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第3話 一寸先は・・・


眼前に広がる光景に自分は大きな悲鳴を上げた後・・・


「うっ・・・うおえぇぇぇぇぇぇ!!!」


僕は恐怖と嫌悪感に襲われ、胃の中のものを吐き出してしまった。体が震え、冷たい汗が背中を流れた。


眼前には五人の女が椅子やソファーに縛られ、天井から吊るされていた。


薄暗い部屋の中で、彼女たちの無惨な姿が浮かび上がり、冷たい空気が肌を刺すように感じられた。


だが、それだけならまだいい。


だが、彼女達は目や耳が片方無かったり、手足が片方無かったりしたものであった。


女達は無惨な姿にも関わらず、床が綺麗だったりするのがより不気味さを引き立たせる。


鼻にツンとくるのは、消毒液だろうか・・・


そんな事を考えている最中・・・


「ばやぐ・・・にげ・・・で・・・アイヅが来る・・・」


縛られている女性達がかすれた声で喋った。


彼女たちの目には恐怖と絶望が浮かび、喉が潰されているために声がほとんど出ない。


僕はその光景に凍りつき、動けなくなった。


そう・・・いわば硬直状態というものに陥ってしまっていた・・・その時、背後から声が響き渡った。


「おい、何だ?揃いも揃って悲劇のヒロイン面か。貴様らの自業自得だというのに」


自分の悲鳴に気づいたのだろう、例の男が静かに部屋に入り、冷たい視線で彼女達を見つめた。


その視線だけで、女たちは押し黙り、部屋の空気が一層重苦しくなった。


「どっ・・・どうして!!こんなに酷いことを・・・こんなの人間のすることじゃない!!」


僕は声を震わせながら叫んだ。心臓が激しく鼓動し、手足が冷たくなっていくのを感じた。


自分は男に向かって言った・・・いや、言ってしまった。


そう言わないと冷静に保てなくなってしまいそうだから。


「フッフッフッ、確かにそうだ。こんなことするヤツは人間ではない。だが、俺も人間ではないことはとっくに理解している。ただ、俺はやられたからやり返している・・・それだけだ」


やられたから?


「安心しろ、俺はコイツらを犯してたりはしていない。頼まれてもヤらん。ただ、痛めつけてるだけだ」


何に安心しろって言うんだよ!


というツッコミが喉の奥まで出かけたが、なんとか飲み込んだ。


そんな中、自分はようやく冷静になった所ですべてを悟った。


「・・・自分、二階に上がって彼女達見ちゃったですよね。これから殺されるんですか?」


僕は声を震わせながら尋ねた。冷たい汗が額を流れ、心臓が激しく鼓動していた。


これから彼女達のように痛めつけられる未来を想像する。


「貴様は馬鹿なのか?それとも相手の話を聞かないヤツなのか?貴様のようなヤツを殺す程、俺は暇ではない。とっとと失せろ、でないと殺す」


どっちだよ、また心の中でツッコんでしまった。


自分はこの男と話していく内に、恐怖心が徐々に薄れていくのを感じた。


冷静さを取り戻し、状況を理解しようとする意志が芽生えてきた。


「じゃあ質問いいですか?あの穴、どう見ても人為的なものなんですけど、どうして開いたんですか?」


僕は声を震わせながら尋ねた。心臓が激しく鼓動し、冷たい汗が額を流れた。


「質問したがりなヤツだな、あれは また、誰か一人が異形の者に変貌して壊して行ったのだろう・・・おそらく×××××だな」


男はある名前を口にした。うまく聞き取れなかったが、おそらく女の名前であろう。


それよりも、異形?変貌?訳がわからない。


「じゃあ、さっきのタクシーの運転手の人も異形っていう・・・」


「あぁ、ヤツのことは俺は知らんがな。よくこの町の空気に誘われて来るんだろう・・・ついて来い、×××××探すついでだ町の外まで送ってやる」


「・・・あのー、その人見つけたらどうするんですか?」


階段を降りながら聞いた。


「殺す。あの姿になってしまってはどうしようもないからな、痛めつける気も起きない・・・おい、そう言えば、もう一人の金髪男はどうした?」


「逃げちゃいました。まぁ先パイの行動が普通っすけどね」


苦笑いしながら答えた。


「・・・ヤツは、一度この町に来たことがあるのか?」


男がまた先パイのことについて質問してきた。


「はい、確か一ヶ月前にもここに彼女と来たらしくて。でもその時はバケモノにもあなたとも会ってないらしくて・・・」


「一ヶ月前・・・?おい、その女の身なりどんな感じだったか?」


「? えっとですね、確かいつも白いワンピースを着ていた人で・・・でも最近、彼女見かけないんです。先パイに聞いても知らぬ存ぜぬだし・・・」


すると突然、男が立ち止まった。


その表情は笑みを浮かべている。


「どうしたんですか?」


「・・・いや、何でも無い」


絶対に何かあるだろ・・・


でも、まぁ思い出し笑いくらいするだろう。


「・・・そうだ、お互い名前言ってないですよね?自分は佐藤光輝です。あなたの名前はなんですか」


そう言いながら玄関の前まで来て、ドアノブに手をかけた。


男は嫌そうな顔をしながらも答えてくれた。


「なぜ俺が名前を・・・まぁいい。俺の名前は────」


男は一瞬ためらいながらも、少しだけ口角を上げて名前を言いかけた。


しかし、最期まで男の名前を聞くことが出来なかった。


自分はドアを開けた瞬間、目の前の女に・・・



殺されたからだ─────


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