第5話 戦闘
書いてたら、これまでより結構長くなりました
「ヒィィィ!!ばっ・・・バケモノーーー!!!」
金髪男の顔は真っ青になり、全身が震えてその場にうずくまってしまった。
彼の目には恐怖がはっきりと浮かび、冷たい汗が額を伝った。
「ニャルラさん、彼女は?」
「彼女はずっとそこにいたニャ。そして、君がその殺人鬼の話をすると彼女の目に怒りと悲しみが混じった殺意が浮かんできたニャ。恐怖心も感じられたけど、それ以上に復讐心が強かったんだろうニャ」
ニャルラさんが言ったことから推測すると、殺人鬼のせいで異形化してしまったということか。
「・・・許せませんね、ソイツ」
僕は拳を握りしめ、怒りを抑えながら言った。
「アイツ・・・ハ、私ガ殺ス・・・ダカラ、オ姉サン・・オ願イ。私ノ・・・オ姉様・・ソシテ、友人ヲ助ケテ・・」
彼女の声は震えていたが、その目には強い決意が宿っていた。
異形者となってもなお、自分の使命を果たそうとする意志が感じられた。
ニャルラさんも感じたのか、
「私達に任せなさい。もしもの時は私も助太刀するニャ」
中々ではなくて、メチャクチャ強いんですけどね。
「アリガトウ」
彼女は笑った。
「よし、じゃあ金髪君!案内頼むニャ」
「えっ!オレが案内するんですか!?彼女に任せた方がいいんじゃないですか・・・」
「君も後輩君殺されて悔しいだろう。だから、案内宜しくニャ」
「わっ、解りました!でも、もしもの時は助けてくださいよ」
あんまり乗る気じゃなさそうだなぁ
そう思いながら、殺人鬼の家と向かって行った。
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「ここです」
金髪男は震える声で言った。
彼の指差す先には他の家々とは異なり、ほとんど損壊していない家が立っていた。
彼女も静かに頷き、目を細めてその家を見つめた。
「この家だけ壊れてないですね」
「そうだニャ〜・・・んっ、男の気配がする」
ニャルラさんが言った。
おそらく、玄関にいるのだろう。
着いたと同時に金髪男はガレキに隠れた。
ビビリだなぁ
そう思いながらニャルラさんの服にガッチリとしがみつく。
そして、ドアが開いた瞬間・・・
×××××さんが音も立てずに走り込み、一瞬で出てきた男の前に立ちはだかった。
彼女の腕が異形に変化し、鋭利なナイフのように輝く。
その刃が男に向けて振り下ろされ、瞬く間に彼を切り刻んだ、血飛沫が闇の中で一瞬光る。
男は抵抗する間もなく、顔、胴、手足が瞬く間にバラバラになった、彼の体の断片が床に散らばり、血が冷たい空気の中に広がっていった。
「随分とあっけなかったですね、ニャルラさん?」
そうニャルラさんに話しかけるも、真剣な顔をしている。
その時・・・
「・・・コノ人・・・ジャナイ・・・コノ人ハ、誰?」
×××××さんは戸惑いと恐怖が入り混じった声で呟いた、彼女の目には混乱の色が浮かんでいた。
えっ?今殺した人が殺人鬼じゃないのか?じゃあ本当の殺人鬼は、一体────
「アーハッハッハッハッハー!!!アーハッハッハッハッハ!!!」
高らかに笑う声がドアの奥から響き渡った。
闇の中からその声が響くたびに、空気が一層冷たく感じられた。
「貴様は人を陥れるだけでなく、無関係な一般市民をも殺すのか・・・滑稽すぎて笑ってしまった」
「チッ・・違ウ・・アンタ・・・アンタガ盾にシタンダロ!!」
×××××さんは焦りと恐怖が混じったような声で話している。
「俺が盾にしたか・・・俺から見たらドアが開いた瞬間確認することなく殺していたが・・・まぁいいだろうだが、貴様が一般市民を殺したのは、変えようのない事実だ」
男が淡々と話す。
「貴様らも見ただろう。このバケモノが無抵抗の人間を殺した様を」
僕達は、答えられなかった。確かに、彼女が人違いで殺したのは事実だ。
「・・・黙レ・・黙レ・・黙レ黙レ黙レ黙レ黙レ黙レ黙レ黙レ黙レ黙レ黙レー」
そう言いながら、×××××さんは斬りかかった。
そして、宙に二本の腕が舞う。
が、舞った腕は殺人鬼ではなく×××××さんの腕だった。
「ァァァァァッ〜〜〜〜!」
「「────ッ!」」
何が起こった!?
目にも止まらぬ速さで×××××さんの腕が切り飛ばされた・・・信じられない光景に、一瞬言葉を失う。
あんな人間が存在するなんて信じられない!
