第22話 暗黒の中の光
「────ってことがあったニャ。私がいた前の組織・・・今も所属しているんだけど、その任務で村に来た時にはすでに村人全員が死んでたニャ。空中に浮かぶ黄土色で木の根の集合体みたいなヨグ君を残して・・・それが私とヨグ君との出会いニャ」
「それは惨いな・・・」
ニャルラの話を聞いて最初に出た言葉がそれであった。
「うん、それ以来、私は極力ヨグと一緒に行動しているんだニャ。でも、彼そのショックで男が恐くなってしまったニャ、自分の事も・・・ヨグ君は本当はメチャクチャ強いニャけど、自分の力が恐くていつまた暴走するか分からない、だから普段は力を抜いているんだニャ」
だからアイツだけ薬が効く身体なのか・・・
「だからといって、ヨグ君の接し方は変えないで欲しいニャ。ヨグ君・・・君に大分慣れ始めているから」
「ふん、なぜ俺がアイツの為に気を使わなければならない。意味がわからんな」
俺がそう答えると、
「ふふっ、ありがとっ」
ニャルラは笑って返した。
その時、遠くの方向から、
ドーーーン!!!
という大きな音が鳴り響いているのが聞こえた。
俺とニャルラはすぐにそちらに視線を移す。
目線の先には黄土色で木の根みたいなナニかが宙に浮いていた。
「おい・・・もしかしてアレは」
「うん、間違いない。ヨグ君ニャ」
ニャルラが答えると、すぐに俺達はそこに向かった。
──────
────
──
目的の場所に向かうとソレがどれだけデカいかが分かった。
「何だコイツは!?ビルを飲み込んでいるぞ」
「不味いニャ、どんどん肥大化が進んでいるニャ。早くヨグ君を見つけ────」
そうニャルラが言い終わる前に、
ヨグは触手のようなモノを無数に伸ばし、襲いかかってきた。
「ダメだニャ。完全に我を忘れてしまってるニャ」
その言葉には焦りが混じっているのが伝わってくる。
俺はヨグに向かって装飾銃を撃ち放った。
触手は千切れ飛ばされるが、すぐに再生してくる。
「ダメだニャ。触手は本体・・・ヨグ君自身を取り出さないと無限に再生するニャ!!」
「お前・・・以前、暴走している時に闘ったことあるのだろう。その時はどのようにして暴走を止めた?」
触手の攻撃を避けながらニャルラに聞いた。
「その時は邪眼で見つけたけど、今回はヨグ君までの距離が遠い。私が無理矢理そこに向かうとヨグごと粉砕してしまうニャ」
その言葉から邪眼を発動し、肥大化するヨグの中を見る。
確かに、だいぶ中央部にいるようだ。
そう考えながら見ていると、周辺に3つ人間の反応があることに気づいた。
「おい、ニャルラ。ここに生存者がいるぞ」
ニャルラに伝え、反応する場所に向かうと3人の女がいた。しかも無傷の状態で。
「君達、そこで何をしているんだニャ?」
ニャルラが質問すると女が口々に答えた。
「おっ・・・男の子が、私達を誘拐犯から庇おうとした瞬間・・・こんなことになって」
「お願い、彼を助けてあげて下さい」
「殺さないで下さい」
女達はヨグを恐れていることはなく、逆に助けて欲しいようだ。
我を失ってはいるが、女達を攻撃はしていないのか・・・
そう考えているとニャルラが、
「大丈夫ニャ。私達は彼・・・ヨグ君の仲間だニャ。絶対に彼を無傷で助けるニャ」
そう断言して女達を安心させた。
アイツを無傷で助ける・・・か。
方法はある。が、失敗すると・・・・・・
いや、それを考えている時間は無さそうだ。
「おい、ニャルラ。お前はこの女達とここにいろ。アイツは俺が何とかしてやる」
俺がニャルラに言うと、
「君が・・・・・・それは信じて良いんだよね?」
真剣な眼差しでこちらを見つめる。
「・・・安心しろ。お前のヘタレな王子は助けてやるよ」
そう言い、ニャルラを置いてヨグに向かった。
「────さて、随分と肥大化したものだな、男女。今度からお前をそう呼ばせてもらうぞ」
と呟き、邪眼を発動させアイツの居場所を特定させた。
手をそちらの方向に向け、放つ。
「黒獣」
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誰もいない真っ暗な空間に僕がいる。
上下左右も分からない。
誰も・・・・・・ニャルラさんも来てくれない暗黒世界。
僕はこのまま死んでいく・・・
どこで間違えたのかな。
先生を・・・村人を殺した時?
いや、僕もあの時・・両親と一緒に死んでいれば良かったんだ。
僕が生きてても意味が無い。
誰かが不幸になるだけ・・・
そして、僕自身も・・・
そう考え、僕は闇へと溶け込んでいく。
パキッ
えっ?
何かが壊れる音が微かに聞こえた。
しかし、周囲には何も変化は無い。
気のせい・・・か。
しかし、
パキッ・・パキッ
音がまた聞こえてきた。
今度はハッキリと。
気のせい・・・じゃない?
パキッ・・パキッ・パキッパキッバキバキバキバキバキバキバキバキ。
真っ暗な空間に穴が空き、一筋の光が差した。
そして、その穴から何かが飛び出してきた。
光でよく見えない。
僕はその何かに連れ去られ、真っ暗な空間から外に出た。
──────
────
──
放たれた一撃は超高速で動き、何人たりとも止めることは出来無い。
標的を喰らい、アザートが解除するまで貫き続けるケモノと化す。
それが『黒獣』
パーーーン!!!
けたたましい音と共に黒いケモノがヨグを喰らいながら巨体からでてくる。
そして、そのままアザートの元へと戻る。
アザートはヨグを捕まえ、解除する。
朦朧とする意識の中でヨグはアザートを見つめた。
助けてくれた。・・・あの暗い空間から・・アザートさんが
目から涙が溢れてくる。
嬉し涙だ。
誰も助けてくれないと思ってだけど、助けてくれた。
消え入りそうな声でヨグは呟く。
「あ・・・ありがとう・・ございます。・・・アザートさん」
「今は少し休め」
そんな優しい声が聞こえ、ヨグはまた意識を失った。
次回投稿は火曜日です。
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