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第140話 邪神VS邪神 ⑦ 〜黒獣と剣術〜


黒獣が破壊された・・・


アザートが誇る絶対的自身の一つとも言える黒獣の崩壊・・・


そのあり得ない事象を目の当たりにしたアザートに衝撃を与える。


それ即ち、隙の発生・・・


しかしながら、その隙も長時間のものではない。


コンマ数秒後には消滅しているであろう僅かな隙だ。


だが、それは戦いの相手が常人の場合だ。


今、眼前に存在するはシェリー(仮)、天賦の才を持つ者・・・そして、何より彼女は異形者・・・邪神型である。


そんな彼女からすればコンマ数秒の隙は大きな隙と言えるモノなのだ────













































「(やってくれたな!!)」


何十にも及ぶ無数の剣に斬り破られ、再び崩壊する自身の肉体を目の当たりにしながらも笑みを溢しながら、アザートはシェリー(仮)を見据える。


そんな崩れ去るアザートを見ながらもシェリー(仮)は一切の間髪も入れず、すぐさまアザートの周囲に剣を生成。


その剣がアザートの肉体を再び貫かんと迫る。


更に、シェリー(仮)は空間全域に降り注ぐ剣の雨量を上げる・・・万が一にも剣から回避に成功したアザートの肉体を確実に貫かんとする為だ。


シェリー(仮)はアザートの隙を見逃しはしない。


アザートの隙は、決して小さなモノではないのだ・・・ただ、その大きさが常人とは異なるだけだ。


故にシェリー(仮)は一切の油断なくアザートを狙う・・・それが最善であると判断するからだ。


破壊されたアザートの肉体が再び構築されていく・・・


しかし、その再生を許さないと言わんばかりの剣がアザートの周囲から貫かんとする。


その僅か狭間の時・・・


シェリー(仮)は見た。


ニィィィィィィ・・・


アザートが嗤うのを────













































瞬間、凄まじい勢いでアザートの肉体が再構築されていく・・・


「────ッ!」


先程まで剣が肉体を貫かんと迫る寸前であった・・・しかしながら、その速度がまるで減速しているかのように・・・


現実に減速している訳ではない・・・シェリー(仮)の肉体がそう感じているだけである。


そう感じてしまう程にアザートの肉体再生速度が異常だったのだ。


そう感じさせる程でなければ、再生速度を追えないからだ。


『何が起きた・・・?』


シェリー(仮)の肉体が驚愕する中でアザートの肉体が完全に再構築される・・・同時にシェリー(仮)の生成した剣も霧散した。


再びアザートの周囲に黒いケモノが取り囲んでいる・・・そのケモノが剣全てを消滅させる。


「悪いが俺に同じ手は通用しないぞ」


そんなアザートの声にシェリー(仮)の肉体は理解した。


それはそうだ・・・アザート自身も邪神化したのだ・・・邪神化前と同様の作戦ではアザートには通じないという事を。


しかし、その理解が完了した瞬間・・・アザートは眼前から姿を消える。


アザートはシェリー(仮)の背後にいた。


「『黒獣』」


アザートは唱えると同時に右腕を黒いケモノへと変化させる。


黒いケモノはシェリー(仮)の肉体を喰らい千切らんばかりに牙を剝く。


シェリー(仮)はその攻撃を咄嗟に右へと回避する────が、


バシュッ!!!


回避に少し遅れが生じ、シェリー(仮)の腹部に黒いケモノの牙で切り裂かれる。


切り裂かれた傷口から鮮血が舞い散る・・・ それは邪神化したシェリー(仮)にとって、初めての負傷・・・かすり傷だが、決して軽症ではない、よろめく足。


そんなシェリー(仮)にアザートは追撃を止めることはない。


間髪入れず、今度は左腕を黒獣化させ、肉体を喰らわんとシェリー(仮)の肉体へと襲い掛からせる。


負傷によって反応が遅れたシェリー(仮)に避ける事は不可能。


黒獣がシェリー(仮)の肉体を喰らわんと牙を剝く────


バキィィィ!!!


