第60話 最適解の行動
ストックががが・・・
龍鳳が話終わる前に電光石火の如く懐に近づいたアルバートは両手に持つ剣で斬りつける。
避ける事など不可能・・・
この一撃で全てが決まった。
もしここに観衆がいるようものなら誰もがそう思った筈だ。
しかし、斬りつけた筈が断末魔が聞こえない。
血飛沫すら上がらないこの状況・・・
「ほーう」
帰ろうとした足を止めてアザートは声を漏らす。
「あの男、中々やるじゃないか」
アザートの視線の先・・・
それはアルバートの双剣を素手で受け止めている龍鳳であった。
「中々鋭い攻撃を繰り出しますね。後、貴方は礼儀が成っていない。私という成功者からのアドバイスだ、人の話は最後まで聞いた方が良い」
「悪いが俺は聞くべき者とそうでない者とに分ける。そして、貴様は聞くに値しない者だっ!!」
アルバートはそう言うと、龍鳳を蹴り付ける。
が、龍鳳は既の所で双剣から手を離し蹴りを回避する。
アルバートはその回避も計算の内だと言わんばかりに回避先にノータイムで斬りつける。
しかし、流石はカンパニー社長龍鳳と言った所か。
その攻撃を素手で弾いたのだ。
「中々、素晴らしい攻撃を繰り出す、流石は協会屈指の切り札ですね。しかし、その程度の攻撃では私には届きませんね。ほら、攻撃が止まっていますよ。もっと早く攻撃を繰り出さないと当たりませんよ」
「・・・・・・」
龍鳳の挑発を無視して、アルバートは自分の双剣を見つめていた。
「(何かオカシイ・・・先程の攻撃もそうだ。完璧に捉えた。通常なら受け切れる筈など無い。矢張りこの男も・・・)異能者か」
「フッ、数手斬りつけただけで分かるとは・・・流石ですね。そう、能力を使用しました。しかし、どんな能力かは言いません・・・まだ早い」
龍鳳はアルバートの言葉に同意するも、何かを含むような言葉を発した。
そして、2人の戦いの邪魔にならないように遠くで見ているアザートは考えをよぎらせる。
「(矢張り異能を使用していたか・・・さて、次の問題はどんな能力か?だ。ここまでの戦いを見ると、8歳児の時と同じく『身体能力の強化』が最有力候補だが・・・何か違う。もっと何か・・・違う恐ろしい能力を持っているのでは?と、頭をよぎらせるのが普通だ。しかし─────)」
アザートはそう考えながら2人の戦いを見て、考察していた。
「フッフッフッフッフッフッフッ」
「何がおかしい?」
龍鳳はアルバートの笑い声に顔を強ばらせた。
「どんな能力か分からない以上、迂闊に攻撃出来ない─────とでも俺が思うとでも?悪いが俺には通用しない」
アルバートはそう言うと、直ぐに龍鳳を近づいて攻撃を再開した。
しかし、今度は単撃ではなく、連撃・・・
剣が舞っているかの如くスピードで龍鳳に斬りつけていった。
「クッ!・・・クッ!・・・クッ!・・・」
流石の龍鳳も焦りの声を漏らしているが、その攻撃を避けている。
「正解。流石はアルバートだ、分かってる」
そう、アルバートの一件無計画な連撃こそがこの場での最適解であった。
確かに、龍鳳の能力が分からない以上アザートが考えたように現状より恐ろしい能力を隠し持っている可能性はある。
近接戦に本領を発揮する能力だろうか・・・
はたまた、攻撃がスイッチとなるカウンタータイプの能力だろうか・・・
考えれば考える程、頭は疲弊していく。
頭が疲弊していけば思考回路は内気へと変化していく。
そして、後手に回ることになる。
そうなればもう相手のペースになってしまい、最終的に手のひらに踊らされることになってしまう。
最悪なす術なく完封されてしまう危険性もあるのだ。
では、どうすれば良いか?
この状況になった時、何を考えるのが正解なのか?
答えは簡単・・・何も考え無い。
正しくは何も考えず、ただひたすらに攻撃を加えていく。
後手に回ることなく、常に先手を取りに行くのが最適解なのだ。
その行動原理は至極簡単。
結局は相手の能力など分からない。
能力を知る術など持ち合わせてはいない。
ならば話は単純、分からないのならば分かるまで攻撃をし続ければいいのだ。
攻撃し続け、相手がピンチに陥れば自ずと目に見える形で能力を使用してくるのだ。
最初からそうであったように先手が何よりも強いのだから。
以前アザートはこう言った。
『後手に回られて危険になるのは弱者だ』と。
それに間違いは無く、実際にそうである。
強者は後手に回った所で最後には勝つ、それは道理である。
しかし、強者が先手を取るとどうなるだろうか?
そんなことは分かりきっている・・・
それは必然の勝利─────
次回投稿は土曜日です。
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