第50話 決意と代償
いつか話した悪夢の続き。
歯が抜ける夢を何度も見たせいか歯が抜けると「夢だ」と分かる様になった。
しかし、夢も夢で対抗してきた。
歯が抜けて夢だと思い目が覚めたと思ったらそこでまた歯が抜けた。
「ヤバい。とうとう本当に抜けたか」と本気で焦っていたら、
それもまた夢。
なるほど、これが俗に言う『二重の極み』か・・・
まぁ、それはさておき6-3章最終話です。
「────0」
アルバートがそう答えた瞬間、猛スピードでカルエラに向かった。
「──────お嬢様!!」
そして──────
ブシャーーーーーーーーーーー!!!
勢いよく、そして大量に血飛沫が舞った。
その血はルーネのモノだった。
「ルーネ!!なんで!?」
カルエラはルーネに駆け寄り、急いで能力を発動させた。
「ルーネ!ルーネ!だっ・・・大丈夫よ、私の能力ですぐに治るから」
しかし、能力をいくら発動してもルーネは起き上がらなかった。
既に、既にルーネの心臓は止まり、瞳孔は開かれていた。
「なんで・・・なんで私の能力は完璧なのよ。治る筈なのよ。だから、治れ・・・治れ・・治れ治れ治れ治れ治れ治れ治れ治れ治れ治れ治れ治れ治れ治れ」
カルエラは何度も能力を発動させた。
何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も
しかし、ルーネは動かない。
「なんでよ・・・なんで動かないのよ。いつもの悪戯なんでしょう。私、十分驚いたから・・・だから、動いてよ」
「無理だ、ソイツはもう動かない。一撃で殺すつもりだったからな」
アルバートはカルエラに慈悲もなく、希望もない言葉をかけた。
「嘘よ!!私の能力は無敵よ!どんな傷だって治せるんだから・・・だから、だから・・・」
「貴様はもう分かっている筈だ。貴様の能力では死んでしまった者には効果がないことを」
「黙れ、黙れ!!ルーネは治る、治るのよ!!ほら、もう治るから、治・・・るから・・・ルー・・・ネ・・・うっ・・・うっ・・うわぁァァァァァぁぁぁぁーァァ」
それでもルーネは動かない。
傷は既に治っていて、外傷はどこにも見当たらない。
しかし、ルーネは動かない。
既に、ルーネの魂はここにはいないのだ。
そして、遂にカルエラはその事実を知って泣き始めた。
どうしようも無い事は既に知っていた。
死体が治ろないことも知っていたのだ。
が、ルーネの死を知る事は何よりも怖かったのだ。
自分の場合ならこんな傷では死なないのに。
カルエラが首を落とされても復活するのは、自分の場合はノータイムで触れているからである。
触れる定義は手でではなく、肉体に触れている・・・ということだ。
よって、首を切り落とされてもその傷はカルエラに常時触れている事になっている。
ゆえに、カルエラはすぐに再生されるのだ。
「─────して」
「うん?」
「殺して!!私じゃもうアンタを殺せない!ルーネの仇も取れない!ならもう生きてる価値なんてない!!貴方なら殺せるんでしょう!!私の能力の穴を見つけたんでしょう!!早く殺してよ!!」
カルエラの言う通り、もう自分一人ではアルバートを殺す事は不可能である。
「フッ、無理だな」
しかし、アルバートは断る。
「なんで・・・なんでよ!!貴方なら殺せ「ないな。答えは簡単、本当は弱点など見つけてはいないからだ。あれは単なる嘘・・・ハッタリだ」
アルバートはまたもカルエラに容赦ない言葉を投げかけた。
「ハッ・・・ハッタリ?じゃ・・・じゃあ、ルーネが庇ったのも・・・」
「無駄だったって事になるな。貴様の能力を鑑みれば」
「そっ・・・そんな、私が・・・私がもっとルーネに大丈夫だって言っていれば・・・私が・・私が私が私が私が」
カルエラはアルバートの言葉で完全に自責の念に囚われてしまった。
「確かにそうだ、貴様の責任だ。しかし、この場合は貴様の命令を聞かなかったルーネにも責任があったな」
「・・・・・・えっ?」
「貴様の言う通り俺に攻撃していればコイツも死なず、俺を殺せる状況も作れたであろう。何せ、死なない相棒がいるのだからな」
「!!そんな事・・・・・・」
カルエラはアルバートの言う事を否定しきれずにいた。
「まぁ、そんな事は今更どうでもいいことだ。今、特筆すべきなのは貴様の能力。貴様は先程こう言った。『貴方なら殺せるんでしょう』・・・と」
「・・・それがなんなのよ!!」
「本当なら『殺せるんでしょう』とは言わない。この言葉から分かる事・・・それは貴様の能力は常時発動しているという事。自分では解除できないと言う事。違うか?」
「・・・・・・だったら何よ!!それがなんなのよ!!」
カルエラは開き直り、アルバートに怒鳴った。
「フッ・・その開き直りといい、その能力・・・気に入った。貴様、EF協会に入れ」
「・・・・・・何を言い出すかと言えば、冗談もいい加減にしなさい!!なんでルーネを殺した相手の集団に入らなきゃいけないのよ!!」
「そうか?貴様にとっては悪くない話だと思うがね。協会に入れば貴様は強くなる。そうすれば、その能力の制御も可能になるだろう。そして、何より力をつければ俺を殺せる可能性が出てくる」
「─────!?」
アルバートの言葉の本質をカルエラは理解した。
「気付いたか・・・そう、何も貴様の魂も売れとは言ってないんだ。俺は貴様に復讐するチャンスを与えている。ただ、その力を偶に協会に役立てろといっているだけだ」
アルバートの言葉に周辺は沈黙した。
そして・・・
「・・・・・・分かったわ。貴方の口車に乗ってあげるわ。でも、後悔することね。私を入れた事・・・必ず貴方を殺す」
カルエラはアルバートの話に乗った。
「フッ、言いだろう。おい、聞いているか?オルフィス。コイツを協会に入れる、異論はないな」
『あぁ、私もそう思っていた。この女の能力は強い。女、安心しろ。アルバートと互角に渡り合えるぐらいには強くしてやる』
「だってよ。大丈夫かしら?貴方、数ヶ月後には私に殺されているかもね」
カルエラは勝ち誇ったかの様にアルバートに話す。
「そうでないと面白くない。第一、見込みがなければ仲間などには加えたりしない。さて、そうと決まったらこんな場所用はない。さっさと協会に向かうぞ」
アルバートはそう言って、カルエラを連れ、カンパニーを後にした。
次回投稿は土曜日です。
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