第47話 思い込みのナイトメア
歯が抜ける悪夢を見ている今日この頃。
週に2、3回くらいかな。
全盛期は連続6回見た。
「その姿、EF協会の・・・・・・刺客ですか」
首が無いカルエラを見た後すぐにルーネは振り返り、赫服の男・・・アルバートを見た。
「あぁ・・・そんなことより、気分はどうだ?カンパニーの幹部」
「フッ、最悪ですね。まさか、この隠し通路をご存知だったとは・・・」
ルーネは距離を近づけられない様に注意しながら問いかけに応じる。
そして、静かにカルエラの首に持っていたタオルをかけた。
「当たり前だ。協会は攻め込む時はいつ何時も入念に作戦を立て、確実に勝てるといった時に攻め込むもの。陳腐な逃走経路など既に頭に把握済みだ」
「なるほど・・・協会の収集力少し舐めてました。では、こういうのも把握済みという事ですか?」
パチンっ・・・
ルーネがそう指を鳴らすと、アルバートの後方から数十人の武装したカンパニー社員がやってきた。
「逃走経路が把握されている事など予想の範疇です。さて、どうです?この人数、幾ら貴方が強かろうが多勢に無勢です。一人でノコノコやって来た自分を恨みな──────」
「クックックックックックックックックックックック・・・」
アルバートはルーネが話終わる前に笑い出した。
「─────何が可笑しい!!」
「多勢に無勢・・・・・・か。違う違うな。それを言うなら、多勢が無勢だ!!幾ら下っ端社員が集まろうと意味など無い。来い・・・死にたければ来い、くびり殺してやる」
アルバートの余裕が社員の勢いを怯ませる・・・が、
「「「「「う・・・うおぉぉぉぉ!!」」」」」
それに構わず、5人がアルバートに向かって攻撃し始めた。
「・・・愚かな」
ブシャーーーーーー
アルバートに近づこうとした5人の首が宙を舞い、血飛沫が辺りに散乱する。
「ヒ・・・ヒィィィィ!!!」
その光景を見て、多くの社員が膝を震えさせ戦意を失う。
「相手の力量も測れないようなクズはすぐに死ぬ。戦場では当たり前の事だ。しかし、そんな奴よりクズなのは貴様だな、執事。殺されると分かっておいて行かせるなど」
「フフフ、別に何を言われても構いませんよ。彼等はただの力量を測る道具です。もう、いいですよ、大体相手の力は分りました。逃げたい者は逃げても・・・」
ルーネの言葉に社員は安心したのか踵を変えて逃げ出した。
「ただし─────」
ドスドスドスドスドスドスドスドスドス────
社員達が逃げ出している最中、一人一人の背中に多数のディナーナイフが突き刺さった・・・否、突き破った。
「あの世にね」
30人近くいた社員が一気に断末魔を上げる事なく倒れていった。
「ほう、随分と残酷な事をする執事だ。仲間だったのでは無いのか?」
「仲間・・・仲間ですか?違いますね。敵前逃亡する者などカンパニーの看板・・・龍鳳社長の顔に泥を塗りたくるようなもの。生きている価値無しです」
「なるほど・・・言いたい事は分かる。俺をオルフィスの顔に泥を塗るような奴は生かしておけん」
ルーネの言葉に同調するアルバート。
「そうですか。案外、私達・・・気が合うみたいですね。赫い死神・アルバートさん」
「俺を知っているという訳か・・・」
「そりゃそうでしょう。貴方程の有名人だ。ちゃんと下調べはしてありますよ。・・・バリアントの新人、アザートに負けたこともね」
「──────ッ」
アルバートがその言葉に眉を顰めた。
「究極兵器と恐れられている貴方が無名の新人に負けるなど・・・貴方の噂はただのデマの様ですね」
「ほう、だったらどうするのだ?」
「決まってますよ、殺します。今の貴方の攻撃、私なら見切れますからね。貴方の紛い物の伝説は壊されます。この私・・・ルーネの手によって」
その言葉と共に、ルーネの周囲から無数のディナーナイフが生成された。
「では、死んでください」
ルーネの合図で一斉にアルバートに向かって放たれるナイフ。
「─────馬鹿が」
──────
────
──
流石のアルバートのこの数は撃ち落と─────否、撃ち落とす素振りも見せなかった。
「何!?」
その衝撃的な行動に驚いた。
そして、想定された通り無数のナイフがアルバートを襲う。
ドスドスドスドスドスドスドスドスドス────
何度もアルバートにナイフが突き刺さる。
何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も。何度も何度も何度も・・・・
アルバートは所謂、ハリネズミのような姿になった。
随分と呆気ない終わりでしたね。
「まぁ、良いでしょう。早速この事を社長に─────」
「クックックック、社長にどうするんだ?」
「─────ッ!?」
その言葉に驚いて、おもわず振り向いた。
まさか・・・死体がしゃべり出した!?あの串刺しの死体が・・・無い!?
そんな事は通常あり得ない。
串刺しになっているのだ、動くことはおろか生きているはずなど無い。
その状態で生きている者など、普通の人間ではない。
──────
────
──
否、アルバートは普通の人間ではない。
アルバートと対峙した者は全ては否応無くこう思ったのだろう。
『奴は人間だ』
『人間の筈だ』
『しかし、何故だ!?』
『何故死なない、死ぬ筈だ!』
『首を切った筈だ!』
『心臓を突き刺した筈だ!』
『致命傷を何度も与えた筈だ!』
そして、ルーネもこう思った。
『串刺しにした筈だ』・・・と。
そして、全ての人間は現実を思い知らされる。
それは自分にとってただ良いように捉えていただけだ・・・と。
脳がそう思い込みたくなかっただけだった・・・と。
初めからアルバートにはナイフなど一本刺さってなどいなかった事を・・・
次回投稿は火曜日です。
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