その牙は届く事はない。


シェリー(仮)が握る剣がアザートの黒獣を破壊させた。


しかし、その衝撃波により両者弾かれる。


距離が離れた事でアザートは瞬時に両腕を再構築する。


「やはり────」


アザートが何か呟く瞬間、シェリー(仮)は己の周囲に無数の剣を生成する。


その剣はアザートを貫かんと迫るが、その剣の速度も先程とは比べ物にならない程に速い。


アザートは黒獣でそれを防ぎ、反撃に移ろうとするが・・・ シェリー(仮)の生成した無数の剣を躱しきれずに被弾してしまう。













































しかし────無傷だ。


そう、無傷なのだ。


受けた攻撃によるダメージなど皆無であるかのように・・・ それを見たシェリー(仮)は距離を詰める。


遠距離の攻撃ではダメージの皆無


そう判断したのだ。


そんなシェリー(仮)にアザートは距離を取る事は無意味だと即座に判断する。


距離を詰めての攻撃の応酬・・・それはアザートにしても都合が良いのだ・・・故に剣戟が始まった。


シェリー(仮)は剣・・・対するアザートは素手・・・しかし、ぶつかり合う度に空間が震えるような衝撃が走る。


その衝撃によって周囲の瓦礫や壁が崩れ去っていくが、両者共に気にする事などなかった。


瞬間、シェリー(仮)の背後から瘴気を発するナニカが迫る・・・腰から展開されている八つ首の龍だ。


アザートに悪寒が走る・・・


咄嗟に距離を取ろうとするが、シェリー(仮)はそれを許さない。


シェリー(仮)の無数の剣がアザートの動きを制限する。


そして、ナニカがアザートを呑み込む。


そのナニカとは・・・瘴気である。


シェリー(仮)の八つ首の龍は瘴気を自在に操る事が可能だ。


その瘴気がアザートに纏わりつくと同時にアザートの感覚が異常をきたす。


それは肉体と精神に異常をきたすもの・・・ それは精神汚染攻撃の一種だ。


本来であれば、そのような類の攻撃などアザートには通用しない。


しかし、シェリー(仮)の邪神化により、能力が向上した状態であるその攻撃は通用するのだ。


そして、シェリー(仮)の八つ首の龍はそんな瘴気を放出しながらアザートを噛み砕かんと迫る────が、


グシャリ・・・


そんな音が周囲に響いた。


次の瞬間にはその瘴気は霧散した。


いや、霧散したのではない、アザートによって消滅させられたのだ。


確かに瘴気による精神汚染攻撃は通用した・・・しかしながら、アザートの異常なまでの肉体再生能力がそれを瞬時に打ち消したのだ。


そんな光景を見たシェリー(仮)は即座に距離を取る・・・が、距離を取ったシェリー(仮)の眼前には既にアザートが居た。


その手に握られるは銀の装飾銃・・・


ドバァァーン!!!


銃声は一発しか聞こえないが、弾倉の装弾六発を同時に撃ち出す早業・・・


6連発弾がシェリー(仮)を襲う。


バキッ・・・


そんな鈍い音が響くと共にシェリー(仮)の肉体に衝撃が走る。


そして、その衝撃によって弾き飛ばされるシェリー(仮)だが、再びその手には剣が生成されている。


そんなシェリー(仮)に追撃するべくアザートも距離を詰め、装飾銃を手放し、唱える。


「『黒獣』」


三度アザートの両腕が黒きケモノへと変化し、シェリー(仮)の肉体を喰らわんと襲い掛かる。


しかし、シェリー(仮)は腕に握られる剣で迎え撃つ。


そして、再び剣と黒きケモノがぶつかり合う・・・ その衝撃により、周囲に再び道路や建物が破壊されていく。


バキィィ!!


そんな音が響き渡る。


アザートの黒きケモノが消滅────


「『黒獣』」


─────したと同時にアザートが唱える。


背後から6体の黒きケモノがシェリー(仮)の肉体を喰らわんと襲い掛かる。


バキィィ!!


しかし・・・その黒きケモノも数瞬の間に消滅してしまう。


「(やはりな・・・この女、俺の黒獣の弱点を理解しているな)」




黒獣の弱点・・・


以前にも述べたが、それは発動までの弱点だ。


今回、アザートが言う弱点は黒獣の対処法とでも言う物だ。


何度も述べた通り黒獣は発動後、何人たりとも止めることは出来ず、標的を喰らう又はアザートが解除するまで貫き続ける。


言わば、無敵の攻撃である。


したがって、敵が取り得る対処法は回避する事しかない。













































本当にそうだろうか?


黒獣は無敵の攻撃か、否か・・・


答えは半分正解だ。


確かに黒獣は最強の技・・・真正面から喰らえば、どんな敵でも喰らう刃だ。


そう、『真正面』からは・・・だ。


黒獣の正面は無敵の刃となろう。


しかし、横からの攻撃には無敵ではない。


シェリー(仮)の肉体はその事を数回見ただけで気が付いたのだ。




「(流石だな・・・素晴らしい事この上ない)」


アザートは単純に感心する。


自分が使用している技である黒獣に欠点がある事に気が付いたシェリー(仮)に・・・ そして、その欠点を瞬時に見抜いたその目。


敬意を払うべき事である。


ただ・・・ アザートはそんなシェリー(仮)に敬意を払うと同時に考える。


「(しかしながら、黒獣が効かないとなると・・・厄介この上ないな・・・装飾銃の攻撃もすぐに再生している・・・どうするべきか・・・)」


アザートがそう考えている中・・・その瞬間は唐突に訪れる。


ドクン・・・


アザートの肉体が脈打つ。


そして・・・ グラリと身体が揺れる。


「(クッ・・・10分か)」


アザートは理解する・・・肉体に限界がきたという事に。


「(仕方ないな・・・)おい、遊びは終わりだ・・・本気で行かせてもらうぞ?お前も来い」


アザートはそう告げると、己の肉体全身を黒きケモノへと変化させる。


次のアザートから来る攻撃がシェリー(仮)を仕留める為の渾身の一撃である事を・・・ その殺気を感じとり、シェリー(仮)も覚悟する。


「行くぞ?」


「・・・!」













































瞬間、シェリー(仮)の眼前に黒きケモノが迫る。


それはシェリー(仮)に対処できる速度ではない・・・そして、アザートはシェリー(仮)を仕留めるべく必殺の攻撃を放つ。













































しかし────













































その攻撃がシェリー(仮)に当たる事は無かった・・・












































バキィィン!!!














































そんな音と衝撃を伴ってアザートは粉々に砕け散る。


ニィィィィィ!!!


『勝った!』


シェリー(仮)はそう言わんばかりにアザートへと向けて、笑みを浮かべる。


「笑うか・・・確かにそうだ・・・この勝負はお前の勝ちだ、クトゥル(シェリー(仮))・・・だが、言った筈だ、遊びは終わりだと」


そう答えるアザートの左手には紺色のナニカが握られている・・・













































それは髪・・・


シェリー(仮)の髪・・・













































「『堕とし子』」


次回投稿は日曜日になります。


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