第55話 天空での攻避
敵の刺客が自分の攻撃・・・ミサイル15基を避けた・・・
非現実たるモノではあるが、
現実であるという事実が周囲の負のオーラ・・・そして、レーダーからキッドは察した。
そうなるとキッドの頭には既に・・・
『どうやって避けたか?』
『何故死んでいないのか?』
といった考えをよぎらせるのを止めた。
そして、逆に・・・
『いかにしてコイツを近づけさせないか・・・』
という思考回路になるというのは半ば必然。
キッドはすぐに照準を合わせてアザートに向け第二の攻撃を放った。
その数先程の倍の30基・・・それらが空を駆け抜けアザートを攻撃しに行く。
勿論、全てのミサイルがキッドとの視覚共有している。
ミサイルがしばらく空を上昇すると、前方に黒髪の男が自由落下してくる。
「見えた!奴め・・・どうやって回避していたかは知らないが、今度は逃がさん!!」
そう言いながらも手始めに10基を先にスピードを上げ向かわせる。
完璧に射線に入り、しかも空中の状況下・・・回避など到底不可能。
が─────
「────黒獣」
アザートはミサイルとは別の方向に手を伸ばし、そう呟くと腕が超高速で飛んだ。
残りの身体はミサイルに当たり跡形も無くなる。
が、飛び出した腕がグニャグニャと変貌していきアザートの姿となる。
「─────そうか!?奴はそうやって回避していたのか・・・ならば話は早い。数の暴力ってものを見せてやる!」
そう言って残りミサイルの5基のスピードを上げアザートに殺しに行く。
「────黒獣」
案の定アザートは回避する。
しかし、回避後の位置を読んでいるかの如く再生しているアザートに向け、残りのミサイル全てを囲う様に接近・・・
「これで終わりだ!!」
キッドは完全に決まったと思った。
あれ程の技・・・そう連続かつ簡単に使用出来るはずがないと思っ「黒獣」────
アザートは難なく黒獣を使用し回避した。
「なっ・・・・・・んだと!!!!」
キッドの思惑はガラスが大破するかの如く粉々に砕かれる。
そう、アザートの黒獣はインターバルなどというデメリットは無かったのだ。
ただその技が発動するだけでミサイルのスピードよりも素速く動く事が出来る性能・・・
キッドはその理不尽な技に焦りと恐れを隠す事がもはや出来ずにいた。
「なんだコイツは・・・」
キッドは一瞬の間を開ける事なくミサイルをアザートに放ち続ける。
しかし・・・
「黒獣・・・黒獣・・黒獣・黒獣黒獣黒獣黒獣黒獣黒獣黒獣黒獣黒獣黒獣黒獣黒獣──────」
回避・・・回避・・・アザートはその全ての攻襲を回避し続ける。
最大20,000m離れていたアザートとロストシップとの距離・・・
15,000・・・11,000・・・6000・・・
「なんなんだコイツは!!一体なんなんだぁぁぁ!!」
その距離は徐々に縮まっていき、遂に5000mを切った。
「落ちろ!・・・堕ちろ!・・・堕ちろ堕ちろ堕ちろ堕ちろ堕ちろ堕ちろ堕ちろ堕ちろ堕ちろ堕ちろ!!堕ちて死ね!!死ねッ!死ねッ爆破して死にやがれ!!」
しかし、キッドの願いは叶う事なくアザートは・・・
「黒獣黒獣黒獣黒獣黒獣黒獣黒獣黒獣黒獣黒獣黒獣黒獣黒黒獣黒獣黒獣黒獣黒獣───────」
回避回避回避回避回避回避回避回避回避回避回避回避回避回避回避回避───────し続ける。
その姿、まさしく天を駆け抜ける黒い流星・・・
青々とした空に意を介さす事なく縦横無尽に駆け抜ける。
そして、攻避開始から数十秒後・・・キッドが絶え間なくミサイルを打ち出し、次のミサイルを放ち視覚共有した瞬間・・・
「あっ──────」
眼前に黒いケモノの姿が映し出さ─────「黒獣」
ズガァァァァァァァァァァァァァァ
凄まじい爆発音が天空を支配する。
遂にアザートとロストシップの距離が0mであるという事。
そのことから分かる事・・・言うまでも無くアザートがロストシップに侵入成功したのだ。
しかし、ロストシップは黒獣を受けて尚止める事なくアメリカ合衆国に突き進む。
「あっ・・・あっ・・・あぁぁ・・・」
キッドの思考は再びある2文字が覆い尽くす・・・
絶望
絶対に侵入させてはならない敵を侵入させてしまった・・・
絶望・・・絶望・・・絶望!!!
その言の葉が暗黒への扉を開き、キッドを否応無く引き摺り込む。
そして、爆炎の中からその暗黒の部屋の主が姿を現す・・・
ニィィィィィィィ
次回投稿は火曜日です。
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