたついただけだ。見てろ、今度こそ走ってやる!」
しかし、アークは倒れたままであった。
「何故だ!何故動かない!何故─────」
瞬間、戦慄した。
何故走れないか?
答えは単純明快であった。
足が無かったのだ!
両足が既にぶっ飛ばされていたのだった。
「おい、速く走れよ!」
「そうだ、速く走れよ!」
「「「「「走れ!走れ!走れ!走れ!走れ!」」」」」
走れのコールが合唱のように鳴り響く。
アークの頭に鳴り響く。
「おい、どうした?神速なのだろう?見せてやれよ、貴様の速さを────」
合唱が鳴り響く中、アザートの声が聞こえた。
その方向に振り返ると・・・いた。
両足を持ったアザートが立っていた。
「あ・・・あぁ・・・俺の・・・」
「恐怖とは実に素晴らしものだ。正常な判断を下せない。痛みも伴わない。故に足を奪われている事も分からない」
ドサッ
手に持っている両足をアザートは落とした。
「だが、貴様は異形者なのだろう?ならば、足を再生させる事も出来るはずだ。勝負は此処からだ!さぁ再生させろ!」
そう言ってゆっくりと近づくアザート。
「おい、どうした?恐れで人間の姿を保てなくなっているぞ?さぁ、再生しろ!再生して見せろ!深淵を見せてくれ!俺に深淵を見せてくれ!」
「ウ・・・ウワァァァァァァ!!!来るな!!!コッチに来るなぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
アークの叫び声が鳴り響いた後・・・沈黙が流れた。
先程まで騒がしくざわめき合っていたのが嘘のように沈黙する。
「・・・つまらん。もういい。お前ら、コイツを好きにしろ。これ程までにつまらん男だったとは・・・弾丸を避けるとこまで面白かったが・・・それまでの男か」
アザートはそう言い残し、地上へと続く階段へと向かった。
「おい、待て!待ってくれ!どうなるんだ!俺はどうなるんだ!」
アークは声を荒げる。
しかし、アザートは振り向かなかった。
二度と視線に入る事は無かった。
「どうなるって・・・知ってる癖に」
代わりに背後にいた子供が答える。
「知ってる癖に・・・アハハハハ」
「「「知ってる癖に・・・知ってる癖に・・・ウフフフフ」」」
「「「「知ってる癖に」」」」
過去の幻影が虚に笑いながら答える。
ゆっくりと這い寄りながら・・・
数秒後、地下は断末魔の叫びが鳴り響いた。
しかし、アザートのとっては静寂となんら変わらない。
アザートにとってアークは既に『どうでも良い』存在となってしまったのだから・・・
ニャルラ「さてさて此処で皆さんにお知らせがあるニャ!もう直ぐ恒例の『ばりあんと図鑑』が始まる訳ですが・・・そろそろ本来あるべき姿に戻りたくなってまいりましてね」
アザート「本来って何だ?唯の意味無し雑談コーナーだろ?」
ニャルラ「違ーう!!全然違ーう!!思い出して欲しいニャ!最初期の図鑑を・・・なんか・・・こう・・・裏話?的な話を語る場所だったでしょ!?」
アザート「語れたのはあれが最初で最後だったけどな」
ニャルラ「そう・・・なんか2回目からいきなり図鑑の機能をなしてなかったからね!」
アザート「で・・・何でまたこんな話になったんだ?」
ニャルラ「ふっ↑ふっ↓ふっ→・・・思い出してニャ?あの閑話のあとがきの部分を・・・」
アザート「止めとけ」
ニャルラ「まだ、何も言ってないんだけど!?」
アザート「止めとけ。いいから止めとけ。惨めになるだけだそ」
ニャルラ「惨めって何!?私は唯バリアントに関する疑問・質問を募ろうとしただけだニャ!」
アザート「だから止めとけと言っているんだ。前回それ募って何人来た?」
ニャルラ「・・・100人くらい?」
アザート「・・・・・」
ニャルラ「冗談、冗談。10人くら───」
アザート「0だ」
ニャルラ「・・・・・・」
アザート「0だ」
ニャルラ「分かってるよ!あーあーそうですよ!0ですよ!これで良い!」
アザート「で、またお前は傷口に塩を塗りたくるつもりか?」
ニャルラ「でも、やる気は抜群だニャ!」
アザート「やる気抜群の奴はあとがき書くの忘れて20時20分くらいから書き始めたりしない」
ニャルラ「いや〜〜〜すっかり忘れてたニャ」
アザート「・・・本当にやるのか?」
ニャルラ「やるニャ」
アザート「本当にやるんだな?分かりきってるのに、感想欄が0から変わらない事を」
ニャルラ「やってみないと分からんニャ」
アザート「・・・まぁ良い。まだ一人も来なかったら笑い物にするだけだしな」
ニャルラ「じゃ、来たらどうするの?」
アザート「何しても良いぞ?来るわけがない」
ニャルラ「言ったね?皆さん?見ましたね。もし感想欄にコメントが来たらアザート君が次の閑話でなんかするらしいニャ!」
アザート「何言ったて構わん。100%来ない」
ニャルラ「じゃあ、感想を書いてくれる人は①バリアントに関する疑問・質問②アザートにさせたい事・・・この2つを書いてくれると嬉しいニャ!じゃ、期限は2週間後ではまた〜」
アザート「おい、一ついいか?」
ニャルラ「何?今更無しは無しだよ」
アザート「違う。お前、図鑑の話が思いつかないからこんな企画出したんだよな?」
ニャルラ「そうだけど?」
アザート「この話で行けたのでは?」
ニャルラ「・・・・・」
次回投稿は来週の水曜日になります。
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