第138話 邪神VS邪神 ⑤ 〜再生と破壊の領域〜
遅れてすいませんでした!
────シェリー(仮)の肉体は考える。
如何にして目の前に存在するこの男を殺すかを・・・
確実に、完璧に、肉体を破壊できたであろう攻撃が通用しなかった・・・否、攻撃する隙すら無かった。
その結果、今の己は肉体をバラバラにされている状態・・・弱者のように這いつくばりながら再生される己を冷静に見つめながら、考える。
どうやって倒す?
スピードはどうだ?勝ててるか?
否、奴の反応速度から察するに今の己よりも速い。
パワーはどうだ?勝ててるか?
否、奴の攻撃は己を一撃で粉砕した、今の己よりも強い。
再生力はどうだ?勝ててるか?
否、己はここに来る前に奴の肉体を破壊した筈だ・・・確実に、完璧に、絶対に、にも関わらず、奴は今ここに存在している。
今の己よりも秀でている。
考えても考えても、シェリー(仮)の肉体はその『答え』に辿り着く事は出来なかった。
ただ一つ言えるあるとすれば、
このままでは負ける・・・確実に・・・
その言葉が脳内・・・そして、身体中を駆け巡る。
その瞬間、シェリー(仮)の肉体が再び変化する。
シェリー(仮)は意識が無い・・・故に今この瞬間に思考し、身体を動かしているのは彼女の肉体だ。
そして、その肉体はニャルラ・・・そして、アザートといった度重なる強敵との闘いで進化し続けてきた。
その最たるモノが邪神固有武器による100%ポテンシャル範囲の拡張だ。
最初期の範囲半径約1mであった距離が2m、4m・・・そして、今では8mにまで伸びている。
ここまでの拡張に短時間しか経過しておらず、その進化はまさに驚異的な成長速度だ。
ここまでの域に達すのは普通ならばあり得ない、何年もの歳月が・・・天才のシェリー(仮)であっても何ヶ月もの時間が必要である。
しかしながら、それを可能にさせたのが先に挙げた通り、ニャルラとの戦闘だ・・・その戦闘が彼女の進化を加速させたのだ。
その進化は減速する素振りなど一切見せず、加速し続けていた。
それはアザートとの戦闘が突入した際にも進化は続く。
そして、その進化は遂に最終局面へと至る・・・
シェリー(仮)の肉体は考える。
この戦闘での己の強み、弱点を・・・そして、アザートに勝つ為の道を・・・ 今の状態では確実に負ける。
今は再生がダメージより上回っているだけに過ぎない・・・
しかも、それはアザートが先に『遊んでやる』と言った通り、本気で攻撃していない事が大きく影響しているのだ。
しかしながら、それは『今のまま』なら、だ・・・
『殺せる』
それは肉体の進化が最終段階へと移行した瞬間、シェリー(仮)の肉体は感じ取った。
ピリッ・・・
「(ほう・・・遂に、か)」
周囲・・・いや、シェリー(仮)のいる空間から放たれる冷気、邪気・・・その二つを混ざり合わせた殺気が急速に強まっていくのをアザートは感じた。
これまでアザートが感じ取ったシェリー(仮)のモノとは次元が違うモノ・・・
シェリー(仮)から放たれる悍しい程の殺気が周囲の空間を満たしていく・・・
それはまるでシェリー(仮)が空間を支配しているかのように。
しかし、その支配に抗う者が一人・・・
その殺気に怯えるどころか逆に昂り始める者が一人・・・
シェリー(仮)の放つ殺気に共鳴するかのように笑みを濃くする者が一人いる。
「クククッ!やっとか!!待ちくたびれたぞ!!」
アザートだ。
その言葉と同調するかのように、シェリー(仮)の肉体は『進化』を開始する・・・
己の肉体を更に『深化』させる為に・・・再び闇に包み込まれていく・・・そして、同時に変化していくのが、その肉体である。
通常の成長や進化ではあり得ない速度で肉体は変貌し、シェリー(仮)はその姿を闇と共に変貌させる・・・そう、まるで闇に溶け込んでいくように。