×××××さんは痛みで泣き叫び、蹲る。
それに一切の同情の目はなく、男は銀の装飾銃を取り出し銃口を向ける。
「・・・哀れだな。最初、貴様はアイツら残して自分一人で逃げたかと思ったぞ。戻ってきたことが仇となったな・・・では、死ね」
男が引き金を引こうとした。
その時・・・
男がいきなり後ろに吹っ飛び、家の中へと姿を消した。
吹っ飛ばしたのはニャルラさんだ。
ガッシャーン!!!
大きな音が聞こえる。
男が何かにぶつかったのだろう。
「大丈夫?×××××ちゃん、後はお姉さんに任せるニャ。・・・ヨグ君、彼女を頼むよ」
ニャルラさんの声には、優しさと決意が込められていた。
「はい、分かりました」
そう返事をして、×××××さんに駆け寄る。
彼女は完全に恐怖に飲まれていて、全身震えていた。
「大丈夫ですよ、ニャルラさんならきっとなんとかしてくれます」
そのニャルラさんは、片手を虚空へと、掲げた。
すると、何も無い空間から槍が出てきた。
ニャルラさんの武器・グングニルだ。
そして、臨戦態勢へと入る。
グングニルを出すってことは相当の相手ってことですか!?
しばらくすると例の男が再び玄関から現れる。
「クックックックッ、中々やるな、女。吹き飛ばされるなんてそうそう無い。だが、忠告する・・・俺の狙いはその女だ。そこをどけ」
「同胞を見捨てることなんて出来ないニャ、ゴメンね」
「同胞?まぁいい、なら話すことは無い」
「そのようだニヤ〜」
と、ニャルラが同意した次の瞬間・・・
ガキーーーン!!!
大きな金属音と共にニャルラのグングニルと男の装飾銃が激しくぶつかり合い、火花が飛び散った。
闇の中で二人の姿は見えないが、激しい武器の衝突音とそれに伴う火花が彼らの激しい戦いを浮かび上がらせる。
二人の間には緊張感が走り、お互いの動きは一瞬も無駄がない。
激しい打ち合いの中、ニャルラは相手の動きを見極めるために一瞬の隙を狙い、素早くグングニルを突き出した。男もそれに反応し、装飾銃で受け止める─────
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「(すっすごい!?あの男の人、ニャルラさんの動きに反応している。本当に人間なのか!?)」
そう感じると共にある絶対的な違和感がヨグの中に生まれる。
「(・・・おかしい、そんなことありえない)」
そう思うのはヨグだけじゃなかったらしく、ニャルラが打ち合いを中断させた。
「うん、何だ?諦めてアイツを渡す気になったか?」
「いやー、まっさかぁー。ちょっとおかしな事があってニャ〜・・私の武器・・・グングニルっていうんだけど、これ少し特殊でね、並の武器じゃ打ち合ったら直ぐに相手の壊れちゃうんだニャ〜」
「(そうだ、ニャルラさんの武器・グングニルは特注品・・・それと打ち合える武器が出来る武器なんてある訳が・・・)」
「・・・君、何者ニャ?」
「それを貴様に言う必要があるのか?」
男は表情を一切変える事なく言い放つ。
「まっそうだよねぇー。つまり、私も油断してはいけないという訳か・・・じゃ少し本気だすかニャ」
と、言い終わる前に、男は何かを感じたのか銃を撃ち出した。
銃声は一発しか聞こえないが、弾倉の装弾六発を同時に撃ち出す早業・・・
6連発弾がニャルラを襲う。
ニャルラはそれをグングニルで弾き飛ばそうとする。
が、一発一発の銃弾が重く、それが六発も来るとヤバいと感じたのか・・・
一度グングニルを消し、己の身体能力で銃弾全てを避けた。
ニャルラは一気に距離を詰め、再びグングニルを手に生成した。
そして、鋭い目で男を見据え、全力で突き出す・・・彼女の動きはまるで疾風の如く、男に向かって一直線に攻撃を繰り出した。
男も懐に入られたと感じつつも、瞬時に反応して銃口をニャルラに向けた。
次の瞬間、響き渡る銃声が静寂を切り裂いた・・・
が、ニャルラも一瞬の隙を見逃さず、素早く身を翻しながら再びグングニルを振り下ろした。
彼女の動きは電光石火で、男の反応もそれに匹敵する速さだった。
ヨグの視界は砂埃で覆われ、何も見えない。彼の心臓は激しく鼓動し、手汗が冷たく感じられた。
二人の姿が見えないまま、砂埃がゆっくりと晴れる。その瞬間、声を発したのは─────
「君の正体とかその武器のこととか色々聞きたかったニャ、もっと違う形で会えたらおもしろかったんだけどニャ」
そう、悲壮感漂せながら話したのは、
右手に持つグングニルが男の心臓に突き立てている・・・
ニャルラだった─────
流石にちょっと名前を変えてみたが・・・
厨二臭くなってしまった。