第27話 どんな味がする?
真夜中2時、玄関が開く音と共に俺は目を開いた。
「やれやれ、ようやく動き出したか・・・」
窓から顔を出し外を見ると、
クリア、リーフそして、ラミアの3人が例の箱を持ち森へ向かっているのが見えた。
おそらく、中にはニャルラがいるのであろう。
「おい、起きろ・・・お前、本当に寝ている様だな」
「う・・・うーん・・・もー、何ですか?こんな夜中に」
ヨグが目を擦りながら起きてきた。
「お前の大切なニャルラが連れ去られているぞ」
そう言って奴らの方を指差した。
「・・・えっ!?どういうことですか?アザートさん」
「護衛なんて真っ赤な嘘。初めから奴らはニャルラを代わりの生贄にしようと画策していたということか・・・お前がぐっすり寝ていたところを見ると、睡眠薬が入っていたみたいだな」
「そんな!?はっ・・・早く、ニャルラさんを助けにいかないと」
ヨグはそう言って急いで追おうとした。
「馬鹿かお前は。貴様には薬は効くだろうが、俺とニャルラには効かない。この意味が分かるか?」
「・・・えっ!?じゃあニャルラさんはわざと捕まって・・・」
「そういうことになるな」
何か隠してはいるなと思ってはいたが・・・アイツ何を考えているんだ?
そう思い、コートのポケットに手を突っ込むと何か入っていた。
「・・・何ですかソレ?」
取り出した紙を見ながらヨグが質問してくる。
「『すぐにこの村から出られる様に準備してから追いかけてくる様に』だとさ」
それをヨグに見せた後、急いで身支度を済ませ奴らの後を追った。
邪神は夜目が利くので追うのは簡単だ。
──────
────
──
3人を追って森の奥に進む事数分・・・
奴ら3人は森の奥のひらけた場所に止まり、なにやら話仕込んでいる様だった。
それを俺達は遠くの方から見る。
「お母様、本当にこんなことをして大丈夫何ですか?」
「黙りなさい。こうでもしないと貴女は・・・」
「・・・・・・」
ラミアとクレアの言い合いをリーフは黙って見ている。
すると、奥から金色の髪で白い服を着た少女が現れた。
「アザートさん、あれが天使様なんですかね?なんか見た目通りの天使ってかんじですね」
「・・・そのようだな」
俺達が話していると、奴ら3人も気が付いたようだ。
「あぁー、天使様。今宵は来ていただき誠にありがとうございます」
クレアがそう言うと、
「そなた、そんなに固くならなくても良い。それよりも我が生贄に示した女がまだ生きているようだが」
「それについて話があります。天使様お願いです。娘は・・・ラミアだけは勘弁してはいただけないでしょうか?代わりに別の生贄を差し出すので、どうか・・・どうかお願いします」
クレアが頭を下げてお願いする。
「・・・別に我は構わぬぞ」
「あっ・・・ありがとう・・・ございます」
そう言われ、クレアが涙を流しながら礼を言った。
「別にそなたが礼を言う必要は無い。しかし、その箱の中の者・・・その者も生きているようだが?」
天使の言葉に驚いたクレアが驚く。
「そ・・・そんなこ「なーんだバレちゃってたかニャー」
クレアが言い終わる前にニャルラが声を出し、箱から出てきた。
「ニャルラさん、無事でよかったぁー」
いや、お前は邪眼で様子が分かるだろうが・・・
「ど・・・どうして!?ちゃんと毒を仕込んだのに」
ニャルラには毒を入れたのか・・・
「いや、入っていなかったニャー。・・・ね、君が抜いてくれたんでしょう?青年」
ニャルラがリーフに向かって話した。
「リーフ君、貴方・・・どうして?」
「すいません。でも、やっぱり自分には出来ません、身代わりなんて・・・」
「こうでもしないと、ラミアが・・・」
リーフとクレアが言い争っていと、
「私・・・やっぱり、こんなことまでして生きたくない」
ラミアが震えながら声に出した。
「なにを言っているの!!貴女は生きなきゃ───」
「なんだ、結局ラミアが生贄となるのか?」
天使がクレア達に聞いてくる。
「いや、ラミアちゃんはならないニャ」
「では、そなたがなるのか?」
「それも無理ニャ。少し待ってくれないかニャ?そうすれば別の生贄を持ってくるニャ。だから、ラミアちゃんだけは勘弁してくれニャ」
・・・さらっと犯罪めいた事を言い出したぞ、コイツ。
すると、天使が笑い出した。
「フッ・・・おもしろい。いいだろう、ラミアは生贄にはしないでおこう」
その言葉を聞き、クレア、リーフ、ニャルラは喜んだ。
が・・・
「・・・そうだな。では、代わりの生贄は村の掟を破ったそこの男と女にしよう」
そう言って、天使は高速で何かを飛ばし・・・
クレアを肉塊へと変えた。
「まずは一人・・・」
─────ッ!?
