第76話 神速 VS 再生
ぼけーとしてたらストックがヤバくなってきた。
ヤバいヤバい・・・
時間はアザートが地下に落ちた直後に遡る・・・
地下は漆黒の闇に包まれており、通常の人間なら何も見えない状況だ。
しかし、異形者であるアザートは夜目があるので問題は無い。
さらに、アザートは邪眼*を発動された。
*邪神型のみ使える能力の1つ。
簡単に言うと目がサーモグラフィーの様になる。
詳しくは第20話or第0話参照
「ほう、さて鬼か蛇かどちらが来る?」
その目に何かが映ったのであろう・・・
アザートは笑みを浮かべながらその者が近づいてくるのを待った。
そして・・・
「そうか・・・奴がいた。ではな」
「・・・遅かったではないか。罠にかけた割には・・・」
アザートがその者に問いかける。
「そうか・・・それは良かったことではないか。寿命がそれだけ長引いた訳だ。だが、もう終わりだ」
「終わり?俺が?一体誰が俺を終わらせる?誰が終わらせると言うのだ。貴様か?貴様なのか?貴様如きが俺を終わらせるのか?有象無象の1人である貴様如きが」
アザートは狂気に満ちた顔を見せながら相手を煽り立てる。
「そうか・・・ならば見せてやろう。貴様にこの俺、アークの恐ろしさを・・・」
そう言い終わるや否や・・・
一瞬で・・・
否、一瞬の時もたたぬ内・・・
眼前に・・・アザートの眼前に銀の銃を突きつけたアークが存在した。
「ほう!コレは中々────」
ドバァァァン!!!
弾け飛んだ・・・
アザートの肉体全てが一瞬で弾け飛んだ。
臓器全てが吹き出し、血は止めること知らず流れ出る。
勝負は決した・・・様に見えるが、アークの顔は一部の油断は無い。
アークは知っている・・・知っているのだ。
コレくらいでは死なぬ事を・・・
コレくらいでは最恐とは言われない事を・・・
「─────速いじゃないか」
バァーーン!!!
背後からの銃声・・・
勿論、アザートが発した銃声だ。
着弾するまでの距離2m・・・
避ける事など到底不可能。
ここはその弾丸を致命傷にならぬ様に受けるのがベスト。
誰しもが・・・アザートまでもがそう思っていた。
しかし、その考えが無残にも跡形もなく消し去る事象が起きた。
「ほーーーう」
その事象にアザートは感嘆の声を上げる。
その事象・・・それは言ってみれば高速・・・
否、神速移動であった。
「遅い・・・遅すぎるぞ、アザート。貴様の攻撃など俺には届きはしない、何をしても」
バァーーン!!!
バァーーン!!!
バァーーン!!!
しかし、アザートはその言葉を聞かずにアークに向け射撃する。
しかし、その全てをアークはギリギリのところで回避する。
「無駄だ、無駄だ!何をしても当たらなければ無意味なのだ!」
ドバァァァン!!!
今度はアークがアザートに向け、射撃する。
そして、先程同様臓器を噴き出し破壊されるアザートの肉体・・・
しかし、直後に再生・・・そのまま射撃・・・そして、既の所で回避するアーク。
その繰り返しが永遠と続く・・・
続く・・・続く・・・続く・・続く・・・続く続く続く続く続く続く続く続く続く続く続く続く続く続く続く続く続く続く続く続く──────
しかし、ある瞬間に変化が起こる。
バァーーン!!!
「ぐっ!」
アザートが放った一撃がアークの腕を掠った。
当たりもしなかった筈の一撃が初めてアークを掠めたのだ。
しかし、当てたアザートの表情は強張りを見せ、当てられたアークは笑みを浮かべている。
「当てたか。素晴らしいな。流石は龍鳳を倒した者だ。このまま繰り返せばいずれ出血多量で死ぬかもな。・・・相手が人間であれば」
アークは含みある言い方をし、腕を掲げた。
すると、どうだろうか・・・
銃弾が掠り、血が止めなく流れ出る傷口が瞬く間に再生しているではないか!
「やはり・・・か」
「そうだ!俺は人間ではない。異形者だ!異形者なのだよ!では、どうなるか分かるな?貴様が考えていたであろう、持久戦も音を立てて崩壊した。終わりなのだよ、貴様は!」
アークは突きつける。
アザートの考えが瓦解したであろうと考え、絶望に陥れる為に・・・
絶望の色に染まる表情を見る為に・・・
─────しかし、現実は・・・この男は違った。
パン・・・パンパン・・・パンパンパン・・・パンパンパンパンパンパンパンパンパンパン
アザートは拍手をした。
拍手をし始めた。
まるでコンサートのオーケストラの演奏が終わったかのように拍手喝采を上げたのだ。
「な・・・何している!?」
まさかの行動に動揺を隠しきれないアーク。
「素晴らしい・・・本当に素晴らしい!そして、楽しい!これ程楽しいのは龍鳳と戦った時以来だ。認めよう、貴様は有象無象の存在ではなく素晴らしい個人だ」
「ほざくな!!!」
ドバァァァン!!!
アザートの肉体が破壊される。
そして、同時に再生される。
何度も見た光景・・・
しかし、アザートの不気味な行動をきっかけにアークは動揺を隠しきれない。
「(何故だ!何故まだ再生する!何故避けようもとしない!既に2、30回は破壊しているぞ!何故死なない!・・・不死身なのか?いや、不死身など存在しない!では、何故────)」
全力でアークは思考する。
そんな中アザートは静かに・・・しかし、アークに聞こえるように呟いた。
「貴様は『黒獣』で殺そうとしていた・・・が、止めだ。こんなにも楽しませてくれたのだ。貴様には『堕とし子』で殺してやる」
次回投稿は来週の水曜日になります。
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