第70話 ドス黒い奴らと金髪少女
ドス黒い奴らとは?
「何者かがアザート君を嵌めようとしているかもしれない・・・か」
ニャルラがそう呟いた。
「まぁ、唯の可能性の一つとしてあげられるだけだ」
「いや、その可能性も無きにしも非ずニャ。コレを見るニャ」
ニャルラはそう言うと徐にパソコンを開き、あるサイトを見せた。
「『戦慄!黒き異形者・賞金100万$』・・・って何ですかコレ!?コレは完全にアザートさんの事じゃないですか!?」
「以前に闇サイトを漁ってたら見つけたニャ。恐らく龍鳳カンパニーの一件からアザート君の事を知ったらしいニャ。この事件と関連があるとは言い切れないけど無いとも言い切れないニャ」
「なるほどな。だから、一時期狙われていたのか」
アザートのダイナマイトを彷彿とさせる発言にニャルラとヨグはフリーズする。
しばしの沈黙がアジトを覆う・・・
「・・・えっ?アザートさん、命狙われてたんすか?」
「あぁ、と言っても1ヶ月前にパタリと止んだが」
アザートがあっけらかんに答える。
「・・・因みに何人くらい狙われていたとか覚えてるかニャ?」
「あぁ、ちょうど26人だ。瞳が金になっている雑魚ばかりだと思っていたが・・・賞金狙いの奴だったとはな」
再び沈黙に覆われるアジト・・・
本日2回目の爆弾が投下された。
「・・・ニャルラさん、今回の犯人よりもヤバい殺人鬼が目の前にいるんですけど」
「まぁまぁ、アザート君が殺したのは金に目が眩んだ殺し屋ニャ。別に殺したって何も問題無い。ここで注目する所はそこじゃない。アザート君が言った『1ヶ月前にパタリと止んだ』・・・ここニャ!」
ヨグに指を差しながらドヤるニャルラ。
「・・・なるほど」
「えっ!今のでわかったんですか!?アザートさん」
「分からんのか、迷探偵?ひと月前に何が起き始めたのか」
アザートが呆れ声で話す。
「・・・あっ!今回の事件」
「そう!臓器ぶち撒け殺し事件はひと月前から始まったニャ。アザート君が狙われなくなったのがひと月前・・・コレは単なる偶然かニャ?」
「つまり、ニャルラ・・・お前は俺とこの事件は繋がっている・・・と」
アザートがニャルラに問う。
「ニャ。そして、ここらかは憶測・・・っていうか今も憶測だけど、この事件・・・アザート君に向けられたメッセージか何かではないかニャ?」
「メッセージ・・・ですか?」
「『お前が首を差し出さない限り、無関係な市民を殺していく』・・・みたいな」
ニャルラの発言にヨグが凍りついた。
しかし、当の本人・アザートはというと・・・
「もし、それが本当だとすれば完全なる悪手だ。俺は赤の他人が何人死のうがどうでもいい」
「まぁ、そうなるよね〜私もそうだニャ〜」
「まぁ、そうですけど言い方ってものが・・・」
ヨグが苦笑いを浮かべながら同意している。
その時・・・
「うわ〜〜〜!!黒ッ!!ドス黒ッ!!まさにブラックだ、バリアント!」
いつの間にか金髪の少女が会話に入り込んでいた。
アザートはすぐさま銀の装飾銃を少女に向ける。
「おい、貴様・・・誰だ?2秒で答えろ、でないと脳味噌が床にぶち撒けることにぞ」
「ちょっ!ストップストップ!!私は唯の依頼者だから〜!!」
──────
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「─────で、依頼とは何かニャ?」
「えーーー依頼とはですね・・・というか銃口下げてもらえません?」
アザートはまだ銃口を向けていた。
「気にするな、続けろ」
「・・・依頼とはですね、貴方達が話していた連続殺人事件の事なんです」
「「(続けるんだ・・・)」」
「私、こう見えて異形ライセンスを持つハンターなんです」
女はそう言ってあるライセンスを見せた。
「ほぉ〜君、『民ハン』だったのニャ〜。何々?フレイヤ=メルタノ、17歳・・・若いのにやるね〜」
『民ハン』・・・それは『民間ハンター』の略である。
国立の対策局とは違い、その名の通り民間企業が運営している異形ハンターの集まりである。
年々異形者増加に伴い国の対策局だけでは殲滅が不可能と考えた国が毎年独自の試験を行い、それに合格した者のみがハンターの資格が取れる。
この政策により異形討伐報告は増加していった。
しかし、EF協会の局長・オルフィスはというと・・・
『箸にも棒にもかからない雑魚が戦場に来るだけの愚策』
と、この政策を苦言している。
因みに、ニャルラ率いる『バリアント』はというと表向きは民間企業と謳っているが、その実は違う・・・
「えっ!17歳ってまだ高校生じゃないですか!?なんでハンターなんかしているんですか!?」
「ウチは貧乏で、母と二人暮らしなんです。だから、少しでも楽させようと思って去年資格を取ったんです。まぁ、それも先週まででしたけどね」
そう言うと、フレイヤは下を向いた。
「先週までって・・・それはどう言う事・・・」
「殺されたんですよ。例の殺人鬼に・・・」
その言葉に部屋全体が沈黙を示す。
「母は・・・私がハンターで働く事に反対していました。『そんな危険な仕事をアンタはしなくていい』と・・・だから母は夜遅くまで仕事をしていました」
「君がハンター業をしなくていいように・・・かニャ」
「そんな時・・・母が朝になっても帰って来ない日があったんです。どうしたんだろうと心配になってた時・・・電話で・・・警察から・・・母が・・・殺されたって・・・」
話しているフレイヤの目は涙で歪んでいた。
「私は仇を取ろうとすぐに思い立ちました。でも、私だけでは勝てない、それは分かりきっています。だから、お願いします。お金はいくらでも払います。どうか・・・どうか・・手を貸して下さい!!」
次回投稿は来週の水曜日になります。
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