第65話 決着
次が1期最終話です。
「(チッ、奴め!面倒な立ち回りを要求するものだ)」
アルバートは頭の中で毒を吐きながらも龍鳳の攻撃を回避し続けた。
全ては龍鳳の隙を生じさせる為・・・
* * *
『いいか?お前は奴と接近戦を仕掛けて、隙を生じさせろ。なぁに、完璧な隙を作れとは言っていない。俺の攻撃を頑張れば避けれる程度の隙でいい』
『それは隙では無いのでは?避けられてしまうのではないか?』
アルバートは純粋な質問を投げかける。
『いや、その程度で充分。奴は避けない。必ず受ける、断言出来る』
『その根拠は?』
『クックックック、単純な事だ。俺ならば避けない』
* * *
「(随分とご都合的な根拠を迷いない眼でいう奴だ。失笑してしまう・・・だが────)」
龍鳳の手刀が頭に振り下ろされる瞬間・・・
アルバートはスピードを上げ、片方の剣でその一撃を受け流し、追撃の構えをする。
「ギアを上げましたね。しかし、貴方がどんな攻撃をしようと私には通用し─────」
「(面白い!乗ってやる!!)今だ!!アザート!!!」
アルバートはそう叫び屈んだ。
追撃の構えはブラフ・・・
龍鳳の視線の先には手を己の方向に突き出しているアザートの姿。
「あぁ!!────『黒獣』!!!」
そう叫んだ直後、アザートの突き出していた腕が切り離された。
そして、切り離された腕はだんだんと黒いナニカに変化・・・
最終的に大口を開けたケモノの姿となり、龍鳳を近づく。
ここまでの時間・・・経過しない1秒。
龍鳳は何のアクションを起こさぬまま攻撃を喰らう。
バッ・・・キィィィィィィィィン!!!
何かガラスのようなモノが破壊された音が辺りに鳴り響く。
成功か否か・・・
アルバートは一切の瞬きをせず、龍鳳を見る。
龍鳳は無傷であった。
─────失敗か!?
そう頭に過るが、その考えは一瞬で排除される。
焦り・・・
龍鳳の顔には完全な焦りを見せていた。
「(好機!!)」
アルバートは有無を言わさず龍鳳を斬りつけた。
ブシャーーーーーー!!!
瞬間、龍鳳の身体から大量の血が噴き出した。
能力・・・『Action Reactions』が発動しなかった・・・
黒獣が貫いたのだ!!
「な・・・どういうことだ!?能力が発動しない!?」
龍鳳は戸惑いの声を上げる。
「これで・・・終わりだ」
龍鳳をくびり殺すかの如く剣を振り落とす・・・
ボトッ!
しかし、落ちたのは首──────ではなく両腕だった。
「な─────」
龍鳳はあの一瞬で首を両腕で守ったのだ・・・
何という覚悟!何という勝つ事への執念!
その2つの思いがアルバートの考えの上をいったのだ!!
「見誤ったな!・・・私の覚悟を!・・・私の執念を!・・・お前らの負けだ!!勝った!!!死ねぇ!!!能力発────銀?」
瞬間、龍鳳の眼に銀色の銃が写る。
「チェックメイトだ」
ダァーーーン!!!
凄まじい銃声が辺りを覆う。
心臓を貫いた。
アザートやアルバートの心臓ではない・・・今度こそ龍鳳の心臓を貫いたのだ!
「わ・・・は・・・玲・・・の・・・か・・・き・・・を・・・」
龍鳳は貫かれてなお譫言を言って、そのまま海に飛び込んでいった。
「終わったな」
アザートはそう呟きながらアルバートに近づいた。
「お前・・・最後の最期に良いところを持っていきやがって」
「お前が仕留め損ったのが悪い」
「チッ、というかお前制御装置どうする気だ。奴を落下させてしまったぞ」
「分かっている・・・これだろ、黒獣を喰らわせた時すでに奪っていた・・・!?」
アザートは制御装置らしき物を手に取り、画面を見た。
そして、固まった。
「おい、何してる?早く止めろ」
「無理だ。奴め、自分が負けることも計画範囲内だった訳か」
アザートはそう言い、制御装置をアルバートに見せた。
NO ACCESS
「この男!!」
アルバートが怒りの表情を見せたところで地面が揺れた。
それはロストシップが下降し始めたことに意味する。
「・・・仕方無い。お前、早く脱出しろ。ここには何人もの社員達が乗っていた。脱出器具ぐらいあるだろう。早く行け」
「・・・お前はどうする気だ?」
アルバートは間を置いて問いた。
「俺はここでこの船を潰し、名前通りに海に落としてやる」
「いや、お前の能力は既に─────」
「お前も死にたいのか?人間」
アルバートの言葉を遮り、アザートは笑いながら答えた。
「・・・ならば何も言わない、聞かない、そのことは。たが、1つだけ言っておく」
アルバートは一呼吸して答えた。
「今夜はNew Year's Eveだ。どデカい花火を頼むぞ」
「フッ、黄昏の空を黒く染めてやる」
アルバートはその言葉を聞いた後、笑いながら船から去っていた。
────アザートはアルバートが脱出したのを確認した後、口を開いた。
「黒獣」
しかし、アザートの身体は何の変化もしなかった。
「やはり、打ち止めか。使いすぎたか・・・・・・クックックックックックックックック・・・・・・アッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッ」
アザートは狂ったように笑い出した。
この絶対絶命のこの瞬間を楽しんでるかのように。
数分笑い声を上げた後、アザートは急に押し黙った。
そして・・・
「クックックック・・・見ていろ、アルバート。空が黒に染まる瞬間を──────」
次回投稿は土曜日です。
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