しかしながら、その様子はアザートから視認する術は無い・・・
アザートができるのはただただその闇が消滅するのを待つ事のみだ。
数秒後・・・暗闇からゆっくりと姿を現したシェリー(仮)の肉体は────
闇に包まれる以前とさほど変化はしていない・・・
しかしながら、唯一目を見張る変化が存在する、それが・・・
「龍・・・か」
闇に包まれる前ではヒゲのような触手が蠢くタコに似た右頭部であったが、それが変異・・・
龍のような形状へと変化していた。
その瞳がゆっくりと開く・・・ 同時に腰の辺りから触手が生成され────
否、それはただの触手では無い・・・生成された計8本の触手は全て龍であった。
その18個全て閉ざされている瞳が一斉に開眼・・・ルビーのような紅玉であった。
その全ての双眸がアザートを捉えた───
瞬間・・・
「な・・・に?」
周囲の景色が一変した・・・
アザートの眼前に広がるは邪気が蔓延る青緑の世界と化したロンドンの街。
「(瞬間移動・・・!いや、違う、なんだこの違和感は)」
その違和感・・・それは────
ドスッ!!!
突如として背後から腹部を貫かれた・・・
眼前にいるシェリー(仮)への警戒は十分だった・・・仮に何か動きがあっても対処できた・・・だが、動いていないかった。
何が起きた?
貫かれながらもゆっくりと背後へと振り向く。
アザートの目に映ったモノは・・・
虚空から生成される無数の剣
「────『黒獣』」
すぐさまその全てを回避する為、黒獣を発動・・・
回避に成功・・・
・・・が、
「な────ッ!」
発動終了後・・・アザートの目に映るは・・・
虚空から生成される無数の剣
「くッ────『黒獣』!」
回避する為、再び黒獣を発動・・・
回避に成功・・・
・・・が、
「なに────ッ!」
発動終了後・・・アザートの眼前に存在するは・・・
虚空から生成される無数の剣
アザートの行動を読んでいなければできない程の的確な攻撃。
「────『黒獣』!」
回避する為、三度黒獣を発動・・・
ドスッ!!!・・・
回避が遂に失敗する。
貫こうとする剣は勿論、1本ではない。
ドスッ!ドスッ!ドスッ!ドスッ!ドスッ!ドスッ!ドスッ!ドスッ!ドスッ!ドスッ!
肉体を無数の剣で破壊にされながら、アザートは冷静に思考・・・
その時見た・・・
剣は全方位から生成されていた─────
シェリー(仮)の進化、それは邪神固有武器による『100%ポテンシャル』の拡張・・・いや、その次元はとうに超えている。
シェリー(仮)がアザートに対抗すべく肉体を深化させるべく進化したモノは────
────『神化』である。
「(なるほど・・・読んでいたのではなく、俺が能力を解除するであろう全方位に攻撃していたのか)」
アザートの読みは見事に的中していた。
シェリー(仮)が行った事は単純に言えば、全範囲攻撃だ。
黒獣が解除される瞬間に全ての虚空から無数の剣を生成する事のみ・・・しかし、それだけで十分なのである。
「(この場所・・・空間移動させられたかと思ってはいたが、違う。この空間はこの女が創り出した擬似空間────)」
ドバァン!!!
思考していたアザートの頭が剣によって破壊される。
しかし、破壊されたと同時にアザートの肉体は再生されていく・・・
しかしながら、その再生は無数の剣により阻害されている。
それはアザートの再生能力を持ってしても完全に再生できずにいた。
「(なるほど、この領域では全ての地点から100%の剣を生成でき───)」
ドバァン!!!
今のアザートが再生できる限界は頭・・・それ以上は即座に破壊される。
再生しては破壊される・・・
そんな世界でアザートは・・・
笑っていた────
次回投稿は金曜日になります。
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