「アザートさん、今のは!?」
「・・・分からん!」
今、何をした・・・というかあの天使・・違和感が・・・
「クッ・・・クレアさん!?」
「おっ・・・お母様!?」
リーフとラミアはクレアだったものに駆け寄った。
「おい、どういう事ニャ!!」
ニャルラが怒気が混じった声で天使を問いただす。
「我は言ったであろう。礼はいらんと・・・初めから殺す気だったからな。・・・さて、もう一人」
そう言って、今度はリーフに向かって飛ばした。
が、
ガキーーーン!!!
今回はニャルラが何かを止めた。
「2人は早くここから逃げるニャ!」
「はい!行こうラミア!」
リーフがラミアを連れて逃げる。
「無駄だ。あの男は逃げられない」
その天使の言葉に違和感が確信へと変わる。
「ニャルラ違う!ソイツは偽物だ!!本体は─────」
そう叫び終わる前に、
ブツン
リーフの脚が宙に浮かぶ。
「AAAAAAAAA!!!」
リーフが叫ぶ。
ニャルラが振り返ると飛んだ脚をキャッチしたラミアが立っていた。
「あーあ、バレちゃった。じゃあもう演技する必要ないね。そして、あの偽物も・・・」
そう言い、さっきまで喋っていた金髪の少女が消えた。
「あー疲れるんだよね、さっきまでの喋り方。厳かにしなきゃいけないってのも分かるんだけど」
「ラミア!?お前、ラミアを何処に?」
リーフが天使に質問する。
「ラミアちゃんはすでにこの世にいませーん!一ヶ月も前に食べちゃいました!」
そう天使が笑いながら答える。
「いっ・・・かげつまえ?」
「そう、一ヶ月前。ってことは分かるよね。君が2週間前にプロポーズした相手も君との夜を過ごしたのも私でーす!」
「えっ?・・・えっ?」
天使の衝撃の事実に唖然とするリーフ。
「いやー中々よかったよ、君。私、キュンキュンしちゃったよー。どう、私に乗り換えない?」
そう天使が聞くも、
「あっ・・・あっ・・・ ァァァァァァァァァァ」
リーフにはもう何も聞こえていない。
「あーあ、壊れちゃった。しょうがない、異形化されても面倒だ。じゃあね、リーフ君」
そう言って天使もどきはリーフを肉塊にして食った。
「さて、あとは君とそこのお兄さん達の3人だね・・・っておやおやー貴方達、人間じゃないじゃん。同胞じゃん。ちょっと仲良く────」
「黙れ、お前なんて同胞じゃないニャ。ここでお前を殺す」
ニャルラの言葉と共に俺達は臨戦態勢に入った。
「おおー、だいぶ嫌われているね、私。・・・いいよ、同胞って食べたことないし」
そう言いながら、身体を変貌させる。
「さてさて、どんな味がすんのかなぁ」
次回投稿は、月曜日です。
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