第63話 最終決戦
「さぁ・・・・・・来い」
その言葉と共にアザートとアルバートは龍鳳へと距離を詰める。
龍鳳まで5mといった所で龍鳳は手で虚空を切り裂いた。
空振りか?
一瞬アザート達はそう頭をよぎるが──────
ゴォォッ!!!
空気を切り裂いた時に生じる風圧が『真空波』を呼んだのだ。
「「────ッ!」」
アザートとアルバートは飛んでそれを回避・・・
そのままアザートは装飾銃を振り翳し、アルバートは剣で斬りつける2人同時攻撃を仕掛ける。
「「!!」」
しかし、龍鳳はその攻撃を両手で止めた。
「甘いな。その程度では私には傷一つ付かんよ」
そう一言呟き、龍鳳はそのまま2人を投げ飛ばす。
それはまるでボールを投げているかのような軽々しさだ。
そして、龍鳳はそれに続いてアザート達よりも高く飛び、空中で回避不可能なアザートに踵落としを喰らわせた。
アザートは一直線に地に着いた。
「グッ・・・グッ!!」
アザートは立ちあがろうとするも立ち上がることが出来ないでいた。
衝撃で軽い脳震盪を引き起こしてしまったのである。
人型異形者の運動神経・反射神経・強度は通常の成人男性の6〜8倍と言われ、邪神の場合はさらに上回る。
しかし、今の龍鳳は神経・強度を能力『Action reactions』で補い、それは既にアザートを上回っている。
「アザート!?」
アルバートは視線を一瞬アザートに向けるが、それは悪手・・・
龍鳳はその一瞬を見逃さない。
「なっ────!!」
ノータイムでアルバートに近づき、顔面に一撃を喰らわせる。
その一撃によりアルバートは壁にぶち当たった。
「ぐっ・・・ゴボァァ・・・はぁ・・・はぁ・・・」
アルバートは血反吐を吐いた。
その血反吐は黒々しくなっており体内の損傷が激しい事を言い表すのにこれ以上は無い。
「・・・さて、忠告してあげよう。そのまま立ち上がるな。・・・外を見ろ、大陸が見えてきた。後十数分で復興限界を下回る、諦めろ」
龍鳳は2人を見下ろしながら話した。
「立つな・・・だと?クックックック・・・断る」
アザートはふらつきながらも立ち上がった。
「残り数十分?笑わせる、それだけ有れば充分」
アルバートも続いて立ちあがった。
そして、2人は再び臨戦態勢へと入る。
「・・・流石ですね。やはりそうでないと面白くない。では、行きます・・・よっ!!」
高速で一気にアザートの元へ距離を詰めてきた龍鳳・・・
能力を使用し、高速の拳をアザートに繰り出す。
接触まで数cm────
アザートはのけ反り攻撃を回避した。
「何ッ!?」
確かに龍鳳の動きはアザートの動きを上回っている。
しかし、それは先程までの話・・・
アザートはこの殺し合いという闘いの中で進化している!!
凄まじい疾さで─────
アザートはのけ反ったまま龍鳳の頭に銃口を向ける。
ダァーーーン!!!
けたたましい銃声が辺りに響き渡り、血飛沫が舞う。
しかし・・・やはり・・・帰する所・・・結末は決まっている。
脳髄を貫通されたのはアザートであった。
「やれやれ、何度やっても無駄だというのに・・・な!!!」
再生途中のアザートを龍鳳は蹴り付けられ吹っ飛ばされた。
バリン!!!
窓ガラスに激突し、ガラスが割れる。
「そのまま海に堕ちろ」
その言葉通りアザートは海に落─────
「スクワーム!!!」
アルバートはそう叫びながら2本ある内の1本の剣をアザートに向け投げた。
投げ出された剣は、グチャグチャグチャグチャと音を立てながら変形・・・
最終的に異形の鳥の姿となり落下するアザートを捕まえた。
「はぁ〜〜〜、戻ってきた。そのまま落下しさえすれば生存できていたというのに」
龍鳳は大きなため息を漏らした。
社長室に戻る頃にはアザートは再生した。
アルバートがアザートの顔を見ると、アザートは笑っていた。
「おい、アルバート。この闘い・・・勝機が見えたぞ」
アザートはアルバートに最小の声で話した。
「勝機が見えた?どうするつもりだ、アザート?奴の能力を封じる手を思いついたのか?」
「あぁ、その手を使えば十中八九奴の能力を封じる事が出来る」
「ほう」
アルバートはアザートの言葉に興味を持った。
「今、奴は驕っている。絶対に自分が勝つと思っている。自分が負けるわけが無いと思っている。それが奴の唯一の漬け込む弱点だ」
「では、その一手とは?」
「それは─────」
次回投稿は土曜日です。
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